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龍神たちの晩餐  作者: 一花カナウ
第三章 ナイト
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予期せぬ出来事

 強烈な西日が差し込む部屋。

 ヘイゼルは昨晩から使用している部屋の窓から、外の様子を見た。夕食の支度もあるのだろう、多くの人たちが行き交い賑わっている。

(そろそろ戻ってきても良い頃合なんだが……)

 長期間の旅に必要な物資を仕入れるため、日中はルルディと分かれて買い物をし、宿屋で待ち合わせることにしていた。旅に必要なものはヘイゼルが担当し、ルルディには服や履き物などを買うように指示。文字通り身一つでザフィリを出てきた彼女は着替えを持っていない。下着などを買うのにヘイゼルがついていくのもはばかれる気がして、敢えてそうしたのだ。

 ヘイゼルとしては、ルルディが生まれ育った国であるエラザ領内であれば単独行動をさせても問題ないと思っていた。彼女がザフィリを出たことがないといっても、同じ国の中なら言葉も通じるし通貨も変わらない。基本的にはしっかりした子だと評価していたので、安心しきっていたのだ。

(買い物に夢中になっているのかな? 女の子ってそういうものらしいし。必要なものを買うだけなんだから、ぱぱっとできそうなもんなのだが)

 ルルディの買い物の時間は多めに取っていたつもりだ。あのくらいの少女の買い物というものがとにかく長いらしいことは知識としては持っていたからだ。

(ったく、しょうがねーなぁ……)

 はぁ、っと小さくため息をついてヘイゼルは自分が買ってきたものに目を向ける。

 旅に必要なものはすべて買い揃えてあり、ルルディが使っている寝台の傍にまとめて置いていた。彼女がそれを気に入るかはわからないが、好みを聞きながら選んでいては時間が掛かりすぎる。急ぎではないが、任務中でもある。のんびりしているつもりはない。

 ヘイゼルの脳裏を一瞬だけ「貴様の美的感覚はずれているからな」というどこかで聞いた覚えのある台詞が過ぎる。昨夜ルルディに話したせいなのだろう。あまり思い出したくない出来事を記憶から消しつつ、暗くなり始めた部屋を見て考える。

(真っ暗になる前に、探しに行ってやるか……)

 そんなことを考えながら気落ちしつつあったヘイゼルの耳に、場にそぐわない音が飛び込んできた。

 町に轟く爆音。次第に人々のざわつく声が大きくなる。

 ヘイゼルは身を乗り出すように窓の外を見やる。赤く染まる町並みの一角、夕食の支度にしては大きすぎる煙がもくもくと立ち上る場所が目に入った。

「ちっ……」

 嫌な予感。

(おそらくルルディとは無関係だ。思い過ごしだ)

 そう念じつつも、身体は勝手に動き出す。

(どうせ迎えに行くつもりだったんだ。途中で合流できればそれでよし、無関係だとわかればそれでいい)

 ヘイゼルは混乱する雑踏の中を掻き分けながら、煙が立ち上る場所へと駆けた。


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