第13話【恭士郎がぁ〜森の中でぇ〜ヤバいのと出会ったぁ〜(某滞在記風)・前編】
間に合わなかった。朝の投稿です。
ゴブリンの群れの中に突っ込んだ俺は、右手に持つ刀を振るって一度に三.四匹纏めて切り飛ばす。同時に左手で顎に掌底を食らわせて粉砕したり、左腕による回転肘打ちや右手に持つ刀の柄頭を叩きつけるようにしてゴブリン共の頭蓋骨を砕く。
ゴブリン共も手に持つボロい剣や鉈、小剣、短槍、などの取り回しの良い武器を持ってはいるが所詮は低知能の魔物だ。ランクはフォレストウルフと同じFランクだが、此方は動きは遅い分武器を持ち人間よりは拙いが連携して弓持ちや槍持ちなどが存在し、戦略も駆使して来る。
近接武器を持つゴブリン共を駆逐しつつ、少し離れた間合いから槍が突き出されるも、左手で横手から槍を掴んで引き寄せながら顔面に膝蹴りを浴びせる。
弓兵隊だろうか。後方から降り注ぐ矢の雨を体を半身にして避け首を傾けて躱しヒットしそうな物を刀で弾く。
『ちょ、飛び道具とか卑怯なりよ!?』内心弓矢にはビビっていたが、近くのゴブリンを始末しながらも、広い視野で襲撃者を捕捉出来た事には驚きだ。手入れしないのだろう、ゴブリンが持つ弓はボロボロで誰かに師事したわけでも無さそうなので精度も低い。数撃ちゃ当たる戦法を駆使して来る。
動体視力も恭士郎の体の為に弓持ちの位置から角度を計算して凡その予測も含め、腕も下手っぴなので放物線を描いて飛んでくる矢を躱す事が出来る。これは、矢をかっこよく掴む事も可能そうだ。
三十数匹居た群れも容易く殲滅。無双ゲージかなり溜まったんじゃ?無双乱舞使えないかね、使えませんよね。
「他愛もねェ。」
身体中が返り血の緑の液体だらけだ。普段なら気持ち悪くて嫌な気分になっただろうが、現在は気分の高揚で気にもならない。姫を助けに行かねば、我は勇者なり。ふはははは!
「クソ雑魚共が。数だけは多いな。」
奥へ進むに従い、強迫観念に追われるよう何だか死に物狂いで突っ込み襲って来るゴブリン達。
戦いは数だよ兄貴!だとでも言うのだろうか。残念だったな、幾ら鼠が集ろうが獅子には敵わんのだ。
俺はザコとは違うのだよザコとは。その後もゴブリン共を身一つで殺害して行く。
途中で倒した数も忘れた頃に、魔石回収出来なくて勿体無いなと思い、帰りに回収しようにも面倒だと結論付ける。
魔石の対価よりも、助けたレディとのラブが大事だ。
「ゴブリンキング…?」
ゴブリンの猛攻を退けるも、流石に全ての攻撃を躱す事は出来ず体に擦り傷を負い、制服が所々破れ掛けている。最後方にいたのは身長180cmある俺よりも大きな2m程の巨漢で、ゴブリンをそのままデカくしただけでなく、発達した筋肉が圧倒感を感じさせる。両手用の大剣を片手で持ち肩に担ぐようにして此方へとゆっくり歩いて来る。
うおおい!下位とは言え、Bランクのゴブリンキングがいるなんて聞いてねえぞ!え、学園そばの北の森に何でこんな大物がいんのよ?Aランクの奴二人要する奴ぞ。騎士団、サボってないでちゃんと仕事しろ!このゴブリンの多さも今なら納得出来る。ゴブリン共を統率するキングが居たからこその大軍だったのだ。
「上等だ…。」
ま、まあヒロインを助ける為のボス戦と考えれば妥当だろう。恭士郎ならば大丈夫。フォースを感じろ、フォースと共にあれ。右手に持つ刀を上段の構えをして、右足を一歩踏み込む。ゴブリンキングはこちらを格下に思っているのか、醜悪な笑みを浮かべて、肩に担ぐ大剣を構えもしないまま歩を進めて来る。
大剣の間合いに入ると奴は鉄塊のようなそれを上から振り下ろす。同時、俺も踏み込み愛刀を振るう。
「っ…!」
「グギャギャ!ギャ?」
互いの振り下ろされた凶刃が衝突。キィィンッ!と鉄同士が強い力でぶつけられたような高い金属音が鳴り響く。
衝撃を殺しその場から吹き飛ばされなかったとは言え、刀を持つ右腕が跳ね上がる。刀を手離す事もなかったが仰け反り隙だらけのマトリックスのような体勢になってしまった。
ゴブリンキングの方は、獲物を叩き潰せなかったのが不思議で、且つ振り下ろした大剣が威力を殺されて逸らされ地面へと減り込んだ事に、困惑しているようだ。
「…う、らぁっ!」
腹筋で何とか堪えて反動を付けて切り掛かる。袈裟斬りで振るった刀はゴブリンの肩口から腹部まで切り傷を与えるも、不安定な体勢で放ったから、致命傷にはならずに少ないながらも緑の血が舞う。
「ギャギャー!」
「ふっ!キングとは言えど所詮はゴブリンだな。」
下等な人間程度に傷付けられたからか、先程までにニヤニヤと余裕の笑みを浮かべていたゴブリンキングは激昂する。
正面から堂々とぶつけても、流石に片腕じゃ無理か。俺の考えが行けるとか思ってたのは、少々甘かったようだ。地面にめり込み振り上げられた大剣による逆袈裟斬りを体を半身にして躱しつつ、ついでに回転斬りを行いヒットする直前に両手持ちにして逆の腕を切り裂く。ゴブリンキングの左腕は半ばから切り裂かれ骨が半分見えている状態になる。
そして噛み付こうとして来たゴブリンキングの攻撃を摺り足で後方に移動しつつ接近状態から離脱。
『こ、ここ怖ぇぇえ!え、何なの?ブォンッてマジ風を切り裂く音が聞こえたんだけど。お前こんなの相手に正面からまともにやろうとしてたんかい!?しかも相手が片腕持ちだからってこっちも出来るとか、調子のんな!!つか、ビビらせるなんてゴブリンの癖に生意気だぞ。』
距離が離れた事により再度横に振るわれた大剣。当たれば胴体が真っ二つになり即死だろう。
「ギャ?」
「なまじ腕力があり過ぎるのも考え物だな。」
ゴブリンキングは標的を見失い口をポカンと開ける。振るわれた大剣を跳躍した躱すとそのまま大剣の上へと着地を決め、不敵に笑う。
「宗像流…穿撃空破。」
そのまま大剣の上を走り驚くゴブリンキングの不意を打ち、腰を捻り突き出した刀、腕も捻って回転力の付けた刺突は喉を貫き刀身の根元まで突き破る。
最後の抵抗を考えてゴブリンキングの肩を蹴って後方に跳躍し、地面へと着地する。喉を貫かれ刀が突き刺さったまま、ゆっくりとスローモーションのように背中から倒れて行くゴブリンキング。
「はぁ…はぁ…ふ。」
流石に強敵だったな、呼吸を整える。死んでるのを確認してから刀を引き抜く。勿体無いにも程があるので、そのまま刀で胸元を切り裂いて魔石を回収する。大物だけに手の平大あるそれは、キングだとしてもゴブリンには変わりなく色は無属性の透明色だったが。
さてさて、お待ち兼ねのイベントである囚われのお姫様はっと…___って、居なくね?
奥の方から無数の金属音が鳴り響く。あ、もしやこいつは全くの別件で、奥の方で盗賊共と護衛が戦ってるんじゃないか?クソ!ゴブリンキングと戦い損じゃないか。死ぬ思いまでして、魔石だけとか割りに合わねえぞ!中ボスと言われたら仕方ないな。後は盗賊共を華麗に殲滅して、ヒロインとフォーリンラブだ。行かねば。
流石に右腕が痛いな。いなすでもなくゴブリンキングの大剣の攻撃を片腕で刀ぶつけたんだもの。ゴブリンの群れの駆除にキングとの死闘。体力もそれなりに消耗したが、盗賊共相手なら30人位なら問題ナッシング!
時間も既に夕日を差している。更に森の奥へと進めながら考える。金属音が大きくなってなって来た。あれ?何か獣の鳴き声も聞こえね?金属音も聞こえなくなったし、フォレストウルフでもいんのか。
「ん?」
無警戒に茂みの中から現場に突入する。目に入った景色は空を飛ぶ金属鎧を纏う騎士の姿。薙ぎ倒されて無数に転がる木に、転がる人間の死体の山、正しく死屍累々と言えよう。
近くの木には腰が抜けたのか凭れ掛かるようにして座り込み、涙で晴らした目元の赤い女の子が嗚咽を漏らして、表情は死んだ目になっている。ヒューヒューと息を漏らす様は、エロい。
「…!」
俺の姿を見てから、所謂レイプ目に光が灯る。頑張って立ち上がろうとしてる女の子の栗色の長い髪を風が優しく包むように揺れる。
普段の俺ならば『ひゃっほー!美・少・女来たぁぁああ!さぁ、レッツフォーリンラブしよう!』とか言ってるだろう。うん、言っているな。しかしだ…見なかったようにしてたんだが。
バキバキッと何かを砕くような鈍い音の後には、クチャリクチャリと水分を含む何かを咀嚼するような水音が、交互に鳴り響く。ナンカ、タベテンノカナ…?
やがて、音が鳴り止むと中央に居た、この場で一番目立つ奴は、のっそりと動き白い背中の持ち主がこちらをゆっくりと振り返り、目と目が合う。目と目が逢う〜瞬間〜ヤバいと気付いたぁ〜。
俺は、一つ頷くと目を逸らさずに、ムーンウォークでそのまま飛び出て来た茂みの中に戻る。
次回、天罰!考え無しに調子乗ったカズヒサが痛い目に合う。
そしてこの女の子の正体とは?
次回、お楽しみに(笑)最初の方の話はバトル要素少なかった為、もう少しの間バトル濃い目でお送りします。




