異世界でなら俺だって

何も持っていない人間の異世界物語。

足集利智樹(あしゅりともき)は大学生である。
やりたいこともなく日々を無駄に怠惰に過ごす彼には口癖があった。
「あぁ、死にたい」
彼は実際に死にたいわけではない。
生きることに幸せより不安を感じてしまうのだ。
なぜ俺みたいなのが生きているのだろうか。
俺の命には何の価値があるのだろうか。
しかし、変わることもできない彼は毎日を捨てるように生きていた。

そんな彼はある日なぜか異世界で目を覚ます。
死にたいと、俺には何もないのだと、そう思って生きてきた彼は異世界をすんなりと受け入れる。生きながらに死んでいた彼は何故か異世界転移に心躍らせた。
俺はこの為に生きていたのだと、これからが俺の人生なのだと。
元の世界で何もできなかった人間が異世界で何ができるというのか。
すぐに彼は自分の無力さに気づく。

「神様！元の世界に返してください！」

そんなどうしようもない馬鹿で子どもな男のお話。