突然
その日は突然訪れた。
突然凌が倒れた。俺は怖くなって凌を病院に連れて行った。
そして言われた。
『筋ジストロフィーです。』と。
俺は耳を疑った。筋ジストロフィーという名前の病気は聞いたことがあった。だけど、ほとんどは小学生のうちに車椅子生活になると聞いていた。…俺の弟がかかるなんて思ってもいなかった。だってあいつはもう高校生だったから…。
とりあえず入院してもらいましょうと言われ、俺は家で凌に必要なものを取ってくるため帰宅した。
そして、今に至る。俺は今頃になって涙が出てきた。ただ…荷物を取りに来ただけだったのに…。
「…なんで…凌が……こんな……」
俺は一人部屋で打ちひしがれていた。
筋ジストロフィー患者の多くは20代で死亡する。誰かから聞いたことがあった。
凌は今何も知らずに眠っている。
それがどうしようもなくもどかしかった。
悔しくて、自分が変わってやれたらと思った。
自分の命を全部あげてもいい、そんな覚悟もあった。
「…行くかな……待ってるだろうし…な」
そして俺は病院へと戻った。
手続きを済ませ、俺は凌のいる病室に入った。
「…っ…ごめん…なさい…兄さん、迷惑…ばっかりかけて…」
凌は俺の方を向けば申し訳なさそうにうつむいた。
一瞬見えたその顔は、目元が少し腫れていて泣いたことがすぐにわかった。
もう一度俺はこの可愛い弟を守ると決めた。