日常
静かな町。
夏休みが明けて一週間がたった今日。
休み明けのテストの対策をしていなかったことを後悔して嘆く奴や、久しぶりに会えた友人に飛びつく子がいた光景はもう見なくなった。
代わりに、授業には夏休み前の光景が戻っていた。先生の子守唄のような長々しい教科書の説明を、睡魔と戦って聞いてるのは多分僕を含めて数名。なんとか眠い頭をあげて聞いてるやつも、あと5分くらいで力尽きるだろう。ノートに大体の要点をまとめ、これ以上の単元には進まないことを予想し、筆箱にシャープペンをしまった。
よく晴れている。
教室の窓から見える秋空を見た。
外は少し木枯らしが吹いて寒いが、窓から注ぐ太陽がとても気持ちいい。
ああ、寝ちゃダメだけど……なんだか…眠く……
コンッ。
眠気が一瞬途切れる。頭になにかぶつかった。その何かは僕の後頭部にぶつかって、綺麗な曲線を描き、失速して目の前に落ちた。手紙か?
[何寝ようとしてんだよ。
後あのセンセー言ってることわからん。ノート写させろ。]
ぶっきらぼうな言葉に反する丁寧な字が書いてある。僕は手紙が飛んできたであろう方向を振り返る。
中央から1つ右後ろの列から2番目、視線の先に僕を見て少しにやける髪の青黒い男がいた。またあいつか。
ルーズリーフを小さくちぎり、
[あいにくまだ起きてる。
お前こそ授業聞いてろ(-_-)。
昼休み焼きそば。]
と書いて小さくたたんだ。
寝ているやつを起こして後ろまで送ってもらうように頼む。すまんみんな。
手紙を見たあいつは少し笑ってから、指でOKサインを出した。
全く、貴重な睡魔を逃がしてしまった。
いや、寝ちゃいけないんだけども。
鈍い鐘の音とともに授業が終わった。