白への思い出
小説祭り純愛編参加作品一覧
作者:立花詩歌
作品:彼と彼女の有限時間(http://ncode.syosetu.com/n1556bl/)
作者:射川弓紀
作品:僕と私の片思い(http://ncode.syosetu.com/n1365bl/)
作者:なめこ(かかし)
作品:ちいさな花火(http://ncode.syosetu.com/n1285bl/)
作者:一葉楓
作品:わたしときみと、芝生のふかふか(http://ncode.syosetu.com/n0273bl/)
作者:失格人間
作品:僕と幼馴染(http://ncode.syosetu.com/n1374bl/)
作者:三河 悟
作品:天国の扉~とある少年の話~(http://ncode.syosetu.com/n1488bl/)
作品:天国の扉~とある少女の話~(http://ncode.syosetu.com/n1490bl/ )
作者:葉二
作品:ハンバーグに砂糖を入れてはいけません!(http://ncode.syosetu.com/n1534bl/)
作者:コンフェクト
作品:ぼくとむらかみさん(http://ncode.syosetu.com/n1571bl/)
作者:えいきゅうの変人
作品:魔王を勇者は救えるか(http://ncode.syosetu.com/n1580bl/)
作品:恋の始まりの物語…?(http://ncode.syosetu.com/n1579bl/)
作者:一旦停止
作品:神様って恋するの?(http://ncode.syosetu.com/n1581bl/)
小説祭り:純愛編 リンクまとめ
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そこには少しだけ広いと感じられる程度の空間が広がっていた。
その空間の最奥部付近にはこじんまりとした祭壇が置かれている。また、入口から祭壇までの間には一本の道を作るようにいくつかの椅子が規則正しく設置されており、全てが祭壇のある最奥部の方を向いている。
質素ながらも全てが整えられているように感じさせるこの空間は、白を基調に作られており、ある種の神秘性を感じさせる。
神秘性を感じさせる原因は空間の作りだけではないのかもしれない。
現にこの空間は、静寂に満ちている。
物音などしない。
正確には外から入って来る音が微かに響くのだが、それは全て自然の音だ。自然の音は静かだからこそ空間に響き渡る。
さらに、暖かな日差しが窓から差し込み、幻想的に祭壇を浮かび上がらせる。昼間でも薄暗くなってしまうこの空間では、日の光は特に強く、暖かく感じさせる物なのである。
このような静寂や幻想的な光景は人々に強い神秘性を感じさせる。
一方でこの空間には物悲しさも満ちている。
祭壇と椅子。自然の音と祭壇に降り注ぐ光。神秘性を感じさせるこれらは、逆に言えばそれしか存在していない事を暗に告げる。
また、ここは人を送る為に使われる。
人の始まりや終わりを迎える時に使われる空間だからこそ、神秘性の中に物悲しさが満ちるのだろう。
そんな空間に溶けるように声が響いた。
「ねぇ、私が今どんな気持ちか……わかる?」
その声が発した疑問には沈黙と言う名の返事が帰って来た。
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あなたを初めて見かけたのは、入学式の式場の中だった。
同い年の多くの人が真新しいピカピカのランドセルを背負ってこれからのことに胸を躍らせていた日。私もそんな中の一人であり、これから始まる勉強やできるであろう友達のことを考えていた。
この日、私は本当にあなたをただ見かけただけだった。正確には見かけたとも言えないと思う。視界に入っていたのは間違いない。でも、しっかりとその様子を覚えているわけではなかった。
そして小学生生活の始め、一年生と二年生の頃はあなたとは違うクラスだった。だからあなたを見かけるのは合同授業や学校行事に関連した活動だけだったと思う。
特に目立つ役割をこなさなかったあなたは、やっぱり多くの同級生の一人でしかなかった。
そうして過ごした二年間が過ぎ、二年生から三年生に進級する際にクラス替えが行われた。まさかこのクラス替えがここまでテンプレートとも言える結果になるとはあの時は思ってもみなかった。単刀直入な結果としては、特に仲が良かった友達とクラスが分かれてしまった。
少しショックを受けたけど、学年全体で一つのいい雰囲気が出来上がっていたので寂しくはなかった。それに、仲の良かった子はとなりのクラスにいるので最初から悲しむ必要などなかった。
そしてこの時、仲が良かった子達と入れ替わるようにしてあなたと同じクラスになった。
ここから少しずつ、私の中であなたが変化し始めた。
実は今でも覚えている。あなたが私の前の席に座っていた事を。
窓際の少し景色の良い席、そこで暖かな日差しを感じながら授業を受けたあの時。あなたは、とても穏やかな顔をして外を眺めていた。
そういえば、あなたは覚えているのかな?
あの時の短い会話。私から話しかけたよね。
「授業中ずっと外の何を見てたの?」
「え? 特に何を見てたわけではないよ?」
「そうなの? ずっと見てたみたいだから何か面白い物でも見えてるのかと思ってた」
「ははっ、ただ暖かくてぼーっとしてただけなんだけどね」
苦笑しながらあなたはそう言った。
ごく普通にありふれた会話に感じると思うでしょう?
でも良く考えたら小学生とは思えない会話だと思う。だからこそ私はそんな風にごく普通に話したあなたがすごく大人に見えてしまって、少しだけ大人ぶるようになったと思う。
今思えば、きっとそれがあなたを意識するようになった切っ掛けなのかもしれない。
でも、当時の私は無意識だったし、何よりも持っている感情がただ単に友達としての好きでしかなかったと思う。
友達としての好きでしかなかった。きっとそれは間違いない。
あなたを好きかもしれないと意識したのはきっと中学生の頃だと思う。
一年生の時はあなたと違うクラスになった。それは四年ぶりの別クラスだった。
この時は同じ小学校の子と違う小学校の子。どんな子と同じクラスになるのか、それしか考えていなかったから自分の隠れた気持ちには気付かなかった。
そんな一年が過ぎて、二年生への進級に際して行われたクラス替え。
自分の教室に行くとあなたがいた。初めて同じクラスになった時と同じ、窓際で私の一つ前の席。
ちょっとした偶然がすごく懐かしく、そして嬉しかった。それがきっかけでいつの間にかあなたが私の中に住んでいた事に気が付いた。
「初めて同じクラスになった時以来だね」
私は急に話かけたと思う。
あなたが覚えているとは限らないのにそう話しかけた。
「何が?」
あなたはやっぱり覚えていなかった。それが普通なのもわかっているのに、何故私はそんな話しかけ方をしてしまったのか。慌てて取り繕ったんだよ?
「え? あ、いや。えへへ、何言ってるんだろうね……」
「冗談だよ」
「え?」
「三年生の初めて同じクラスになった時だよね。僕が君の一つ前の席に座ってた。ちょうど今みたいな窓際の席だったよね」
正直すごく驚いた。あなたが覚えていてくれたこと。すごく嬉しくて、ちょっとだけ泣きそうになったかもしれない。
――私、あなたのことが好きなのかもしれないなぁ……
そんな言葉が頭の中に去来していた。
それから私たちは高校受験を控える身となった。
この時の志望校があなたと同じだと知った時の衝撃は今でも覚えている。
それと同時に確信できた。
確信できたとは少し違うかも知れない。
――あなたのことが好きです。
あなたへの気持ちが、不確定から確定へと変わったのだから。
でも、喜んでばかりでは居られなかった。私は志望校に落ちないように必死に勉強した。
あなたと同じ学校で、もう少しだけでもいいから過ごしたいから。そして私はなんとか高校に合格した。
そして、高校の入学式ではまたあなたに会うことができた。
さらに、今度は最初から同じクラスになれた。私はすごく嬉しかった。幸せな気分になった。
でも席は少し離れてしまった。その事だけは少しだけ残念だったと思う。
それから、数日が経ったある日。席替えが行われた。
あなたは教室の一番前に行ってしまい、私は後ろの方。もっと離れてしまった。
少しだけがっかりしていると私の目の前の席の人が手を挙げていた。
「先生、ここからだと黒板の文字が見えないので前の席の人と代わってもらう事はできますか?」
「お? そうか、誰か代わってくれる人はいるか?」
先生が席の変更の申し出を受け入れ、クラスの人に呼び掛けた。
「僕でよければ」
「お、代わってくれるのか? ここでもいいか?」
「あ、はい。ありがとうございます。」
あなたが席の交換を申し出た。そして、3度目の窓際の並び。こんなほんの少しの事がとても嬉しかった。
そして、一年後に私は目撃してしまった。
「あの、好きです!! 私と付き合って下さい!!」
なんとも特徴のない、本当にこんな告白をする人がいるのだろうかと思える告白シーンだった。
それと同時に、私の頭が意外と冷静なことに気が付く。
――あの子、確か仲良くしてたなぁ……
気がつけば私はそんなことを考えながら歩いていたらしい。誰もいない放課後の教室に一人で居た。私の窓際の席に座っていた。
窓の外は薄暗くなり始め、雪の白さが幻想的に際立っている。
そして、様々な感情や想いが後になってから頭の中を駆け巡る。
やがて白い靄が晴れたかのように頭に浮かんだ言葉は予想通りと予想外の両方を含んでいた。
――あなたの隣に少しでも長く居たかった……。
だから色々頑張った。
――もう少しだけでいいから早く動けばよかった……。
きっと私は後悔をしていた。
――もしあなたの隣に立てる人がいるなら私が立ちたかった……。
あなたが私を選んでくれるとは思わないけれど、選ばれたかった。
――あなたが幸せになれるなら、それが一番の幸せ。
こんなことを考えるとは夢にも思わなかった。
どうやら私は心底あなたのことが好きだったらしい。人の幸せを幸せに思えるという言葉を過去にも聞いたことがあったけれど、まさか自分が体験するとは夢にも思わなかった。自分がそう思えるなんて考えたことがなかった。
私は、自分の気持ちを雪を溶かすように飲み込んだ。
その後、私は大学受験を控えて今まで以上に頑張った。
どうして頑張ったのかはわからない。でも何を頑張ったのかはわかる。
勉強や習い事、部活だけではない。
あなたの幸せを壊さないように。不自然にならないように。あなたに悟られないように距離を開けることを頑張った。
そして、卒業式前日。
クラス内の参加できる人達だけでも一緒にご飯を食べようと言うことになり、私は宴会会場に来ていた。
「いよいよ明日が卒業式だよ!!」
「やべぇ、前期の合格発表はその次の日だっけ? 超不安だ……」
「俺はもう推薦入学決まってるから余裕だ」
「大学も楽しみだけどこの三年間楽しかったよな」
「あの球技大会とか最高だったよね」
クラスメイトが口々にこの先の不安や希望、今までの思い出について語っていた。
あなたもみんなと一緒に輪の中で楽しそうにしていたのを覚えている。
そして、楽しい時間は過ぎてクラスのお祭り大好きな子が締めの言葉を発した。
「さて、宴もたけなわだが俺たちはまだ高校生だし、もしかしたら卒業式に居眠りしかねないからそろそろ解散だ」
爆笑する人、野次を飛ばす人、苦笑いする人。クラスのメンバーはその反応も様々だった。
「ちょっと暗いからなるべく近い人同士で帰れよ?」
クラス委員だった子がそう提案し、反対する人はいないので各自その言葉に従って帰路に着いた。
あなたは私と同じ方向で私を送ってくれたよね。
「本当に明日が卒業式なのかぁ」
「うん? そうだね、気がつけば初めて会ってから十二年が経つんだよ?」
あなたのつぶやきにちょっとだけ皮肉を込めて私は答えた。
「そうだったね、同じクラスに初めてなったのは小学校の三年生からだったからよく話すようになってからは十年か」
「うん。長いようで短い十年間だったよ」
おそらく最後であろうこの時間だけでもあなたを独り占めしたかった。
「十年越しの想い……か」
「ん? 何か言った?」
「うん。十年間、ずっと好きだったんだ。僕と、付き合ってくれませんか?」
この時の私は、あなたが何を言っているのかわからなかった。
「でも、大学は違うよね?」
こんなとんちんかんな返事をしてしまうくらいだから。
「実は学科は違うけど同じ大学を受験したんだ」
そこからの会話はあまりにも舞い上がってしまっていてよく覚えていない。
そして、大学の四年間。私とあなたは晴れて第一志望校を一緒に合格し、キャンパスライフを送った。
すごく幸せだった。あなたの隣に居させてもらえるだけで。
そして、無事に大学も卒業して仕事を始めて、お互いに自立できるようになった。
そんな日々が過ぎ去って、あなたからプロポーズの言葉を私は聞いた。
私は思わず泣いちゃったよね、すごく嬉しかった。本当は私もずっとあなたに恋していたと思ったから。そんな想いが成就して、私と結ばれてくれるとあなたが伝えてくれたから。
それから、時間はゆっくりと過ぎ去っていった。
===================
――私はね、言葉にできないほどの気持ちを抱いているよ。
静寂に響いた言葉に返された沈黙。それは優しい誓いのキスによって生まれたものだった。
そしてその沈黙は、答えとして二人の間に満ちていく。
白い空間で、純白のウェディングドレスに身を包んだ女性。
その隣で白いタキシードに身を包んだ男性。
二人だけの誓いの儀式は、ゆっくりと白に包まれた世界の中で進むのであった。
これ、完成したのギリギリです。
しかもまともとは言えない小説になってしまっていて……私ごとき若輩者の小説を楽しみにしてくださった方や、読んでくださった方には本当に申し訳ない思いがこみ上げてくるばかりです。。。
と言うわけで小説祭りの純愛編として投稿しました。
今回参加してくださった作者様の作品も是非読んでみてください^^
きっと私なんかの小説を読むより感じることや勉強になることが多いのではないかと……。
また、今後もこのようなイベントを開くかもしれませんので、興味を持たれた方は是非ご一報くださいませ♪
感想等お待ちしております。