弱い僕と優しい兄さん
凌目線
フラッシュバックする。
過去の残虐かつ無慈悲な視線が突き刺さる。吐きそうになるほどの痛みに耐え抜けばあとは部屋に引きこもればいいだけ。
「兄さん…」そう呼ぶことさえままならなくて、僕は逃げた、僕だけの殻、幼い頃の記憶に。
兄さんも母さんも父さんもみんな優しかったあの頃に。
「凌…?」
ごめん、兄さん。
僕は、逃げることで幸せになれると思ってた。
違ったね、更に不幸になっちゃった。
僕は静かに腕を伸ばす。
動かすことの辛い僕の腕はなかなかあがってくれない。
兄さんはそんな僕の腕を握りしめてくれる。
「大丈夫、大丈夫だからな……俺はずっとそばにいるから。」
………あぁ優しいなあ、流石兄さんだ。
いつだって僕に優しいのは兄さんだけだったね。
どれだけ怒らせても次の日には何事もなかったかのように「おはよう」って言ってくれたね。
いくら冷たく当たっても、大丈夫だからなって言ってくれてたの悠真からきいてしってたよ。
ありがと、兄さん。
兄さんが居たから幸せだったよ。
だからお願い、泣かないで。
喧嘩した日もあったけど幸せだったから。
悠真がいて、悠真のお兄さんがいて、そして、僕の僕だけの優しい兄さんがいた。
ありがとう、兄さん。兄さんが、兄さんだけが僕だけの優しい家族だったよ。
ピーーーーーーーーーーーーーーー
……………………………………兄さんが大声で泣いてるような気がした。