第11話【ヒャッハー!俺tueeee…?】
授業が終わった今、今日は一大イベントが俺を待っている。面倒臭いルイスの野郎に絡まれて、ホント災難だった。
しかし、災いを転じて福となすとはこれの事か。そう、清掃活動である!階段下から見上げるパラダイス。女子トイレ清掃でなかったのは、残念であるが仕方あるまい。
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時間は少し遡る。モルディによるホームルームと一限目の授業が終わった10分休みの出来事。
落書きだらけの机で授業を受けていたが、交換しに行くか。机の中の小動物の死体は、ホームルームが始まる前に静流さんが取り出して片付けてくれました。
俺が机を抱えて運ぶ様はシュールじゃないか?ようは落書きが無くなればいいんだろ。彫られているなら、更に削れば良い。
徐に立ち上がり机から背を向けて一歩二歩歩む。
「…ふっ!」
そして、腰に携える愛刀の柄を握り、一気に抜刀し、回転斬りの要領で振るう。机の表面を切り裂いて平らにすれば良い。恭士郎の腕ならば造作もない事だ。無事、刀で切り裂いた感触を感じて鞘へと収める。
「お見事です。」
後ろの方に居た静流さんが胸に片手を当てて感嘆の言葉を吐く。
はは、出来ちゃったよ。信じて良かった。ここで空振ったりしたら、恥ずかしいしダサいよね。後ろ向いて見ずに振るったのは、よりかっこいいと思ったし、成功して良かった。
机の表面は衝撃でずれ落ちて地面へと落下する。
「ちょ、ちょっとアンタ何やってんの!?教室内でいきなり、レリック使わないでよ!」
「あ?能力は使っちゃいねェよ。刀として使って、落書きを削っただけだ。」
「そういうことじゃなくてね!」
「リリーシャ。彼に常識を説いても無駄さ、放って置くに限るよ。」
「ふふ、恭士郎様は常識では測れない、常識外の方なのであります。」
『いや、そそそその…落書き、消そうと消そうとと思って。能力は使ってないよ刀使ったけどどどぉ〜。』
ああ…リリたんの言う事ももっともだ。教室でいきなり刀ぶっこぬいて振るうなんて、DQNな真似するなんて。恭士郎の体だし、矢張り精神が引きずられているのか。尚もお説教かまそうとするリリたんをティナが嗜める。そして静流さん、それ褒めてるの?貶してるようにしか聞こえないよ。
机に手を着くと同時、ガタンと音が聞こえる。見ると机は中心に切れ目が入ったのか折れて真っ二つになっている。上の部分を削った為薄くなり、重みに耐えられなかったのだろう。
結局机の残骸の二つ、静流さんと二人で焼却場に持っていく事にした。
「あれ…キョウくん、シズさん。それは?」
残骸を捨てに教室の外へと出て、廊下を歩いていた所、丁度プリントを渡しに来たであろうミリア様に出会う。
手には封筒を持っていて、中にプリントが入っているのだろう。
にしてもいつ書いたんだ。ホームルーム前と一限目が終わって5分とかからずに書いたんだろうか。
これは、あれだ。シャルロッテ嬢に虐められている事を、ミリア様にチクれば叱ってくれるだろう。
「キョウくん、大変だったね。怖かったよね、ほらおいで。」とか言って慈愛の眼差しを向けるミリア様の胸に飛び込んで、豊満な胸に頬摺りしながら、よしよしと撫でて慰められるフラグか?
「恭士郎様は陰険な貴族のちょっかいに対して、気にしていないどころか、正面堂々といつでも斬り捨ててやると意趣返ししたのです!」
俺の斜め背後に居た静流さんが、えっへんと胸を張ってどうだと言わんばかりに、曲解した考えを口に出す。
ちょっとぉぉぉおお!静流さんや、貴族の頂点の位の人に、貴族上等よ!なんて事吐いちゃってんですかぁぁあ!
ただ落書き削ろうとしただけだから。そんな大層な意味込めてないからね。
「誰と問題起こしたの?それと物に当たるのは良くないよ。」
「辺境伯のお嬢様のちょっかいを受けただけだ。机はどっち道使いもんにならなかっただろうよ。」
「そうです!こちらはまだ何もしてません。」
ちょっかいと机で大体の事は察したようだ。ミリア様は頷いて理解を示す。
俺の言葉に付け加えるように静流さんが口を出す。いや、まだって。確かにもっと何かされたら、ちょっとしたお返しはするかもしれないけどさ。
「はぁ…あの子は…。分かった。注意しとくけど、くれぐれも無茶しない事。問題が起こりそうになったら、直ぐ私に報告するようにね。いい、キョウくん?それとシズさんもね。」
偉い家の子供程問題児も多いのだろう。溜め息を漏らしてから人差し指を俺の額に当てて、悪ガキに言い聞かせるように促して来る。胸キュンしちゃいますわ。
だがしかし、俺は兎も角、俺は仏頂面のままツンツンされる。後ろから静流さんが「なっ!?」と驚きの声を上げて、前に出て来ようとしたのに合わせてミリア様は封筒を渡して来て背を向ける。
「ちょっとお話し過ぎたね。詳しくはプリントに書いてあるから、掃除よろしくね。」
薄っすらと微笑んでから去って行くミリア様を見送る。ああ…お姉様。
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そんなこんなの出来事を思い出しながら、二階へと上がる為の一階の階段へ降りて行く。
ここを指定されたのは、人通りが多いからそれなりに埃が舞い汚れが溜まるからだろう。因みにルイスの野郎は反対側の階段を掃除しているらしい。ザマァ!奴はスカした顔で、平民の行き交う階段を掃除して悔しがっている筈だ。
箒で面倒臭い掃き掃除をさっさと終わらし、本命の雑巾掛けをする。水に雑巾を入れて絞り、二階から順繰りに拭いて行くとしよう。
だが、幸せな時間は訪れず。だってさ、みんな俺の姿を見る度に後退って逃げてくんだよ?野郎が帰ってくのは邪魔だからいいさ。でも女の子!僕は酷い事しないからね。そんな「ひっ!」やら「ひゃっ!」やら怯えた声出して去ってかないで。恭士郎がビビられキャラなの忘れてた。盲点だったぜ。
収穫の無さにテンションが下がり、黙々と階段を拭き、もうそろそろ終わると思った頃。
「キョウ様だぁ〜!」
神は居たのだ!二階の踊り場にアンリが立っている。腰の後ろで手を組み、俺を見下ろし甘えた声で話しかけて来た。階段をゆっくり降りて来て、太ももの奥に見える赤い布がチラチラと。ポケットからハンカチが落ちる。
「あ!落としちゃった〜。」
ニヤリと笑い、態とらしい声を出してから、階段上のハンカチを態々後ろを向きこちらに臀部を向け突き出すような体勢で拾う。剥き出しになった白い太ももとお尻、食い込みがががが、赤いパンツが諸にぃぃいいい!?神様仏様アンリ様!ご馳走様です、帰って速攻リビドーの発散を…あ、ダメだ同居人二人いるし。放課後こそは森で確認作業を…人居ないし森で発散しよう!矢張り天才か、俺。
ハッ!アンリのおパンツ様を他の奴に見られてるんじゃ?暫し、と言っても数秒だが、俺には数分も数十分にも感じられた幸せタイム。慌てて後ろを向いて確認する。
行き交うのは女生徒だけだった。ふ〜、良かった、独占欲が満たされたぜ。
「む〜、キョウ様、折角のサービスなのに後ろ向いてるなんて。アンリのパンツ、見たくないって事?」
「はっ、乳臭いガキのパンツなんざで興奮するかよ。もう見せんなよ。」
『ふひひ、ご馳走様でした。興奮しまくりました。是非またご拝見させて頂きたく。』ちょぉぉおお!変換先生!ご勘弁を!先生に初めて殺意湧きましたよ。
「ほら、先帰って遊んでろ。静流も先アパートで待ってると思うからよ。」
「は〜い。キョウ様、また後でね〜!」
名残惜しそうに振り返って何度も手を振りながら去って行くアンリと別れを済まし、学園北の森へと向かう。
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はい、やって来ました北の森。サービスタイムは一先ず終了。ここからは俺の独壇場。訓練の的を探すとしますか。
暫く森の奥へと進むとガサゴソと茂みから音が聞こえる。ヤバい奴じゃないよな?注意深く茂みを掻き分け、居たのはスライムだった。良かった、異世界物のテンプレで強キャラの魔物じゃなくて、初めは人型の魔物じゃないのも幸いだった。
切れ味が悪くとも剣を持っていたなら、子供でも倒せる最弱の雑魚モンスターだ。
そいつはぷるんと震えると突進して来る。横に一歩動くと、敵を見失ったスライムは近くの木へと衝突する。
「おぉ…。」
マジかよ、雑魚モンスターじゃなかったのか!木にぶつかったとこ、凹んでるじゃん。俺のパンチより強いじゃねえかよ。思わず声を漏らす。
ま、まぁ攻撃手段は体当たりだけだし。攻撃する時は体をぷるんと揺らし、一旦溜めが入るから、避けるのは簡単だけどさ。
「ふっ!」
俺は一歩踏み込んでスライムを蹴り飛ばす。サッカーキックって奴だ。蹴りをまともに受けたスライムはそのまま木へとぶつかり、地面をバウンドして何回か転がる。そのまま返す形で逆の脚で回し蹴りを近くの木へと叩き込むと、30cmくらいの木が、そこまで力を入れていないにも関わらずいとも容易くへし折れる。
矢張り、恭士郎の身体能力は優れている。現代の格闘家よりも高い攻撃力を持つ事は明らかだ。もしかしたら、リアル握撃も出来るかも知れん。この世界に計測器があるのかどうか知らんが、試してみたいものだ。
「矢張りか…。」
スライムは打撃耐性がある。ただの打撃武器ではダメージを与える事が出来ない。天遺物を使った場合は別だが。地面を転がって居たスライムは、何事も無かったかのように起き上がり、此方に再び突進して来る。
練習には打ってつけの相手だ。コンボの的になって貰おう。
【騎士は誓いの剣と愛の花束を】はアクション制もあり、技のコンボなどを追求し極めるのも楽しみ方の一つだった。俺がこのゲームに嵌ったのも戦闘要素が面白かったのもある。後は女性キャラのパンチラや乳揺れもだが…げふんげふん。
屈んで膝を突き上げる事で逆に突進して来たスライムを空中へと突き飛ばす。
「らっ!」
近くの木を蹴り、三段跳びの要領で飛び上がりスライムより高く跳躍して、空中で縦に一回転。回転飛び踵落としを決め、踵による蹴りと衝突させる地面とで板挾みにして衝撃を諸に与える。
また、反動で跳ね上がるスライムに地面ギリギリまで体勢を落として突っ込み、膝を伸び上げる勢いを利用したアッパー。
再び打ち上げられ、落下して来るスライム。膝を屈めてジャンプ、そのまま背中越しに後ろ蹴りで更に上空へと打ち上げる。
俺、tueeeeeee!気持ちぃぃ…テンション上がるわ!元の世界の俺ではとても真似出来ないし、既に体力的にバテバテだろう。
まぁ、いくらやってもあんま効かないんだがな。スライムはきっと「効かねえ!ゴムだから。」とか言っているに違いない。
だが、甘かったなスライム野郎。
着地した後、指を伸ばし右腕を曲げて肘を引き待つ。一歩足を後ろに下げて構える。
落ちて来たスライムに向けて、手首を返すようにしてから腕を突き出して貫手を放つと豆腐のような感触を感じながら体を貫く。
体を貫かれたスライムは辺りへと青い液体を四散させ、小指の爪サイズの透明の無属性の魔石を残す。
要らないもんだが、ポケットにしまっておく。
スライム相手にはしゃいで居た事に今更ながら恥ずかしく思う。静流さんやアンリにはとてもじゃないが、見せられないな。
「ん…?」
森の奥から生き物の複数の鳴き声が聞こえて来る。とうとう、憑依初戦闘開始か。スライムよ、お前の事は黒歴史として忘れさせて貰うぜ。
清掃パートが少し長くなってしまい、いつもより長くなっております。
今回の見所はあざといアンリとのムフフと、俺tueeeee(笑)となっております。
まともな無双は次回投稿にて!
他に、ムフフなシーン見たいキャラなどおりましたら、言って頂ければ…お応えします(笑)例え男性キャラでも!(爆)あ、嘘、石投げないで!ノリと流れで物語はお進めしますので。




