第14話【恭士郎がぁ〜森の中でぇ〜ヤバいのと出会ったぁ〜(某滞在記風)・中編】
朝投稿です!お待たせしました。
やべえよ!あれって第二皇女様じゃん。美少女を見殺すのは勿論見過ごせないんだが、皇女様がお亡くなりになった時点で大円団ルートが破綻する。主要な人物の生存及び様々なフラグの回収が必要だ。
そして大円団ルートを諦めて万が一ここで逃げ出して、皇女様も脱出に成功した場合。どちらにせよ俺は斬首の刑は免れないだろう。皇女様がお亡くなりになった場合は、罪悪感が半端無い。何より美少女は世界の宝、見捨てる選択肢はないな。俺だった場合救える可能性はゼロに等しいだろうが、それでも俺ならば…恭士郎ならきっと何とかしてくれる。
彼女の名前はエリザ・ド・ランドガルフ。高等科に通う3年生で、現在学園に通う三人の内の皇族の一人だ。高等科で皇族の一人でもある為に恭士郎と関わる機会はほぼない。
栗色の髪はふんわりとパーマがかかり、スラッとしたスタイルながら小柄でどこか守ってあげたくなるような、保護欲をそそられる女の子だ。支配階層の皇族ながら、獣人や亜人、他国の人間も含めて世界の人々の平等と平和を謳い、現在の戦乱の世を良く思っていない。現実では夢物語だと一笑されるだろうが、平和な大円団ルートは彼女がキーになっていると言っても過言ではない。
これはやっぱりイレギュラーだろう。原作では皇女様がこんな化け物に襲われる話聞いた事もない。放っておいても助かるとは思えない。
「っ…はぁ…はぁ…ちっ…。」
戦闘も終わり、改めて意識してみると体の動きが鈍い。調子に乗って、流石に消耗し過ぎたか。全身が緑を筆頭に様々な着色料を織り混ぜた色に染まり、息を整えるべく呼吸を繰り返す。コンディションも万全とは言いがたい。
コートの中を確認する。戦闘を補助する暗器の数々…いけるか?やるしかない。
茂みの中から再び現場へと戻る。第二皇女様は木に背中を預けてガタガタと震え。白い影の正体、両腕が四本前足二本に後ろ足二本、軽十本の手足を持つデカい白い熊。キン○レオかよ!?奴は殺した騎士達を食べている、食事に夢中だ。
皇女様を襲ってないのは、自分を傷付ける脅威にならないのが、本能で分かってるからだろうな。差し詰め食後のデザートと言った所か。
俺が戻った事で料理が増えた事を喜んでるように、熊は鋭い牙を見せ笑みを浮かべる。
「何嬉しそうな顔してやがる。狩る者と狩られる者、獲物はどっちか分からせてやる。」
『こ、こ…ここここkoeeeeee!?え、ニヤリってしたよこいつ!食われちゃうの!?喰われるならエロチックで挑発的なお姉様に喰われたいですぅぅうう!無理無理無理無理無理無理無理無理無理!?逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ(ry)』
動揺から何をして良いか分からず、額から流れる汗を腕で拭うも、顔も腕も液体だらけだ。正直気持ち悪いが、それどころではない。
改めて目が合うと、こいつの怖さとヤバさが伝わって来る。恭士郎の裏打ちれたバトルセンサー、スカウター的な感覚が戦闘力はゴブリンキングの比じゃないと言っている。
グレイグリズリ。Dランクに位置付けられる魔物で、体長350cm〜450cm。現実世界のホッキョクグマよりもデカい。ただの熊でさえ、動物園で囲いの上から遠目に見た事しかない。
こんなのが真近、5m程の距離にいるのだ。致命的なダメージを与える為に攻撃するなら接近する必要もある。
こいつは、グレイグリズリの変異種。普通の奴は色は灰色に近く前足と後ろ足が二本ずつの普通の魔物だが、変異種として色が真っ白で更に体長が推定550cm〜700cm、デカすぎて正確な数値が分からない。変異種という事でランクも最低B。
体毛の色から、仮にホワイトグリズリと名付けようか。
「あ、危ない!」
ホワイトグリズリが切り良く今食ってる飯の一体分を食い終わると四足を利用して、こちらへと突っ込んでくる。
皇女様が叫び声を上げる。護衛騎士が全滅し、俺まで目の前で死なれたらとでも思ったのだろう。だが、俺を誰だと思っているんだ。天下無双の傾奇者、宗像恭士郎とは俺の事よ!うん、無理矢理テンション上げてないとやってられない。
速ェ!恭士郎の記憶から、グレイグリズリとの戦闘経験があり速度も同じか体重の重さや四本腕が邪魔で少し落ちてるのではないかと期待したが、甘かったようだ。寧ろデカくなった事で筋量が増加して動きが速くなっているのか。器用に人間みたいに腕を振ってる事も速度の上昇を促している。
「っ!?」
もう舐めてかからない。両腕に持つ刀を腰の捻りも加えて横薙ぎに振るって、右腕の内の一本の攻撃にぶつける。
やはりパワーはゴブリンキングと比べるも無く、跳ね上げられて仰け反るだけでなく後方へと弾き飛ばされる。
凄い衝撃だ。後方へと弾かれて飛び景色が回る。
ホワイトグリズリは追走するように猛烈な勢いで駆けて来る。
今度はこちらの番だ。左腕の服の裾に隠して仕込む暗器、手甲鉤を出して吹っ飛ばされながら木や地面に引っ掛けて勢いを殺し、転がる反動を上手く利用して立ち上がる。そして近くの木を蹴って逆に奴に向かって突っ込む。
いきなりの反撃に準備出来なかったホワイトグリズリは急制動をかけながら立ち止まろうとするが、いきなりは止まらずに、突っ込んで来た俺の刀の突き技を喉へとまともに食らう。
ただの突きではなく、右手で刀を突き出し、左手の掌で柄頭を押し出して貫通力を加えた一撃だ。更にお互いが走って突っ込み合った衝撃も加わっている。例え硬い体毛と皮膚を持っていたとしても、ダメージは大きいだろう。
「グガァァァ!」
だが刀は5cmも突き刺さってはいなかった。左腕の二本の手で器用に刀身を挟んで掴み刺さるのを止め、奴は咆哮を上げると同時に右腕を振るい、巨大な凶爪を振り下ろす。
「ちっ…!」
舌打ちしつつ刀を掴む手を離しバックステップ。躱し切れないのを見越し、左腕の手甲鉤を盾に使うも、爪の一撃で左腕が跳ね上がり、発泡スチロールを叩き潰すかのように手甲鉤は音を立てて砕け散り、同時に体は上空へと跳ね飛ばされる。
アイキャンフラァァアアイ!飛んでる、飛んでるよ。人一人浮かせる所か、数十メートル上に吹っ飛ばすとか。
やだー、原作でも能力未使用の“素の状態”のままで、かなり強い方の恭士郎さんの剣技が、あんま通用してないじゃないですかー。
Bランクってこんな強ェの?舐めてたわ。こりゃ、マージン取ってA級2〜4人必要なのも納得。どうするね、ジリ貧よ。このままじゃ埒あかないね。
眼下のホワイトグリズリは空を飛び現状落下中の俺を見上げ四本腕を引き絞る。あんな攻撃まともに受けたら一撃でミンチだ。喉に突き刺さった俺の愛刀を引き抜きポイ捨てしながらも、餌を与えられる犬のように涎を垂らしつつ待機している。
だが、そうは問屋が卸さないってね。
懐のコートの中を漁り、小袋を取り出して下にいる奴に向けて思い切り投げ付けてやる。小袋の中には山椒や唐辛子などの粉を混ぜた目潰しだ。涙や鼻水で苦しむといいわ!
奴は腕で小袋を弾くも直ぐに破れ、中の粉が顔中に襲い掛かる。獣は鼻が敏感だから、人間以上にキツいだろう。
国の奴らは、騎士道がなんたら、卑怯やら悪辣やら言うだろうが関係ない。所詮戦いは殺し合い。勝てば官軍負ければ賊軍だ。
目潰しを受け両腕を無造作に振るい捲るホワイトグリズリ。落下中の俺は更に縄で繋がれた鉤爪をコートから取り出しては近くの木へと投げ付ける。
鉤爪が引っかかり少し引っ張って感触を確かめた後、ロープアクションを実行する。片手で縄を掴み、ターザンのように激しく揺れる移動をし、無防備な奴の後頭部へとドロップキックをかます。
諸に衝撃を受けた奴は巨体を吹っ飛ばし、地面へと転がる。
今しかない!ホワイトグリズリの頭の上を飛び投げ捨てられた刀を回収し鞘にしまいつつ駈け出す。
「転がり回ってやがれ。」
走りながら巻きビシを後方にばら撒き、ついでにそこらに煙玉を大量に投げ捨てる。煙幕が後方に発生しているのを肩越しに見やる。グォォオオと獣の咆哮を聞くが関係ない。鼻がお釈迦になっている今がチャンスだ。
『あっばよ〜とっつぁぁあ〜ん』そう、こんなヤバい奴相手と無理にタイマンする必要もない。逃げるが勝ちって奴さ。
奴と最後まで殺り合っていても暫く持っていたと思うし、流石のスタミナだ。
「暴れずに大人しくしてろよ。」
「え、あの…その。」
「話は後だ。舌噛むから口を閉じてろ。」
途中で最初の地点から動いていない、腰を抜かして歩けないお姫様を見つけて腰に腕を回して、片腕で脇に抱えて持つ。不敬でぞんざいな持ち方だが今回は許して欲しい。
『すすすすみましぇん!お触りしましゅがお許しをを。』きっと熊の事だろう。何か聞きたそうだったが『やややヤバいんで、その緊急事態のエマージェンシーなのでおおお後で!』と言って黙って貰う事にした。変換先生、こういう時は一言二言で簡潔に纏めてくれるから頼りになる。
「帰って寝る。」
お姫様は上目でチラチラとこちらを見て来る。安心して下さいな、我々はやり遂げたのだ。奴の討伐は数を揃えて、本職の騎士さん方に任せましょうや。帰ったら静流さんに膝枕して貰いながら、アンリに耳掻きして貰うんだ。__もしや、フラグ…立ててもうた?
ずしんずしんと背後から駆け寄って来る巨体。慌てて背後を振り返れば、奴が居た。
油断してた。獣が逃げた獲物を簡単に逃がす事はない。殊現代の熊でも追跡能力に優れていて、執拗に獲物を追い掛けると聞いた事がある。
「っ!」
「う、そ…!?きゃっ…!」
ホワイトグリズリは既に腕を振るうモーションへと入っていて、俺の視覚はスローモーションのように、周りの景色がゆっくりと見える。
姫様すみません、なるべく早く助け呼んで来るんで。
腕に抱えて居た皇女様を茂みの中へと投げ飛ばす。そして助けを呼びに駆け出そうとしたが間に合わず、振るわれた腕が脇腹にヒットして、爪痕が刻まれ鮮血が舞い散る。
「っ…ぁ…グッ。」
爪で裂かれた後地面をひたすら転がり、どれ位転がったか分からないが、回転が勢いを止めて地面に寝そべったまま、忘れていた痛みが襲い来る。
『くぉぉぉおお!痛い痛い痛い痛い痛い!!』顔の上に影が差すのを感じて目を動かして見ると、怒りの形相をしたホワイトグリズリに見下ろされていた。口周りは人間の血で塗れ、大口を開けて俺の顔面へと血混じりの涎がかかる。
悲鳴の女の子、本当はシャルロッテと迷ったのですが、第二皇女様に致しました。悪役令嬢の登場は次かな。
天罰はまだ始まったばかり、まだまだ痛み付けられます(笑)バトルの描写が難しい…次回でvsホワイトグリズリは終わらせたいと思います。
ちょっと忙しくなってしまいまして、更新が週に一回か二回になりますが、お付き合い頂けたら幸いです。
次回更新をお待ち下さい。
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