第86話 終わったものと新たにはじまるもの
……終わった。
そう思ったとき。
光と共に俺の変身が解除され。
同時に、左手首に巻いていた俺のヒーローブレスが
灰化し、崩れ
……消滅した。
ああ……
「アイツを倒したんすね」
「……ひょっとして、ブレスが無くなったの、惜しいと思ってる?」
高瀬と笹谷。
見ると彼女らの変身も解除されてて。
左手首に、何も巻かれていない。
これで色々……
本当に終わったんだな……
色々、思うところはあるさ。
俺は立ち上がった。
「ちょっとだけな……」
そこはまぁ、正直に。
アイツにヒーローブレスを渡されて。
俺は嬉しかったんだ。
他人を守れる本当のヒーローになれるってさ。
……成りたかったから。
何でなりたかったかって、そりゃ
アイツに言われて、気が付いた。
アホな俺は、母さんに愛されてないと思い込んでたから。
父さんを超えるスーパーヒーローになれば、確実に愛して貰えると思ってたんだな。
深層心理で。
だから、誰かが困っていたり……
悪だと思う存在が、目に前に現れたら首を突っ込んだんだ。
母さんに愛される存在になるために。
……須藤の件で、母さんの想いは分かったはずなのに。
それでもまだ、不安だったんだよ。
ヒーロー的行為をやめてしまうと、たちまち愛されなくなるんじゃないか、って。
きっと無意識に思ってたんだ。
だけど
「でもまあ、しょうがないだろ。天秤に掛けることじゃないし」
これは本心だ。
あんなのがこの世界に存在しているなんて許容できない。
倒さざるを得ない。
例え、もう2度とスーパーヒーローの真似事ができなくなるとしても。
「……ところで」
そこで
「これからは桜田君、どうするの?」
笹谷が訊いて来た。
……なんだかニヤニヤしながら。
「どうって?」
「……もう、ヒーロー活動は終わり?」
俺の返しに、笹谷のそんな言葉。
それは……
確かにヒーローブレスは無くなったけどさ。
「いや、終わんない」
そこはハッキリしてた。
ヒーローってそうじゃないだろ。
変身アイテムがあるからやる。
無いからやらない。
そういうのじゃないはずだ。
勝算があるからとか、無いからとかで。
目の前の理不尽を見過ごすのは違うだろ。
だからまぁ、全然迷いなくその言葉が出たよ。
すると
「さっすが!」
「流石っス!」
……笹谷と高瀬が、俺の手を左右から握って来た。
本当に嬉しそうだった。
そして俺は、変身ヒーローの力を失ったけど。
代わりに2人の女子から好意を向けて貰い。
色々と断念したことを再開させ。
そして、夢を手に入れた。
……俺、警察官を目指そうと思う。
次回、最終回。
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