表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍神たちの晩餐  作者: 一花カナウ
第一章 メイズ
11/30

旅立ち

 事件の終結から数日後。ヘイゼルは神殿の入り口に立っていた。

 空は快晴。気温も程々で、旅立ちには相応しい。荷物をまとめた袋を背負い、ここにやってきたときと同じ正装――モルゲンロートの紋章が入ったマント、魔力増幅用の媒体である耳飾、召喚士を示す帽子、手袋、特殊な古代文字によって細かに刺繍された前掛けを身につけた姿で、出発の時を待っていた。懐は、投獄されていたことに対しての慰謝料が入っていて温かだ。当面の旅費にはなるだろう。

「行ってしまうのですね」

 同じく、装飾の多い法衣に身を包んだシエルが、神殿の前に二人の警備兵を連れて立っている。

「寂しくなります」

 僅かに悲しみを含んだ表情。涙が零れてもおかしくはない顔をしている。

「こちらこそ。様々なことに工面していただき、ありがとうございました。大変お世話になりました」

「あなた無しでは、乗り切ることのできない危機でした。こちらこそ、協力ありがとうございました」

(まぁ、どちらかというと強制的に巻き込まれたんだがな、こっちは)

 そんなふうにヘイゼルは思ったが、この理不尽な思いを終ぞ彼女に伝えることはなかった。

「では、失礼します。これからが大変でしょうが、身体にはくれぐれもお気を付けください」

「はい。ヘイゼル様も、お気を付けて。これからの旅に幸多からんことを」

 やんわりと笑んで、シエルは見送る。ヘイゼルも向きを変え、街へと延びる階段を下り始める。

 決して振り向くまいと誓っていた。かつて少女がそうしたように。ただ前を、自分に与えられた道を見据えるように。迷いなく、真っ直ぐと。その先に何があろうとも。


以上で第一章メイズ:宗教都市エメロード編完結です。

ここまでお付き合いくださいましてありがとうございました。

さらに第二章、第三章と続きます。



よろしければどうぞ今後もご贔屓に。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ