さとる
教室の窓から
いつも教室の中を覗き込む小さな男の子
その男の子は何時でも誰にでも見える事は無い
さたると僕との友情はめばえるのか?
父はこの町で産まれた。
この町は明治大正昭和と
産炭地として栄え
戦後のエネルギー革命により石油にその主役を奪われた石炭と共に一時期は、この小さな町に四万を越す
人たちがいた。
そして昭和四十八年に最後の竪坑が閉山しみるみるうちに人口が減っていった。
景気は落ち込みこの地を離れ、都会へと新天地を求め出ていった。
石炭を積み込み工業地帯へとその石炭を送り出していた小さな駅は
連日この町を離れる人達で溢れかえった。
僕の父もこの町を離れ
とある関東の地方都市に移り住み
そこで中学高校と進学し
鋳物工場へ就職した。
勤言実直な父は不満も言わずに真面目に働き
そしてお嫁さんを貰った。
そして…僕が産まれた。
今年父は五十一歳になる。
まだまだ働き盛りだと思う。
しかし…この頃は
『飯が旨くない。まるで砂を噛んでいる様だ』とボヤいていた。
会社の健康診断で
肝硬変の疑いがあります。との、通知を貰い…
精密検査をしたところ
C型肝炎で肝硬変だとの診断が下った。
父はお酒は飲まないが
このまま治療を続けても
余命三年との宣告を受けたらしい。
人間…自分の寿命が見えて来ると
無性に故郷が恋しくなる。と 父が言い出し
アパートを引き払い。
この過疎の町へ引っ越す事になった。
父の幼なじみが所有するアパートに入居した。
僕は近くの小学校に転校した。
一学年三十人足らず
一クラスしかない
そんな小さな社会に僕は溶け込めなかった。
一クラス僕を含め二十七人直ぐに名前も顔も覚えてしまった。
しかし…木造の小さな校舎の外からいつも…
教室の中を覗いている小さな男の子がいる。
休み時間その子に話し掛けてみた。
トテトテと何も言わずに走り去っていく。
僕はその子に興味を覚え
後を追いかけた…
が…
校舎を曲がったところで見失ってしまった。
首を捻りながら教室に戻ろうとすると。
また…
校舎の影から顔を出してこちらを伺っている。
僕は側に居た女子に尋ねてみた。
『あのさぁ…いつも教室を覗いてる男の子…
名前…何て言うの?』
女子の顔色が一瞬にして変わる
『その子どんな子 ?』
恐る恐る聞いて来る。
『短パンにクリクリ坊主
小学一年生位かな?』
と答えると
その女子は教室に飛び込み
『さとるが来てるって』
とクラスの皆に伝えた。
さとるって言うのかあの子は…
僕にはそれ位の認識しかなく
ザワツク教室に入り
自分の机の上に教科書を置いて
窓の外を見た。
すると…
先程のさとると呼ばれる男の子がこちらを覗き込んでる。
初めてさとると目があった。
声には出さず口だけで
さとる…
と呼び掛けてみる。
恥ずかしそうに下を向くさとる…
暫くすると、また…
顔を上げこちらを見ている。
この子授業に出なくていいのかな?
とも思ったがそこまでの
関心をさとるには持ち続けるには
授業が気になって持ち得なかった。
放課後
一人で歩いて帰っているとさとるが付いてくる。
角を曲がりさとるを待ち伏せしてみた。
トテトテ
僕を見失わない様にか急ぎ足で近づいてくる足音が聞こえる。
さとるが角を曲がってきた。
僕はさとるの前に立ち
『さとる』と初めて口に出して声を掛けると
飛び上がらんばかりに驚きさとるは尻餅をついた。
『ごめん…驚かせちゃったね』
さとるの脇の下に手を入れて立たせてやり
半ズボンのお尻に着いた
汚れを払ってやると
またも…
無言で下を向く
掴み所が無い子だなと思いつつも
小さい子には優しくして上げるのが上級生の努めだと
『さとる…家はどこ?
僕が送って行ってあげる』
と手を差し出すと
俯いたまま
さとるは僕の手を握った。
暫くはさとるが僕の手を引き
歩いて行くが
僕の家と同じ方向の様だ
途中赤とんぼに出会い
気をとられ
赤とんぼを追いかけようとするが…
『さとる…お家に帰らなきゃ』
と声を掛けると
また…僕の家の方へと
歩き出した。
そして…
僕の家のすぐ側にある
無人のあばら屋を指差し
僕の手を放し
自分の家と思わしきあばら屋を指差し
ニッコリと笑った。
玄関とおぼしき前に立つと僕に手を振った。
僕も、さとるに手を振り
別れを告げた。
家に帰ると父が病院から治療を終え帰って来ていた。
インターフェロンはかなり副作用が厳しく辛いようで父は横になっていた。
父に少し遠慮があったのだろう。
僕はさとるの事を聞いてはみなかった。
父の容態は芳しく無く
顔色もどす黒く
体を起こして射る事も辛そうだった。
だけど…
小学六年生の僕に出来る事は何もない
僕のやるべき事は
毎日真面目に学校に行く事だ。
今日もパートに朝早く出ていった母さんが作り置きしてくれてた、朝ごはんを食べて
ランドセルを背負い
学校へ向かう
あのあばら家の前に、さとるが立っていた。
今日も、さとるはランドセルすら背負ってない。
『さとる…おはよう』
さとるは…
何時もの様に下を向く。
未だに、さとるは僕に微笑み掛ける事は無い
そして…未だに声を出さない。
僕の声は聞こえている筈だ喋れないわけでも無さそうだし
さとるにはまだまだ…
訊ねて見たいことが沢山ある。
何故…あの無人のあばら家に住んでいるのか?
両親は?
どうして授業にも出ずに
僕の教室に顔を出すのか?
訊ねてみたいが
まだ、さとるは心を開かない。
なのに…
僕の後ろを付いてくる。
校門の前まで来ると
さとるは
嬉々として何処かに行ってしまう。
なのに…
いつの間にか僕の教室を覗いてる。
給食の時間
みんなが食べる姿を羨ましそうに見ている。
そこで…牛乳の飲めない女子に牛乳を貰い
僕のパンを半分千切り
さとるの前に置いてみた。
嬉しそうにニッコリと笑うさとる。
初めて見せる笑顔だったが何時までたっても手を付けない。
嬉しそうにパンと牛乳を眺めて居るだけだ。
こんな事が毎日続いた。
来る日も来る日も
さとるの前に置かれたパンと牛乳を眺めているだけで…
手を付けない。
その内クラスの中の話題になる。
何時も牛乳を貰う女子が
訊ねてきた。
『この牛乳…
さとるにあげてるの?』
『うん…いつも…ただ…
ニッコリと眺めて居るだけだけど』
『今日も来てる ?』
おかしな事を聞く…
『うん来てるよ』
教室にどよめきが走る
『さとると話をした。?』
『ううん…』と僕は首を振った
会話はそこで途切れ
クラスのざわめきも収まりつつあった。
さとるに何時もの様に
牛乳とパンをあげた。
またもニッコリと笑い眺めて居るだけだった。何時も牛乳をくれる和美ちゃん
彼女は牛乳が苦手らしい。毎日さとるの分の牛乳をもらっている内に親しく話をする様になった。
『ねぇ…貴方には、さとるが見えるの?』
『って事は和美ちゃんには見えて無いの?』
『でも…この学校の生徒はさとるが…
どんな姿かは知ってると思う。』
『どう言う事?』
『たまに…さとるが見える人が居るの?』
『じゃあ…みんなにさとるは見えて無いの?』
『さとるはね…
昔から学校に住み着いているんだって
私のお父さんとお母さん
この小学校の卒業生なのね
その頃には、さとる…
この学校に住み着いていたらしいの?』
『えっ…さとるは家の近所のあばら家に帰って行ってるよ。』
『そうなの?
先生はさとるなんて少年は居ないって否定してるし
私達の親も、さとるの
話はしたがらないの』
『そうなんだ…
少し気味が悪いかな?』
『でも…何もしないでしょ』
『うん…たまにニッコリ笑うか恥ずかしそうに俯くんだ。
そうそう…
一度だけ手を繋いだことがある。』
『さとると手を繋いだの?どんな感じだった。』
と、身を乗り出して来る。
『別に…ちょっと、さとるを待ち伏せしたら
さとるが驚いて尻餅をついたんだ。
それで…さとるの家まで
手を繋いで送ってっただけだよ。』
『そうじゃ無くて…
さとるの手は異常に冷たかったとか?』
何故か和美ちゃんが
興味本意で、さとるの事を根掘り葉掘り聞いているようで
さとるに、すまない思いがした。
和美ちゃんとの話を早く打ち切りたくなったが…
和美ちゃんの好奇心は暫く僕をはなさなかった。
放課後…
何時もの様に付いてくる、さとるに何気なく
『さとる…お前…
幽霊なのか?それとも妖怪なのか?』
と、話し掛けてみた。
やはり…
何時もの様に
うつむき何も答えなかった。
さとるとは何時ものあばら家の前で別れた。
これも何時もの様に
さとるは手を振っていた。
僕は家に帰り
横になり休んでいる父の
前に正座し
『父さん…
さとるって知ってる?』
と聞いてみた。
父さんは
『お前… さとるを見たのか?』と訪ねて来た。
『うん…何時もそこのあばら家迄一緒に帰ってる』
『そうか…さとるを見たのか…』と寂しそうに呟き
横になっていた体を起こした。
『ヤッパリ父さんはさとるが何者かを知ってるの』
『いいや…それは…
誰も知らないんじゃ無いかな?』
変な話だ
明らかに父さんは、さとる、と聞いて動揺した。
『あれは…私が幼い頃…
そう…
昭和四十年六月一日の事だ』
今から48年前の話だ
僕は父が話し出すと共に背筋を伸ばした。
何故かそうしなければ
いけない様な雰囲気か漂って来はじめたからだ。
『その日は…何故か複数の生徒に、さとるは見られていた。
何故か廊下を走り回ったりしていたらしい。』
『えっ…さとるが?
校舎の中に?』
『そうなんだ
今までそんな姿を見られた事がない。
だけどその日は複数の人に見られている。
どうしてだろうなぁ
さとるは授業中も廊下を走り回っていたらしい。』
さとるらしくない
何時も声を掛けると
俯いてしまう程の恥ずかしがりやなのに…
『そして…十時になると
ズンっ!と校舎が揺れ
非常サイレンが鳴ったんだ』
みんなは教室を飛び出し
視線を一ヶ所に集めた
ソコには黒とも濃い茶色ともつかない不気味で不安を増幅させる
煙がモクモクと立ち上っていた。
誰かが
爆発だ!竪坑で爆発が起きたぁ
と叫んだ…
学校の三分の二が炭鉱に従事している家庭の子供達だ
炭鉱は二十四時間堀り続けているんだ
八時間三交代で坑口に入る
ソコには今日たった今父親が炭鉱に下がっている生徒も何人かいた。
直ぐに町中を
カナリヤいませんかカナリヤ居ませんか?と
マイクで叫ぶ声があちらこちらて聞こえる。
カナリヤは毒ガスに敏感だカナリヤの籠を棒の先につけカナリヤが鳴かなくなったらソコには一酸化炭素が充満していると言う事だ
そうして二百四十人を越える死者をだす。
大惨事になった。
不思議な事は、さとるを見た生徒の親が事故に巻き込まれていたと言う事だ』
『さとるはそれを知らせる為に…姿を表し
廊下を走ってたの?』
『そう考えるのが
自然だろうな』さとるは、これから 起きる
大惨事を何らかの
方法で知ることが出来るんだ、
さとるか、見える…
すなわち
近い将来…さとるが見える僕にも何らかの不幸が訪れるかも
知れない。
この事実が、さとるを
学校の先生達が
そんな…
子供は存在しない
と言う根拠なのかも
知れない。
それで
父さんは少し狼狽えたのか?
それは…さとるのせいじゃない。
さとるは死神何かじゃ無い
学校のみんなが
慌てない様に前もって
姿を表すんだ。
僕はそんな風に納得しようとした。
次の日…
また、さとるが登校の時に後ろをついてくる。
今まで気付かなかったが
さとるの靴はボロボロだ
前も後ろも
口を開いてる
そう言えば近所の信くんが靴が小さくなったから
新しく買って貰ったと
喜んでいた。
信くんの、おばちゃんに
頼んで
要らなくなった靴を
貰いに行こうか。
なんて考えているうちに
学校に着いた。
ランドセルを
教室の後ろに置き
机に座り窓の外に居る
さとるを見た。
《オヤッ》
さとるが居ない
さっきまで後ろをついて来ていたのに
僕は窓から身を乗り出す様に顔を出しさとるを探した。
《居たっ…》
四年生の教室を覗き込んでる
少しばかり寂しい気がした。さとるが窓の外に居ないと何かが違う
何処が…
と聞かれてもはっきりとは答えられない。
そして…給食が終わり
昼からの授業には
まだまだ時間がある
僕もみんなと同じ様に
外へ出てみようか?
等と思っていると
廊下て声を掛けられた
『あのぉ
さとるが見えるんですよね?』
誰だろう
見知らぬ女の子だ
『私…四年の鈴木幸子と言います。
今日の朝から
さとるが私の教室を覗いてるんです』
僕は妙に納得した。
『さとるが四年生の教室を覗いて居るから
誰の所へ行ったのかなぁって思ってたんだ。
そうか…
君の所へ行ってたのか?』
僕はなるだけ明るく
幸子ちゃんに
不安を与え無いように
明るく答えた。
『さとるが見えると誰かが死ぬんでしょ?』
『まだ…僕の所は誰も死んで無いよ
僕は、さとるって
みんなが思っている程
怖い存在じゃ無い気が
するんだ。
幸子ちゃんもあまり神経質にならないで』
『そうですよね?
あんなに小さな子が
不幸を呼ぶはず無いですよね』
『不幸を呼ぶんじゃなくて知らせに来てるんじゃ無いかな?』
『ふうん…そうなんですか?
なんか…少し安心しました。』
と言葉を残し幸子ちゃんは教室に帰って行った。
放課後いつの間にか
下校する僕の後ろを
さとるがついてくる
そして…
あばら家の前で、さとるに
『少しだげ待ってて欲しい。直ぐにもどるから
さとる…絶対にまってて』
僕は急いで信くんのおばさんに靴を貰いに行った。
靴を掴むと走って、さとるの元へ戻ると、さとるは石段に腰掛け僕を待っていた。
口が空いた靴を履いた足をブラブラさせながら。
僕は息を乱しながら
『さとる…お下がりだけど靴をもらって来たよ。』
さとるは、まだ足をブラブラさせてる
『ほらっ僕が履かせてあげるから』
僕はしゃがみ込み
さとるに靴を履かせる時に
『どうして…
幸子ちゃんの所に行ったの?』と聞いてみた。
さとるが返事をしない事は百も承知で…
僕の肩口から
『ひ、と、は、
み、ん、な、死ぬ』
と…たどたどしく
さとるが喋り出した。さとるが
口を開いた。その事実に
僕は驚き
さとるの足下に落としていた視線を、さとるに戻した。
『ヒ、ト、シ、ヌ、ト、
カ、ナ、シ、イ、』
やはり…
さとるは怖い存在じゃ無い
人が死に嘆く姿を見て
この小さな、さとるは
胸を痛めているんだ。
そう思うと
何故か堪らなく、さとるがいじらしくなった。
気がつくと
『さとる…一人で抱え込まなくて良いから…
僕も…
学校のみんなも居るから』
涙を流しながら、さとるを抱き締めていた。
さとるは…
なぜ僕が泣いているのか
なぜ抱き締められているのか?
理解して無いようだった。
さとるは信くんのお下がりの靴を何時までも眺めていた。
嬉しそうに…
嬉しそうに…
今まで履いていた
この…ぼろ靴をどうしょうか?
さとるの顔色をうかがってみると
さとるは両手を出している。
さも…それを…寄越せと言わんばかりに…
僕は、しっかりと、さとるの手にぼろ靴を渡すと まるで…宝物でも手に入れた様に自分の胸に抱き締めていた。
その日の夕方…
母さんが早めにパートから帰ってきた。
久し振りに
三人で食卓を囲む
父さんは久々に体調が良いようだ。
いつも…子供の僕が見ても体がだるそうだ。
笑い顔を絶やさない
父さんを僕はマトモに見れない。
そして…
『お父さんは今度入院するお父さんがいない間
母さんを頼むぞ』
うん…と頷くしかなかった。
程なくして父さんは入院治療に入った。
学校の下校ルートが変わる。
父さんの病院に顔を出してから家に帰るからだ。
下校の途中
鯨幕の家がある。
田舎では今も自宅で葬儀を行う所も多い
電柱に指を指す張り紙がしてある
気になって、
その家の名前を読んでみた。
鈴木家 鈴木トヨ
と書いてあった。
僕は立ち尽くして
『幸子ちゃんの家だ』
誰に聞かせる事もなく
呟いていた。
どれ程…僕はその場に立ち尽くして居たのだろう?
慌ただしく、たち働く
人達の動きを、何の感想も無く眺めていた。
しかし…
父の病室に行かなければとその場を後にする。
幸子ちゃんの心の痛手を思うと胸が締め付けられる。
そんな気持ちを抱えたまま父の病室に入った。
『父さん…今日の具合はどう?』
べっとから、ゆっくりと身を起こし…
『まあまあだ、
それより…何かあったのか?
何時もと少し雰囲気が違うぞ?』
この病室まで
先程のショックを引き摺っていたみたいだ。
僕は懸命に明るく振る舞おうとした。
でも…上手く表情をつくる事は出来なかった。
『心配事があったら遠慮無く、父さんに相談するんだぞ』と
別れ際に声を掛けられ
やはり上手く表情をつくる事が出来ずに俯き加減で
『うん』
と返事するのが精一杯だった。
病院を出ると、
陽が沈みかけていた。
足早に家に帰ると
玄関の前にさとるが俯き
立っていた。
俯いてと、いうより
項垂れて居ると表現した方が適切かもしれない。
『さとる!』
僕が声をかけると、
顔も上げず、僕に走り寄りしがみついて来た。
『さとる…君のせいじゃ無い!
君は…悪くない…
君には人の不幸が見えて仕舞うんだね?
人は必ず死ぬんだから
覚悟が必要なんだと、
伝える為に姿を現すんだね?
僕は今日…はっきりと解った。
さとる…君が、はっきりと見える僕は近い将来大事な人と別れなければ
いけないんだね。
僕は、覚悟を決める…
そうすれば…
いざという時取り乱す事は無いからね。』
僕にしがみついている
さとるの肩が小刻みに震えていた。
一週間ほどして
幸子ちゃんが、僕の教室を訪ねて来た。
『おばあちゃん…
前の日まで…笑っていたのに…
朝になると…冷たくなってたの。
さとるの事があったから
なんとか…
おばあちゃんと、お別れが出来ました。
さとるにお礼を言おうとしたら…
もう…さとるが見えないんです。
もしも…まだ…さとるが見えてたら…
私の代わりに
『ありがとう』って伝えて下さい。』
と、ペコリと頭を下げて
四年生の教室に帰って行った。
幸子ちゃんは
しっかり
おばあちゃんの
死を受け止めた。
さとるが見える以上僕にも身近な人の不幸が訪れる事だろう。
認めたくは無いが…
早くから僕は気付いてる。
だが確りとは認めたくは無かった。
さとるが小さな肩を震わせながらも
心を痛めながらも
これから…
訪れる不幸を知らせようとしてくれる。
その気持ちにいざとなれば僕はお母さんの力になり
乗り越えて行かなければならないだろう。
ふと頭をよぎる…
何故…さとるはそんな事をしなければいけないのか?
それをしなければいけない何かが、さとるには
あるのか?
僕は…まだ…
さとるが何者か知らない
あれこれ思案を巡らすが?小学生の僕には
その真意は掴めなかった。
やがて…
時は過ぎ…
先生から通知があった。
生徒数減少により
この町の三つの小学校を二つに統廃合にするという。
僕は転校して来てまだ間がない
その事実を今…
初めて知った。
この学校の思い出と
校舎を航空写真で残すので明後日運動場で
人文字をつくりこの学校の記憶を何時までも残そうとするらしい。
『先生!統廃合になったらこの校舎はどうなるんですか?』
『君は知らなかったのね
来年この学校は
竪坑の跡地に統廃合されて東小学校になるの…
寂しいけれど
多分この校舎は取り壊される事になるでしょうね。』
僕はその答えを聞き
力無く椅子に腰を落とした。
この校舎が無くなれば一体…さとるは…
どうなる…一体何処へ行けば良い…
その日一日その事が頭を埋め尽くしていた。
次の日…
全校で人文字の練習をした。
ライン引きで
この学校の校名を書き
その上に人が立つ
ただ…
それだけだ。
そして…
本番当日を迎え
飛行機が頭の上を飛ぶ
それで、呆気なく撮影は終わった。
数日後
その写真が廊下に張り出され
購入希望者は
その前に置かれているノートに記入してくれということらしい。
誰かが
『これは!誰だ?』と
声を上げた。
誰もいない筈の校舎、
それも…
僕らの教室に面した中庭に小さな男の子が写ってる。
これまた誰かが
『生徒全員、運動場に居るんだ。
中庭に生徒がいる筈はない』と
多少ヒステリックに叫ぶ
しゃがみこむ女子
ざわめく男子
僕はその間を掻き分け写真の前にたどり着いた。
僕らの教室に面した中庭を探した。
そこには一人…
上を向いている
さとるが写っていた。
さとるもこの学校の歴史の一部だ
写り込んで当然だ…
僕は何も言わずに教室へ帰った。
暑い夏が終わり
空に浮かぶ雲が高くなった頃
父さんの具合は少し
良くなってきた。
父さんは
『一時的なものだよ』と
話を濁すが
僕にはそれでも嬉しい。
そんな時
東シナ海を北上してくる
大型の台風があった。
予報円を見る限り
ここら辺りは直撃の様だ。
さとる…
台風の時はどうしてるのかが気になる。
明後日には上陸するみたいだ。
そして…
予報円に示された通りに
長崎沖から進路を変えた
台風が九州に上陸した。
最悪のコース
偏西風に乗り
速度を上げてこの町を
直撃した。
吹き荒ぶ風と雨のなか
カッパを着込み長靴をはき
傘を持って学校へ向かった
強風に飛ばされたスレートやタキロンが空を飛んでいく
それ程の風に家を出て直ぐに傘はダメになった。
打ち付ける風と雨に逆らい学校に着いた。
朝町内放送で臨時休校を告げる放送があったため
学校には生徒も先生も居ない。
本来なら下校の時間帯の学校は
その木造の校舎を強風にきしませながら
雨に打ち付けられながら耐えていた
僕の教室へ廊下を走る
『さとる!さとる!』と大声で叫びながら走る
さとるは下駄箱がある土間に居た。
『さとる!』
僕の呼び掛けにさとるは振り向き
その表情は不安を募らせていたが
僕を認めるとその不安の表情は消え破顔した。
『さとる…教室に入ろう』さとるの手を引き教室に入った。
教室のガラス窓は強風を受けるたびに膨らみ雨が打ち付ける度に雨が漏れる
さとると教室の中央で蹲って時をすごした。
それは突然にやって来た。
急に雨と風がやんだ
教室の後ろに掛けてある時計を見ると六時を指してるさとると中庭へ出てみた。
夕焼けに染まる空がポッかりと穴が空いたように口を開けてる
その縁をまるで龍が囲むように雲が渦を巻いている。暫しの間見とれてしまった
さとるはアングリと口を開けて見とれている。
『台風の目に入ったんだよさとる…』
三十分程幻想的な光景に二人…心を奪われていた。
台風の目が過ぎると吹き返しがやって来た。
台風が過ぎたのは
九時を過ぎていた。
秋も深まり
夜になれば既に半袖では、寒くなってきた。
昼間は、空が高く澄み渡り
夜になれば、月や星が近くに見える。
僕は、ゴソゴソと自宅の机を漁り、目当ての物を探し出した。
それは…正座早見表
去年、雑誌の付録だったものを、机に仕舞って置いたのを思い出した。
それは…簡易的な早見表ではあるが。
主要な正座一等星が載っている
今は、中秋から晩秋にかかっている。
夕焼けが、グラデーションを伴い、徐々に夕闇が漆黒の闇を纏い始める頃
さとると、僕は学校の運動場に居た。
辺りに光は無く、
殘月は太陽より先に沈み
絶好の観察日和が訪れた。
『さとる…ほら…
一番星』と、先ほど山の端に沈んだ太陽の所を指差した。
『あれはね…宵の明星
金星だよ
太陽、月に続いて明るい星なんだ。
あんなに、ちっこいけれどこの地球と、ほぼ同じ大きさなんだ。
そして…
少し南西の空を指差し
『あれが蠍座
赤い星があるだろ?
あれがアンタレス
赤い蠍の目玉だよ』
そしてくるりと振り返り
大きな懐中電灯を取り出し空に光を向けた。
その光はサーチライトの様に光の帯を引き
東の空の低い位置に
鈍く輝く一つの星を照らし出す。
『さとる…あれはね?
冬の正座の代表とも言える『オリオンの剣先だよ。
あのオリオンはね
狩りの名手だったんだ。
しかし遊び半分て狩りを楽しみ
必要以上の狩りをした。
主神ゼウスの嫁のヘラが放った蠍に刺されて死んで仕舞うんだ。
そして…
その死を悲しむアルテミスの願いが聞き入れられ天空の星座として空に昇ったんだよ。
だから…
オリオンはね、
蠍の赤い目玉が空に見えてるうちは
その姿を表さないんだよ。』
そろそろ…
少し冷え込んできた。
僕はリュックの中から
一枚のジャンパーを取り出した。
晩秋に差し掛かろうと言うのに
さとるはランニングに
半ズボンのままだ…
『さとる…少し大きいけど僕にはもう…
小さいから
君にあげる…』
とさとるに羽織らせ
袖を通らせてあげた。
赤いジャンパーはいくらか寒さを防いでくれるだろう
僕は次の星座を指差し
神話に纏わる話…
そして東の空に姿を表したオリオンの真ん中の三ツ星に寄り添う様に
輝く小三ツ星の話…
その真ん中の星はあと六百年以内に大爆発をするかも知れないこと
北の空を指差し
あれは…北極星…
旅人の空の目当てだよ。
あの星だけは動かないんだ
そんな事を懐中電灯を照らしながら
さとるに話しかけた。
さとるには難しかったのか?
ただ…静かに星を見上げていた。
僕らの周りでは
季節に乗り遅れた虫の声が寂しく聞こえていた。
町はクリスマスに染まっていた。
こんな過疎の町でさえ
浮かれ気分に染まっている。
シャッター通り商店街にもチラホラとクリスマスのディスプレイが店頭に並ぶ
クリスマスイブを迎える頃には学校は冬休みに入る。
さとるは一人なのか?
心はそこから離れない。
父の具合が十二月に入ると急に悪くなった。
さとるの様子を見に行く余裕は無い
今日も面会時間に合わせ
父の見舞いに行く。
『父さん…おはよう』
病室のドアを開け
父に挨拶をした。
しかし…
父のベットに父の姿は無かった。
仕方なく。
ベットの横に置いてある
椅子に腰掛け
父の帰りを待った。
父と同じ病室のおじさんが
『缶詰めだけど…食べる?』と勧めてくれた。
僕は遠慮がちに
『有り難うございます。
気を使って頂いて
有り難うございます。
ご厚意に甘えて頂きます。』
おじさんはニッコリと笑いミカンの缶詰めをパカッと空け
小皿に移してくれた。
僕はまたもおじさんにお礼を述べ小皿を受け取った。
『美味しいかい?』
僕は缶詰めのミカンを口に運ぶ手を休め
『はい!』
と元気良く返事をした
『君のお父さん今…
治療に行ってる。
お昼前には帰ってくるよ』
『はい…』
と力無く返事をした。
昼前に父は病室に帰ってきた。
看護師さんに車椅子に乗せられて
そんな父を驚きと安堵の入り交じった表情で迎えた。
父はベットに自力で移り
『驚いただろう?
治療の行き帰りは万一の為に
車椅子で治療する所を往復するんだ
だから…心配は要らないよ。』
父は僕の髪の毛をくしゃくしゃと撫でながら
イタズラ小僧の様に
ニカッと歯を見せて笑った。
僕は父が髪の毛をくしゃくしゃと撫でながらニカッと笑う、この仕草と笑顔が
大好きだ。
『もう…父さんったら』
と父に笑い返す。
それからは
何も言葉は交わさなかった。
。
父はベットに横になり微かに寝息を立てている。
面会時間が迫り
父を起こさすに
同室の患者さんに挨拶を済ませ病院を出た。
家に帰る途中、母さんの働くスーパーに寄り
母さんの仕事終わりを待った。
僕は母さんと手を繋ぎ
アパートまで帰ってきた。
母さんが…
『さあさあ…今日はクリスマスイブ…
家はクリスチャンじゃないけど
お祝いはお祝いよ』
とケーキを出してきた。
『メリークリスマス』
と二人だけのクリスマスが始まり
10時には眠りについた。
翌朝目が覚めると
枕元にマフラーが置いてあった。
着替えを済ましマフラーを巻き僕は外に出た。
母は既にパートに出ていた。
その足で学校へ向かい
さとるを探した
やはり何時もの中庭に
さとるはいた。
『さとる…お下がりだけど
メリークリスマス』
と僕が今まで使っていた。マフラーをさとるの首に巻いてあげた。
年が明け正月休みの時でさえ父は一時帰宅を許されなかった。
『なぜ正月なのに父さん帰ってこないの? 』
と母に詰め寄る。
母は何も答えすに振り返り晩御飯の用意をしていた。
『だって…父さんの病室の人達みんな一時帰宅してるじゃない?
どうして父さんだけが…
病院に残るの?』
母は料理の手を止め
鍋の火を落とした。
そして…振り返り僕の目の高さに迄腰を落とし
『良く聞きなさい
父さんは病院から帰ってこないのは
それだけ具合が悪いのよ』
母は真剣な眼差して
僕の目を見詰めている。
迫力があるわけでも無いのに
その目から目が離せない。
僕は何も言えずに
ただ…拳を握りしめた。
正月の松も取れ世間は
正月休みを取り戻そうと
活気づく
そんな中を病院に父の見舞いに行った。
ベットに体を起こす事さえ億劫そうだ。
しかし…息子が訪ねて来るのは嬉しいらしい。
病院の机の上に
まだ関東にいた頃一度だけ行った。ディズニーランドで三人で写っている写真が飾ってある。
『父さん…退院したら
また…三人でディズニーランドに行きたいね?』
『そうだな…頑張って
早く病気を治して
また三人で
ディズニーランドに行こう。
今度は父さんもお前と
乗り物に乗りたいな』
『ほんと?ぜったい?
約束だよ』
『ああ…約束だ』
その時の父の笑顔に翳りがある事など…
小学六年生の僕には
窺う事すら出来なかった。
面会時間の終了が迫ってきた。
『父さん…もうボチボチ時間だから…』
と、椅子から腰をあげようとした時
父の手が僕の手を引き寄せ僕の頭を父の胸に押し付けた。
『どうしたの…
父さんいきなり…』
『面会時間を過ぎるまで
お前を抱き締めていたい』
『恥ずかしいよ…』
『父さんの我儘だ少し…
辛抱しててくれ…』
僕はただ父に染み付いた病院の匂いが父の匂いになっていくのが怖かった。
そして蝋梅の香りが…
あちこちで漂い始めた頃
父の意識が混濁し始め
蝋梅の時期が終わりを告げ飛梅の開花のニュースが
流れる頃…
父は危篤状態に陥った。
母と病院に駆けつけるタクシーの中で
『父さんは肝硬変じゃなくて肝臓ガンだったの。
見つかった時には既に
リンパに飛び火して
全身転移してたの…
手術は難しく
抗がん剤と放射線治療
で今まで長らえて来たのよ。
この間からモルヒネを投与してたの
あなたも…それなりの…
覚悟を決めておきなさい。』
『うん…こうなる事は
予測が着いてた。
覚悟を決める時間は
タップリあったからね』
さとるの事を知らない母は驚きの表情で僕を見詰めていた。
母と僕が病院へ駆けつけた時
既に父は生命維持装置にて辛うじて生きている。
という、感じだった。
いや… 生かされているとの表現が正しいと
思えるように、無機質な
機械を通した呼吸音だけが今…父が生きている
証しに聞こえた。
病室に入ると
先生と看護師さんが
ベットの脇に立っていた。
母は
先生と看護師さんを押し退け
『あなた!!』と
父にしがみついた。
つい…先程それなりの覚悟を決めろと僕に言ったのは母だ。
父にしがみつく母の心境はいかばかりのものだろう。伴侶を亡くす悲しみなのか?
それとも…世間に僕と二人だけで放り出される
恐怖なのか?
はたまた…
今にも消え入りそうな父の命を惜しんでいるのか?
多分全てが母の覚悟を打ち砕いた。
父は…母と僕が手を繋いでいるうちに
静かに息を引き取った。
父の手を握りしめ
もう…この手は僕の頭をくしゃくしゃと撫でる事は無い。
それを思うと…
頬を一筋の涙が伝い父の手の上に落ちた。
通夜と葬式を迎えた。
父の親族は驚く程少なく
母方のお爺ちゃんお婆ちゃんが駆けつけ
父の葬儀はヒッソリと終わった。
父が火葬されるとき
立ち上る煙突の先から
流れ出る煙は
父が天に昇って行く様に見えた。
焼き場から父の骨が出てきた。
熱気で視界が歪む程の陽炎が立つ
父の骨を説明しながら
長い竹の箸で選り分ける職員。
終始無言で…
箸と箸とで渡しながら
骨壺を満たしていく。
父の骨を抱えてアパートへ帰ると
じいちゃんとばあちゃんと母が今後の話を始めた。
話の内容は
上手く聞き取れなかったがどうやら僕と母は…
関東の母の実家に身を寄せる事になるらしい。
中学生になるときは関東で中学生になるのかも知れない。
暫くの間じいちゃんとばあちゃんが僕の家に滞在したそして二人が関東に帰る前の日
ささやかな食事会の様なものが開かれた。
それが…四十九日の法要だと知ったのは
随分と後の事だった。
本当に小さな小さな
法要だった。
忌引き が明け
学校へ行き先生にあいつを済ませ
教室へ入った。
窓の外には…
そこに…居る筈のさとるの姿は
もう…僕には見えなかった。
日中の日差しは暖かく
桜の枝にも固い蕾か付き始めても
日が落ちる頃には肌寒い
そんな頃僕は関東の中学校に入学することが決まった。
残念な事に
もう…僕の前に、さとるは姿を表さない
父が死んで、さとるが見える条件を無くしてしまったのかも知れない
関東に向かう日が押し迫り荷物の整理等に終われて居る頃
僕の…夢の中に…さとるが出てきた。
見知らぬ女の人に手を繋がれ
ニコニコしながら、こちらに向かってくる
さとるの手には
僕があげた、靴やマフラー等を抱え
最初に出会った頃の姿に戻っていた。
さとるとさとるの手を引く女の人が僕の前で立ち止まり
『悟さん…あなたのお陰でさとるは天国の階段を
登ることが出来るようになりました。』
『おばさん…だあれ?』
『申し遅れました。
私は
地蔵菩薩です。
幼い子供が無事にあの世へたどり着けるよう
また…さとるの様に本来なら長生きできていたはすの子供の手を引き
黄泉のもんを開けてあげる役割をしております。
昭和二十年に戦争が終わります。
さとるの父は南方にて戦士母は結核に倒れ床に就いていました。
当時結核は日本人の平均生存率を下げてしまうほど猛威を振るってました。
いまだ…特効薬の
スプレクトマイシンは目か飛び出るほどに高額で
さとるの母も日に日に衰弱していきました。
幼いさとるはいつも母の側から離れず
いつしか、さとるにも結核が感染し
さとるも床に伏せる様になりました。
さとるの枕元には
今度小学校に入学する時の為に、買って貰った靴が並べられていました。
やがて…いくら呼び掛けても母親は返事をしなくなりました。
さとるも布団から出ることさえ出来ずに母の後を追うように息を引き取ります。
しかし…本来なら平成の世までの、寿命を持つさとるは現世でその時間を過ごすか?
この世に縛り付けている何かを取り除くかをしなければなりません。
悟…貴方が、さとるに履かせてあげた
靴がさとるの因縁を断ち切る事になったのです』
地蔵菩薩はまだ語り続ける
『悟… さとるは…
この学校では
さとり…として縛り付けられていました。
さとるにとって
人が死ぬ…それは…とても…耐えられるものではなかったのでしょう。
黄泉の扉を開け天国の階段を昇る前に悟に挨拶がしたいと言いますので
あなたの夢の中ですが…
連れて参りました。』
『さとる!!天国に行くのか!!
おめでとう…
向こうでは幸せに暮らせよ』
『う、ん、わ、か、っ、た、』
相変わらずたどたどしい…
『さ、と、し、も、し、あ、わ、せ、に、ね、』
気を使いやがって…
その時僕のほほを涙が一筋頬を伝った。
地蔵菩薩は、さとるの手を繋いだまま一礼し、
さとると二人
黄泉の国へ姿を消した。
朝になり目が覚め玄関に出た。
玄関先にさとるにあげた
ジャンバーとマフラーがきちんと畳まれその横には
靴がきちんと揃えておいてあった。
『さとる…お母さんに会えたかな』
と、呟いていた。
いかがでした?
無事にさとるは三途の川を渡りきり
母の胸へ飛び込めたのでしょうか?