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第18話【愛物語は突然に・後編】

続きが思い付いたので、ちゃちゃっと本日2話目投稿!

 グレイグリズリの変異種は殺した騎士達を鎧ごと嚙み砕いて吐き捨て、肉を食べている。ガタガタと震える体を抑えようとも腰が抜けて何も出来ない。私を助けようとしてくれていた騎士の皆様方、すみません。その勇姿を伝える事も出来ず、命を失ってしまいます。願わくば、彼が助けを呼んで来てくれて城の騎士の人達が仇を取って下さいますように。


 心の中で遺書を作成していると、再び茂みから戻って来た宗像さん。助けを呼びに行ってくれたのではなかったようで。


「何嬉しそうな顔してやがる。狩る者と狩られる者、獲物はどっちか分からせてやる。」


 変異種を見てニヤリと笑って宣言する彼の格好を良く見ると、体中が血だらけでした。一体何匹の魔物を倒してここへと来たのか。学生服も所々破れている、額の汗を拭う右腕は良く観察してみないと分かりませんが僅かに震え痙攣しているよう。彼と言えど無傷でここまでやって来れたわけではないようです。私の持っていた匂い袋の所為で逃げた魔物達と壮絶な戦いを繰り広げながら、この現場に到着したのでしょう。

 こんな状況なのに、不思議と胸がトクンと高鳴る。


「あ、危ない!」


 変な気持ちから目を反らすようにして変異種に目を移すと、宗像さんに向かって突っ込むのが目に入り声を上げる。

 まともにぶつかっては一撃で人族など殺してしまう暴威が彼へと襲い掛かる。それで騎士達は全滅してしまったのだ。

 しかし、両腕に持った天遺物であろう武器を変異種の腕へと振るう彼は、吹っ飛ばされてしまうが攻撃をまともに食らったようではやく怪我は負っていない筈だ。一瞬の攻防にホッと息をする間も無く、遥か遠くに吹っ飛ばされてしまう宗像さん。


 遠くから木々を切り倒す音と変異種の咆哮が聞こえる。開けた場所の木がない所だろうか、彼が空を飛んでいる!?あの高さから落下したら…。しかし、変異種の鳴き声が響くと煙幕が遠くから発生しているのが見える。彼は生きてるんだ、よかった。腰は抜けているが、木の幹を支えに何とか立ち上がると、駆けて来る彼の姿。


「暴れずに大人しくしてろよ。」


「え、あの…その。」


「話は後だ。舌噛むから口を閉じてろ。」


 騎士達が何も出来ずに殺されしまう程の敵を相手に戦った彼。また私の前に戻って来た宗像さんは何事もなかったように涼しい顔をしている。

 予め大人しくしろと注意されると、突然の浮遊感。あわわ、お姫様だっこならされた事はありますが…こうして気付けば私はひょいと脇に抱え持たれていた。乱暴な持ち方をされている筈なのですが、不思議と悪い気はしません。それどころか、嬉しいような。


「帰って寝る。」


 思わずチラチラと上目で彼の姿を伺ってしまう。そんな私に気付く事もなく宗像さんは一言呟く。彼とは初対面なのに、真っ直ぐお話する事も難しいです。噂に聞いていたのと違い、怖いのではなく別の緊張感を感じます。私は彼と言葉を交わす事すら難しい状態です。何でしょうか、これは。

 大人しく運ばれている私は気が気ではありません。そんな事を思っていると、過ぎ去った悪夢が再び。変異種が後ろから走って来るのが見えます。


「っ!」


「う、そ…!?きゃっ…!」


 茂みがクッションになってお尻から突っ込み顔に液体が掛かります、何でしょうか。手で拭って見ると手に赤い液体が付着しているのに気付く。彼の血であると思うと息を飲む。


「っ…ぁ…グッ。」


 彼の姿を探し、音の方へ顔を向けると地面に転がっているのを見付ける。彼は小さく呻き声を上げる。私の前に居た変異種は背中を向けて、ゆっくりと宗像さんへと歩いて行くのを黙って見送るしかなかった。


「だ、め…!」


 この人を死なせちゃダメ。死なせたくない。茂みから這い出して、両手で地面を這って変異種と彼へ向かって歩く。

 彼の脇腹には三本の爪痕が残り、骨まで見える程の重傷だ。


「っ…!」


 生きてる!!小さな吐息が聞こえる。必死に這うも、腕に力が入らなくて頬から地面へと突っ込み頬を切るも気にしてはいられない。擦り傷だらけの両手に再び力を入れて、距離を近付ける。


「っ…ぁ。んのやろ…。」


 起き上がろうとする宗像さんをアッパーをするように無理矢理に起き上がらせる変異種。吹っ飛ぶ彼の体を別の腕で打つ。ピンボールのように弾ける彼の体。

 嬲られながらも、なんで笑っていられるの宗像さん!?今にも殺されても可笑しくない状況なのに。

 ハッとして、騎士の方々が言っていた言葉が頭に過る。

『ふっ、我らの勝利は此奴の討伐に非ず!エリザ皇女殿下を無事、此奴から遠ざける事にあり!お前ら、国の為姫様の為、ひいては家族の為に…俺と一緒に名誉の死を共にしてくれ。』


 まさか、宗像さんも私の事を逃がしてくれようと…。自分に注意が向いている今、その隙に逃げて欲しいのだと思ってるのかもしれない。


「グォォオオ!」


「が…は…!」


 変異種に投げ飛ばされてしまう彼は、大木に背中からぶつかる。これ以上はいけない!今でも生きてる事が不思議なくらいにダメージを負っている。


「逃げ、ろ…!」


 叫ぶように台詞を吐き出す宗像さん。やっぱりだ、国に仕えているわけでもない騎士候補生なのに…私の事を逃がしてくれようとしていた。すみません、貴方の期待に応える事は出来ません。


 変異種は口を大きく開き彼を食べようとしているが、彼は絶体絶命の今でも口を釣り上げて笑っている。

 ダメ!足に力を入れて腰が揺れるが、何とか立ち上がる事に成功する。

 近くの石を拾って変異種の後ろ姿に向かって投げると、頭に命中した。


「っ…逃げません!貴方なら、倒せます、よね。」


 倒せないだろう。思わず口に出てしまったが後悔はしていない、口を釣り上げて笑う彼につられて私も大仰な事を言ってしまう。

 でも彼を見殺しにしたくはない。気付いてしまったのだ、学生の騎士生だけど私の命を救おうとしてくれた騎士様に違いはない。こんな状況ですが、貴方は私の初恋の人。恋をしてしまったのです。


「…当たり前だ。俺は宗像恭士郎だからな。」


「宗像、さん。はい…!」


 宗像さん…いえ、恭士郎様。心の中では恭士郎様と呼ばせて頂きます。

 彼は自信満々に自分の名前を述べる。ボロボロなのに悲観した表情を浮かべる事もない彼の顔から、私は目を反らす事が出来ません。例えここで殺されようとも構わない。する事など無いと思っていた、恋に落ちる事が出来たのですから。向かって来る変異種は視線の外に追いやって彼しか目に映らない。


「グァァア!」


「最初に言ったよな…」


 変異種は急に立ち止まる。いや、恭士郎様によって立ち止めさせられたのだ。足元を良く見ると縄が絡み付いている。そして、彼の左腕に抱き寄せられる。本日二度めですが、恋する殿方に密着するのは何とも心がドキドキして幸せな気分です。鍛えられた体に男の人の匂い。

 彼の瞳が黒から赤に染まる。一撃でも浴びたらただでは済まない変異種の四腕による猛攻を、掻い潜る。恐怖に違い無い瞬間ですが、私は安心感に包まれてます。


「狩る者と狩られる者、獲物はどちらか分からせてやると…!」


 突き出された天遺物の刃が変異種の目を貫く。やった!

 しかし、最後の悪足掻きなのか嚙みつこうとする変異種の牙は私の首に向かって来るが、噛まれる事はなく代わりに恭士郎様が肩に受ける。また、命を救われてしまった。恭士郎様、肩は大丈夫ですか!?


「遅ェぞ。静流、アンリ。」


「ハァァァアア!」


「首ちょんぱ〜!」


 現れた二人の女性。一人が持つ槍が変異種のもう片目を貫き、もう一人の女性の持つ二本の手斧が首を跳ねる。

 二人の女性の到来に恭士郎様はフッと笑う。綺麗な方と可愛らしい方ですね、何だか心がムズムズします。


___________________________



「ふん、まぁ計算通りだな。」


 『かかかか勝ったどー!ベェッ、やっべえぞやっべえぞ。』今回はマジでガチンコで死ぬかと思いました。命ある事に感謝感激。生きてるって素晴らしいね!

 あら、何だか視線が感じるのですが…ってやべ、皇女様抱きかかえてたまんまだった。あゝ柔らかい、これが女体の感触。今なら…さささり気なく、おおおぱいを触ったり掴んじゃったりしても良いかな?バレ無いよね。命懸けで救ったのだもん、これ位の報酬があっても構わないだろ?高貴な姫様ッパイを我が掌に!!


「恭士郎様!」


「キョウ様!」


「宗像様…。」


 武器をしまった静流とアンリは慌てて駆け寄って来る。お預けか、二人の目を誤魔化す事は出来ないだろう。触れたとしてもエロ主人と思われるのはごめんだ。同棲相手にそんな目で見られて過ごすなんて、僕にはとても出来ません。

 エリザ様を地面に下ろすが…何ですとぉぉおお!エリザ様、何で密着するんですか。おおおおぱいが腕に当たってます、しかも体を左右に捻って胸がムニュムニュと腕をマッサージしてますな。それに当ててんのよと言いたげに上目でこちらを見て来ますね。エリザ様…いや、エロザ様。役得です、ヤッフー!


「は な れ て 下さいませ。」


「キョウ様から、離れろー!」


 エロザ様をやんわりと押し退ける静流さんと、あっかんべするアンリ。おいおい、二人共皇族相手に無礼なのではないかな。いや、決してもう少しお胸様の感触を味わっていたかったとかじゃない。あれ、なんかデジャブるな。


「すみません、少しふらついてしまいまして。」


 何か目が笑ってませんよエロザ様。二人に向ける目は、犬が飼い主を取られないように警戒してるようなんですが。


「で、皇女様ぁ?キョウ様がこんな危ない奴とサシで戦うなんて、どゆ事よ〜?」


「アンリ、気持ちは分かります。ですがお飾りとは言え皇族の一人です。口を慎みましょう。」


 跳ねられて転がっているホワイトグリズリの首を指差して、片眉を釣り上げエロザ様を睨むようにして問うアンリ。

 流石静流さんは大人だ!アンリを嗜め…ません。完璧喧嘩売っちゃってるし。

 右腕に静流さんのエベレスト、左腕にアンリの高尾山。二人も負けじと俺の腕に抱き付いて来る。感触が最高、まさにサンピー!アンリは兎も角静流さんが抱き付いて来るなんて。勃ってしまうやろうが!何とは言わんが、ナニが。


 お前らの胸に抱かれてて、ううー切ないよ〜おおお。近付いて来る二人の距離、ヨンパイに追い詰められくっついて、よし今日こそはアレ慰めよう。

 諦めるよりも、信じる事に掛けてみる。今日こそ息子慰めるんだー!

 こんなにエブリデイエブリナイト、禁《オナ禁》じているだなんてもう。エブリデイエブリナイト、二人もう『離れないで下さい。』


「離れろ、二人共。」


 うん、知ってた。恭士郎さんはシャイなアンチクショウだもんね。離れないでって言ったら離れろって言うのも。ティーなボランさんもスンマセン、替え歌お許し下さい。曲は大好きなんです。


「はい…実は…」


 起きた出来事を話すエロザ様。二人は静かに聞いている。


「ハッ!すみません恭士郎様、お怪我は!?」


「わわわ、気付かなかったよ!キョウ様脇腹凄い事になってるって!」


「宗像様!」


「っ…。」


 あちゃー、脇腹骨が見える程抉れてるんだった。『うぎゃあぁぁああ!痛い痛い痛い痛い痛い!』怪我を目にしたら、急に痛みが襲って来るんですけど。女の子に情け無い姿を見せたくないので背中を向ける。

 う…三人の山にくっつかれて反応したアレ、血管が拡張した事が最後の止めになったみたい。血を失い過ぎた。

 フラついて前へ倒れそうになるが、途中で受け止められて柔らかい感触が顔に。


「お疲れ様でした。後はゆっくりお休み下さいませね。帰りましょう。」


 母性を感じさせる笑みで恭士郎の頭を抱く静流。

 頭上から聞こえる声。これは大山脈…?静流さんに正面から抱き留められてるようだ。頭に腕が回され…、いや、幸せだけど苦し、い、息が…。


「うらやま…ってちょっと!交代し…って!静流ちゃん、キョウ様タップしてるって!」


「宗像様が死んでしまいます!あああ、手が動かなくなってしまいましたよ!」


 何だか近くのようで遠くな距離で騒がしい声が聞こえる。

恭士郎、疲れたろう。カズヒサも疲れたんだ。何だかとても眠いんだ…恭士郎。


皇女様、攻 略 完 了!ズババババ!


設定で攻略済みの静流とアンリに続き、正式に初の攻略したヒロイン!おめでとう!ここからハーレム…いや、これそういうゲームじゃないから。一応乙女ゲーだからね、乙女ゲー要素今のところ皆無ですが。

ヒロイン(エロザ)視点で攻略キャラ(恭士郎)に接してましたし…という言い訳を。


次回予告。

次は誰を出そうか…影の薄い女性キャラか、イケメンの誰かか複数を恭士郎と絡ませるか(性的な意味で…じゃなくて物理的に)。因みに感想でお名前頂ければそのキャラ出しますよ、という露骨な感想乞食な催促します(笑)


次回更新をお待ち下さい。

初心者の作品ですが、ブックマークや評価して頂き、ありがとうございます。

皆様にはご感謝を!応援して頂けると喜びます。アドバイスや指摘なども頂けたら幸いです。

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