第10話【束の間の休息】
続けて朝投稿!夜と朝、どっちがいいのか。
茜色に染まる空は夕焼けを表している。生い茂る森の景色、目の前は無数の木が薙ぎ倒されており、バキバキッと何かを砕くような鈍い音の後には、クチャリクチャリと水分を含む何かを咀嚼するような水音が、交互に鳴り響く。
やがて、音が鳴り止むとのっそりと動く白い大きな影がこちらをゆっくりと振り返る。
「っ…はぁ…はぁ…ちっ…。」
体の動きが鈍い。調子に乗って、流石に消耗し過ぎたか。全身が緑を筆頭に様々な着色料を織り混ぜた色に染まり、息を整えるべく呼吸を繰り返す。
振り返った目の前の白い影に、舌打ちしてから睥睨する。意図してこいつに出会いに来たわけではなく、不運の偶然だ。
「何嬉しそうな顔してやがる。狩る者と狩られる者、獲物はどっちか分からせてやる。」
『こ、こ…ここここkoeeeeee!?え、ニヤリってしたよこいつ!食われちゃうの!?喰われるならエロチックで挑発的なお姉様に喰われたいですぅぅうう!無理無理無理無理無理無理無理無理無理!?逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ逃げなきゃダメだ(ry)』
動揺から何をして良いか分からず、額から流れる汗を腕で拭うも、顔も腕も液体だらけだ。正直気持ち悪いが、それどころではない。
まさに、不運と踊っちまったぜ。
どうしてこうなった。あのまま真っ直ぐ学園から、帰宅部のエースよろしく速攻帰っていれば…___________________
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頭がボーッとするな。授業が終わるも大半を頬杖ついて寝ていたので、休憩の10分休みの度に隣の席の静流に授業内容を聞いていた。
因みに俺の落書きだらけの机も、モルディの一限目の急遽復習に変わった授業が終わった後に、交換している。
今日は土曜日のような物。一週間は7日だが、曜日の呼び方が異なる。
このゲームでの曜日は、月曜=空の日、火曜=炎の日、水曜=海の日、木曜=森の日、金曜=黄の日、土曜=地の日、日曜=陽の日となっている。
「最後は魔物学か。何の魔物の話だ?」
「はい。ゴブリンやコボルトなどの二足歩行の物から、空を生業とする飛行種、水中に生息する種、などについての目撃又は討伐されて現在確認されている変異種についてです。」
「はー…。んで、何が可笑しい?」
言い終えると口元を腕で隠し、クスクスと笑いを漏らす静流さんに、何が可笑しいのか尋ねる。何か変な事言ったかね?
「ええ、すみません。その、アパートで本日の朝もそうでしたが…今日は珍しく、授業中にゆっくりとお眠りになっていましたので。恭士郎様がご安心して眠ってらしたのと、寝顔がどこか可愛らしかったものでつい…。」
俺は静流さんの言葉にギクリとする心を落ち着け、可愛いと言われてドキッとする。お姉さんな表情だ、子供になって静流さんに甘えたい。おねしょた、全然ありですとも!寧ろ好物です。
馬鹿にされてるか、遠回しな皮肉に聞こえるがこれは違う。
恭士郎は戦場に身を置く兵士か、それ以上に過酷な生活を送って来た経歴を持つ。朝起きた時に壁に寄りかかって寝ていたのも、いつ何が起ころうとも直ぐに行動する為。眠りが浅く熟睡する事は殆どない。静流さんやアンリ、従者達がそばに居たとしてもだ。
体は恭士郎でも、中身が和久に変わったから。現代日本で安全がほぼ約束された生活に身を置き、毎日最低でも6時間以上寝ていた俺は、浅い眠りでは満足せず、ボーッとしてて授業中寝ていたわけだ。
「はっ、うるせェよ。変異種か…静流やアンリは見た事や出会った事あったか?……ぁ、俺の知る限りじゃねェな。」
疑われているわけではないが、誤魔化す為に鼻を鳴らしてから話を元に戻す。
俺が知ってるのは、原作が始まってからの出来事。過去の事も回想や思い出的なシーンで知ってるが、知っている内容は幅狭く限られている。
静流さんの事もアンリの事も、大まかなキャラとしての設定で知ってはいるが、一人の生きた人間としての出来事は、一緒に育ち接して来たか俺は知っているが、俺は知らない。
これはあくまでも恭士郎の体。ふと、知らないが思い出せないだろうかと思い考えてみると、ズキリと響く頭痛と同時に切り取られた本のページの一部を見るような感覚で、過去体験した回想が連続して頭に浮かぶ。
「恭士郎様…?お加減は…。」
「問題ねェよ。寝過ぎたみたいだな。」
「なら良いのですが…。はい、まだ私もアンリも拝見した事も、出会った事はありませんね。」
痛みは一瞬であったし、表情には一切出していないが流石は静流さん。主人の異変に気付いたか。大丈夫だと返したが、納得してくれたかな。
変異種とは種類により、決まった個体で生まれて来る魔物が、文字通り突然変異を起こした生まれて来た物の事だ。
魔物も生息や生態が確認されているが、変異種は別だ。生まれて来る確率はかなり低く、原因も解明されていない。冒険者や傭兵に騎士など、戦闘における職業に置かれていようが、一生に一度見れるか見れないかの低確率だ。
もっとも遭遇した場合、そこで命尽きる可能性が大きいが。
「珍しさに見合って、奴らの素材や魔石は高く売れるからな。美味しい相手だ。」
出会う事は宝くじ一等当てるような確率だからな、心配いらないモーマンタイ。此処は一つ、恭士郎っぽい事を…
『めめ珍しさや、レアだしカードだと、SSRだだし…その、そ素材とか魔石とか、ぃ、いいいよねね。』朝から授業後、10分休みにずっと話してたが、緊張と嬉しいので綯交ぜだ。教室内で沢山人が居るとは言え、美人と二人きりはキツいです。ええ、今まで普通に話してるかと思ったか?残念だったな!実際はこんなもんや!
「私としては、出来れば遭遇したくないのですが。いえ、自身の身を案じているからではなく、恭士郎様に危険な真似をして欲しくはないと言いますか…。」
「俺を誰だと思ってんだ?ぶった斬るまでだ。」
はい無理っす、変異種なんて会ったらおしまいなんです。どれくらい無理かと言うと、ある日森の中空腹なヒグマさんにばったりあっちゃう感じ。猟銃とか持ってても素人じゃどうしようもないよね。
変異種は個体によって様々だが、最低でも元のランク+2ランクと考えて欲しい。
例えばファンタジーでお馴染み、雑魚か強キャラに分類されるが、今回は雑魚の方、通常のスライムがこの世界におけるタイプである。
魔物のランクは上はSから下はGまで分類される。もっとも通常のスライムは弱過ぎて例外で事実上オンリーワンのHランクだ。
通常スライムでさえ、最低Fランクに繰り上げされる。もっともこいつの場合、ゲームとかの設定的に変異種は災害指定のSランクとかになっても可笑しくはないが。
まあ、仮にFランク相当だとしよう。Fランクを倒すには安全マージンを取って学園のEランク2人〜4人、必要になってくる。
スライムくらいならまだいいが、変異種でBランク相当が出て来たら、A級のエリートが徒党を組み半分必要だ。Aランクなんて特A級含めてA級全員9人で掛かっても、倒せたとして半分は確実に死ぬだろうさ。
もっとも一部上位のBクラスやAクラスの魔物は学園生が対応せずに、プロの冒険者や本職の騎士が対応するんだろうけどな。
「そろそろ帰るか。」
授業も終わった事だし、帰宅する事にしよう。今日は地の日で午前授業。
朝、偶然リリたんと遭遇して出来なかったし、僕の安全な生活に掛けて、やっておくべき確認作業を行うとしますかね。
静流さんに、アンリと一緒に先に帰っているように言い。一人学園から北にあるひと気のない森へと向かうとする。勿論今回は帰宅する時間の指定をしましたよ。
今回は恭士郎と静流さんの二人劇。
クラスメイトはサブキャラが、リリたんとティナが居ます。主人公ちゃんが転入して来たらクラス一緒です。
次回は10話(プロローグ入れたら11話)にしてやっと、戦闘シーンが入ります!実地訓練まで戦闘シーン無しは、ちょっと長過ぎると思いまして(^^;;
他に戦闘シーンみたいキャラなどおりましたら言って頂ければ…お応えします(笑)




