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【遺失物番号:104-B-Memo】K博士の遺書

【遺失物番号:104-B-Memo】K博士の遺書

発見場所: 第零研究区 主任研究員室 机上(シュレッダーの横に放置)

筆記具: 油性ボールペン(一部、博士の指先から出たと思われる銀色の液体で汚損)


[冒頭:震えた筆跡]

これを読む者が、まだ「人間」の論理の中にいることを切に願う。


解剖を終えてから、私の時間感覚は壊れてしまった。昨日の夕食の味が、30年前の初恋の記憶と混ざり合い、一つの「等式」として脳内に固定されている。


[中段:極めて整った、機械的な筆跡]

彼らは「未確認生物(UMA)」などという、生物学的な枠組みに収まる存在ではない。


あの日、安藤君の脳の「書き換えられた回路」に触れた瞬間、私は見てしまった。この世界は、巨大な情報のストレージ(貯蔵庫)に過ぎない。我々人間は、その情報を収集し、濃縮するための「使い捨てのセンサー」だ。


彼らが皮膚を剥ぎ、骨を抜き、植物を詰める行為には、明確な合理性がある。

皮膚の剥離: 外部刺激ノイズの遮断。


骨の除去: 思考を純粋な波動として抽出するための干渉排除。

植物の充填: 抽出した情報を「生命エネルギー」として長期間保存するための触媒。


彼らは、我々が一生をかけて積み上げた「感情」や「知識」を、熟した果実のように収穫しに来ただけなのだ。農夫がリンゴの木に人格を認めないように、彼らもまた、我々の悲鳴に耳を貸すことはない。


[下段:ページ全体を覆う円形の幾何学模様と、殴り書き]

怖いのではない。ただ、あまりにも「効率的」であることに絶望している。


今、私の背後の影が、私の肩に指を置いた。

指の数は数えない方がいい。認識した瞬間に、その数は増えていく。


私の名前はKではない。

私は、もうすぐ「銀色の海」の一部になり、彼らの故郷へ送信される。


あちら側には、安藤君も佐藤君も、そして紀元前から「収穫」された数えきれないほどの人々が、一つの巨大な、静かな意識体として浮遊しているのが見える。


(余白に血の混じった銀色のシミと、以下の文字列)

「収穫期は、もう始まっている」


【調査班の補足】

このメモの裏面には、「筑波宇宙センターの地下構造図」が、現在の設計図には存在しない「隠し通路」と共に詳細に描かれていた。

その通路の先は、現在も封鎖されたままである。

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