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救い
いつからだっただろうか。
僕が、おかしくなってしまったのは。
静かに零れる雨の音は、今まで生きてきた僕の人生を全て否定しているようだった。
救って、なんて言えなくて。僕はただ壊れていった。
何が怖いとかももう忘れてしまっていた。
過ぎ去った感情を拾い集めることをせずに生きていた。
でも、そんな感情の全てを義兄は全て拾ってくれた。
暖かかった。涙がこぼれた。
そうか…僕は義兄に救われたんだ…。
「悠真、ご飯できたぞ?食べよう?」
「うん…兄さん…いつも、ありがとう…」
義兄はまだ人を信じられない僕の唯一の砦。だから、義兄に裏切られたら、今度こそ僕は死んでしまうかもしれない。
まぁ義兄はそんなことしないって分かってるんだけど。
だって…義兄は言ってくれたから…。
『俺は死んでも、お前を守り続けていく。だから、もう、傷つけるな。自分を大事にしてくれ。…お前が傷ついてると俺が悲しくなる。』って…。
それを言うだけの人なら今までたくさんいた。でも、義兄は泣いていた。僕の手を握りしめて、懇願するように。
だから、僕は、義兄だけは、信じられるんだ…。