音声ログ:2023-09-17_0344
音声ログ:2023-09-17_0344
記録場所: 筑波第零研究区 主任研究員室(防音・電磁遮断仕様)
発言者: K博士
状況: 解剖完了から48時間後。博士は研究室に立てこもり、外部との通信を拒否した状態でこれを録音した。
(00:00 - 00:45)
重苦しい呼吸音。服の擦れる音。
K博士: 「……誰も信じないだろうが、これは『解剖』ではなかった。あの日、私がメスを入れた瞬間、私の方が『読み取られて』いたんだ。安藤君の脳……あの回路を覗いた時、私の脳もまた、彼らのネットワークに同期してしまった。」
(00:46 - 01:30)
[ノイズ:カチ、カチという時計の針のような乾燥した音]
K博士: 「……彼らはUMA(未確認生物)などではない。ましてや宇宙人でもない。……『清掃員』だ。この世界のシステムが古くなり、メモリが一杯になった時、不要になったデータを回収しに来る。……佐藤君の骨が抜かれた理由がわかったよ。
骨は、情報のノイズになるからだ。彼らは純粋な『経験』と『記憶』だけを、あの銀色の液体に変えて持ち帰る。」
(01:31 - 02:10)
博士の笑い声。次第に「不自然な高音」に変わっていく。
K博士: 「(笑い)……さっき、鏡を見た。私の指が、一本多いんだ。いや、増えたんじゃない。もともとあったのに、『忘れていた』だけなんだ。……安藤君が言っていた『古い約束』の意味がわかった。我々は、彼らにいつか自分たちを『返却』すると、種としての始まりの時に契約していたんだ。」
(02:11 - 02:40)
[異変:背後で湿った布を引き裂くような音]
K博士: 「(囁き声)……来た。ドアの隙間からじゃない。影の中から染み出してきた。……見ろ、指が……関節が足りないと言っていたのは、私たちが未熟だったからだ。……ああ、美しいな。あの漆黒の穴の中に、私の、故郷の、未来の、……(意味不明な言語の羅列)」
(02:41 - 終了)
[激しい高周波ノイズ]
突如、博士の声が「逆再生」されたような音に切り替わり、音量が最大化される。
逆再生音声: 「……マ……ダ……タ……リ……ナ……イ……(※解析:まだ足りない)」
その後、物理的にマイクが「握り潰された」ような破砕音と共に記録終了。
【その後の経緯】
現場状況: 警備員が突入した際、研究室は内側から施錠されていたが、室内にはK博士の衣服と、大量の「ハクサンイチゲの花びら」だけが散乱しており、博士の肉体は痕跡すら発見されていない。
処置: 第零研究区は「未知の生物学的汚染」を理由に、液体窒素による強制凍結およびコンクリートによる完全閉鎖が実施される。




