眠りの砂漠に天女は舞い降りて
ルルディが細い手足を動かすと、その先に付けられた環がカランカランと音を立てる。静謐な空間に、金属の奏でる高音と節が曲を作り響いていく。
(何度見ても綺麗だな……)
異変が起こっていないかに気を配りながら、ヘイゼルはついついルルディに視線を向けてしまう。ザフィリで見たときも同じで、彼女の舞に自然と目を引きつけられるのだ。
彼女の指先から生じる魔法の蒼い光は動く度に軌跡を作り、輝く魔法陣を編んでいく。
(あれ?)
ルルディが紡ぐ複雑な蒼い幾何学模様を、黄金の輝きがなぞるように走っているのが目に入った。
(これは黄の龍の力?)
視線をルルディから広範囲に向ける。ヘイゼルの目に入ってきた光景、それは――。
「すごい……」
思わず声が漏れた。目を見開いて、辺りを見回す。
「こりゃあ、大したもんだな」
アスファルも同じ気持ちのようだ。彼もまた周囲を眺めて感嘆の声を漏らした。
簡素だと感じていた祭壇に、黄金色の光が宿っていた。
黄の龍の力だ。
その光の濃淡が、ルルディの描く模様とは別の複雑な幾何学模様を生み出している。
(魔力が注がれると発動するようだな)
周辺に眠る魔力が活性化しているのが肌でわかる。鳥肌がたった。
(ルルディが青の龍を通して黄の龍と掛け合った結果がこれか)
ヘイゼルは心の中でため息をつく。彼女がいなかったら、確実にこのような展開になっていないだろう。
(まだまだ俺は未熟だな……)
舞が終焉を迎える。ルルディの両腕が静かに下ろされると、青と黄の光がこの祭壇のある空間を――いや、サッバール王国全土を駆け抜けていった。