第85話 究極相生太陽斬
「どうしてオマエラまでこっちに来てんだよォ!」
ムゲンソルジャーの叫び。
どうやら理解不能らしい。
……どうも、あの仕様はこいつも知らなかったらしいな。
肉体的接触がある存在が、異空間転移に巻き込まれるって仕様を。
あのとき。
須藤のせいで、高瀬がこの世界に巻き込まれることになった戦いで。
俺たちは高瀬を異空間から元の空間に帰還させるために何か方法は無いかを考えて。
手を繋いで俺が転移解除をしたら、どうなるか。
これを試した。
すると見事、一緒に巻き込まれて転移が解除されたんだ。
……だから思ったんだよな。
異空間転移をする場合も、肉体的に触れていれば一緒に転移してしまうのでは?
って。
で、だ。
そのために、俺はエアーギガンテスを創り出した。
会長が創ったときは、だいぶ体力を消費したモンスターだけど。
今の俺は高瀬に全方位の支援を受けているので、それほどの体力を使わずに創り出せた。
……俺がこのモンスターを創ったのは。
空気として拡散した状態で、ムゲンソルジャー、そして俺たちを触って貰うこと。
こうすれば、ムゲンソルジャーが特別な転移をした場合、一緒に巻き込まれてくれる可能性があるだろ。
そう、思ったんだ。
空気になってるとはいえ、エアーギガンテスは生き物。
高瀬がそれで巻き込まれたんだからエアーギガンテスも巻き込まれる。
エアーギガンテスが巻き込まれたら、同時にエアーギガンテスに触られている俺たちも巻き込まれる。
……そうなるんじゃないかと思い。
事実、そうなった。
「こいつのお陰さ」
俺はエアーギガンテスを実体化させた。
俺の隣に出現する、青い単眼巨人……。
「……それで、何で……?」
ムゲンソルジャーの声に余裕は無い。
この事態を全く想定していなかったのか。
俺は教えてやった。
「転移の際に、触れている他者は転移に巻き込まれる。……想定外だったのか?」
「そんなの知るかよおおおおおおおお!!」
絶叫するムゲンソルジャー。
予想通りだ。
……多分、イレギュラーみたいなもんなんだろうな。
異空間転移で、衣服や持ち物も異空間に持ち込めるようにした際に生まれた、想定外のバグ。
今となってはあのとき……
高瀬が一般人として巻き込まれてくれたから、これを知ることが出来た。
だから俺は
「ありがとう、高瀬」
礼を言った。
高瀬は両手の指を祈るように組んで、俺に視線を向けていた。
「桜田君」
俺の傍に、笹谷が飛んでくる。
着地して……
「やっちゃおう……! 赤になって!」
笹谷は、俺の腕を掴んだ。
俺は笹谷の要望に従い、赤の戦士に切り替える。
すると、同時に流れ込んでくるエネルギー……
笹谷からの支援。
高瀬と笹谷。
2人からの支援の2枚看板……!
これなら……絶対にやれる……!
俺は剣を構えた。
ムゲンソルジャーに向かって。
俺の剣は青く輝く。
超高熱。
必殺の斬撃……!
それを目にした目の前の相手は狼狽えていて。
そして、言ってきた。
「……や、やめろっ!」
そのムゲンソルジャーの声は震えていた。
声だけでなく、膝もだ。
「お願いだッ! 止めてくれッ! ここで死ぬようなダメージを受けると、ボクの精神が死んでしまうんだッ!」
「……廃人化とか、ドール化現象っすか? VRフルダイブ系の作品でよくある設定っすね」
高瀬のコメント。
なるほど……
そっち系の創作物ではあるあるなんだな……
だけど……
「アンタがこの世界にいるってことは、俺たちの人生がある日突然玩具にされて壊される危険性を受け入れろってことだろ? ……そんなもん受け入れられないし」
それに
「俺たちの家族を殺すと宣言した奴を見逃すほど、俺は甘く無いんだよッ!」
……そう。
ただその一点で、コイツを見逃すなんて絶対にあり得ない!
俺は飛び出した。
飛翔する。
ヤツのウエを取る位置に。
「く、来るなァぁぁぁッ!」
ムゲンソルジャーは両手を俺に向け
何かを放射しようとしたんだろう。
だけど
その前に、笹谷の電撃が飛んできた。
笹谷の槍の穂先から迸った雷が、ムゲンソルジャーを射貫いてしまう。
全ての障壁を突破する特別な雷が。
ビクッと痙攣するムゲンソルジャー。
動きが止まる。
そこに俺の、上からの
大上段の斬撃を叩き込んだ!
大音量の叫びと共に。
「究極相生太陽斬ッ!」
2人の助力が乗り、最高潮に高まった俺の剣。
俺の剣は
ムゲンソルジャーの頭のてっぺんから股間までを、全く何の抵抗もなく、一刀両断に切断する!
アアアアアーッ!
そのときに聞こえた叫び。
それは高次元の存在の精神が破壊された断末魔だったのか。
その叫びの中。
真っ二つになり、瞬時に消し炭に変わるムゲンソルジャー。
そして俺がその一刀を振り下ろし、着地したとき。
……世界が。
色を取り戻したんだ。
……決着!
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