事の始まり
…2日前
事の発端はこの日から。僕の家の隣に引っ越し業者が来ていた。しかも両隣りだ。怪しすぎる。季節が秋であるのも時季外れであり怪しい。そのようなことを考えていると、片方から家主と思わしき人物がでてきた。
「あの…」
髪はボサボサ、すっぴん、おまけにダボダボのTシャツという胃もたれするほどの無頓着だが、以上の3点をどうにかすればかなりの美人であろう顔立ちをしていた。どんぐり眼に唇は薄く艶があり、美人というよりも可愛い系か。
「…!なんかついてます!?」
ジロジロ見過ぎたせいか彼女は聞いてきた。それにしてもリアクションが大きいのでは。
「いえ、特には」
気の利いた返事をしろと自分でも思うが仕方ない。僕は元来結構人見知りなのだ。
「良かった〜。朝慌ててて髪もとかせなかったし、化粧も出来なかったし、服も荷物に入れちゃってこんなもんしかなかったんだよね」
いつもはきちんとしていると言った後、突然ハッとした表情になった。
「ああ!…ごめん。自己紹介がまだだったよね。私は…阿部さんとでも呼んでくれないかな。正式な名前は長いし、下の名前で呼ばれるのも恥ずかしいからお願いね。じゃあ、私戻るから。後で正式に挨拶しに行くから」
この後、昼から始めたであろう引っ越し作業は夜8時頃に終わり、その後、彼女はやってきたのである。