Tragedia
舞い踊るは紅。
香しきは鉄錆の。
降れる感触は温かく。
ただただ、ボクを染めていく。
――嗚呼、なんて美しいのだろう。
キミの笑顔はもう見れないけれど。
キミの声はもう聞けないけれど。
キミはもうボクに触れてはくれないけれど。
キミはもうボクの隣にはいれないけれど。
けれど、これでキミは永遠だ。
もうキミは、流れ過ぎ去る時間と言う鎖から解き放たれた。自由なんだ。キミの美しさも、可憐さも、儚さも、そのどれもがもはや不可侵なんだ。神様ですら、キミを弄ぶことはもう出来ない。
よかったね。
キミは永遠にボクに愛されつづける。大丈夫。安心して。ボクは他の奴等とは違う。上辺だけの言葉を連ねる愚図どもとは違うんだ。キミを、この命が枯れ果てようとも愛しつづけるよ。
キミは最初、泣いていたよね?
捨てられた、と。
ボクはキミを捨てないよ。ボクもキミが好きだもの。愛してるもの。キミを失いたくないもの。
さぁ、後はキミを土に返してあげるだけ。
心配することは無いよ。確かに、土の中は冷たくて、寂しいかもしれないけれど。それはもう、キミじゃないんだもの。キミはもう其処には居ないんだ。
さぁ、お休み。キミだったモノ。お疲れ様。ボクたちを出逢わせてくれてありがとう。後はもう、ボクに任せてぐっすりとお眠り。役目を終えた君を、きっと、皆祝福してくれるさ。
勿論、ボクも祝福しよう。そして、心からの感謝を捧げよう。
――ありがとう。お休み。
――――どのような美しき花も、それは永遠ではない。
いずれは枯れ、朽ちてしまう。
枯れてしまった花の美しさ。
それは、追憶と言う名の幻影。
枯れて朽ち果てる前の花の美しさ、
それは、枯れ朽ちる前に、枯らしてしまえば、
その美しさは、
朽ちることの無い永遠の庭園で咲き誇れる。
たとえ、美しく誇り高い薔薇であろうとも、
花である以上は、枯れてしまう。
彼方で永遠に咲き誇る花には遠く及ばない。
さぁ、ボクの愛しいキミ。キミは其処を気にいってくれたかい?
嗚呼、ボクの愛しいキミ。キミは本当に美しい。
ごめんね、ボクの大事なキミ。痛かっただろう?
けれど、わかってくれ。こうしなければ、永遠は手に入らなかったんだ。こうしなければ、キミはずうっと、苦しみつづけることになるんだ。汚されつづけることになるんだ。悲しみつづけることになるんだ。
安らぐことは出来ないんだ。
ボクの中でキミは永遠に咲き誇るんだ。その美しき花弁を誰に気兼ねすることもなく、大きく広げられる。
其処は永遠の庭園。
永久に枯れることはなく。
悠久に朽ちることはない。
誰もキミを傷つけることは出来ない。汚すことも無い。悲しませることも無い。その零れるような笑みをずっと浮かべていられる。
――嗚呼、待っていて。ボクの愛しく大事なキミ。ボクもすぐに、そっちへ行くよ。
――――庭園が朽ちたその時、其処に咲く花はどうなるのだろうか?
――――庭園が庭園に存在することなど、不可能だと言うのに…………。
言い切りますよ。
これは純愛です。
……あ、ごめんなさい。怒らないで。