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龍神たちの晩餐  作者: 一花カナウ
第四章 ドール
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交渉へ

 すっかり陽が沈み、施設内は松明が明るく照らしている。

(目が覚めたかな?)

 敷布が擦れる音だけが聞こえてきたので、ヘイゼルは転送雑記帳に書き込む手を休めた。

 舞の奉納のあと、ルルディが力尽きて気を失ってしまったため、アスファルに案内されて部屋に戻ってきていた。今後の話はルルディが起きてからにしよう――アスファルの提案に、ヘイゼルは素直に従い今に至る。

「調子はどうだ?」

 起き上がってきたルルディに、ヘイゼルは訊ねた。彼女の顔色はとても良い。青の龍から力が供給されて回復が促されたのかもしれない。

「もう平気です。――でも、よくわかりましたね。あたしが起きたって」

 ルルディは驚いた顔をしたあと、にっこりと微笑んで告げる。背後からこっそりと近づいて来たのに、と少し不満げだ。

「わかるさ」

 短く応えて、ヘイゼルはルルディの四肢に付けられた環の一つを指す。

「金属音がしないのに、衣擦れの音だけが寝台から聞こえれば、な」

「あぁ、なるほど」

 納得顔になると、ルルディはヘイゼルの隣に立った。

「――ここまで運んでくださったのですね」

「まぁな」

「アスファルさんは、何て?」

「まだ返事はいただいてない」

「そうですか……」

 声から落胆しているのが伝わってくる。ルルディがアスファルを案じているのがよくわかった。

「ルルディが起きたら話し合うってことで合意している。心配しなくても、良い方に向かうさ」

「だと良いのですが」

 明るく前向きなヘイゼルの台詞に対して、ルルディの表情は曇ったままだ。

「気になる点でもあるのか?」

「えぇ、まあ。アスファルさん自身の身体は、まだ取り戻してないから……」

「……確かに、そうだな」

 今の彼の身体が人形であるのは知っている。本人がそう話していたし、実際に触れてみて人とは違う感触であることもわかっている。地下深くに眠っているとのことだったが、あの封印された血縁者の中に閉じ込められているに違いない。

「一緒にここから出たいですね」

「俺もそう思っているさ」

 うなだれるルルディの頭を撫でてやると、彼女はくすぐったそうにして身をよじった。

「じゃあ、交渉しに行こうか」

「はい」

 うまくいくことを願いながら、二人は部屋を出る。

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