第79話 5つのチカラ
男改めムゲンソルジャーはその両手に剣と斧を生み出す。
右手に剣、左手に斧。
色から推察できるけど。
やはり、5つのヒーローブレス全ての能力が使えるのか。
剣はサーベル、斧は手斧に見えた。
そして次の瞬間姿が消える。
テレポート……!
「笹谷! 後ろ!」
「笹谷さん!」
俺と高瀬の警告が重なる。
……ムゲンソルジャーは笹谷の後ろにテレポートしていたんだ。
斧とサーベルを振り上げた状態で。
今、一番ムゲンソルジャーが怒りを向けているのは笹谷のハズ。
雷の一撃を加えて来たわけだし。
危ないと思い、目を向けたら案の定。
笹谷は即座に前に飛び出し、その斬撃を回避した。
「チィ」
舌打ちするムゲンソルジャー。
仕留めるつもりだったということか。
……いっこだけ、これでハッキリした。
コイツ……
与えたものを回復させたり、制限を外したりは出来るけど。
奪うことはできないんだ。
もしそれができるなら、変身した時点で俺たちのヒーローブレスを機能停止するか、没収すればいい。
そうすべきだろ……!
自分は変身時間無限、テレポート能力、全能力同時使用可なんてチートで武装しているのにさ!
なのに、俺たちに武器を与えたままなんて理屈に合わない!
歯応えが無いのがつまらないとか、そういうことを言うヤツじゃあ絶対にないはずだ!
むしろ、弱い奴を圧倒的暴力で苛め抜いて、死んでいく様を愉しむ……
そういう奴だろ!
「喰らえッス!」
高瀬が手を高く掲げて、鋼鉄のブーメランを創り出す。
ギュンギュン回転するブーメラン。
高瀬はそれをムゲンソルジャーに向かって投げ放つ。
鋼鉄とは言ったけど、それは言葉の綾。
実際は、あらゆる金属よりもずっと固い、謎の金属だ。
高速回転する鋼鉄のブーメランは、ムゲンソルジャーに迫るけど。
「アホか?」
ムゲンソルジャーは右手に握っていたサーベルを消し。
スッとその手を飛来してくるブーメランに向けた。
そしてその手から、灼熱の業火を放った。
炎に飲まれ、一瞬で融けて消えてしまう鋼鉄のブーメラン。
高瀬は
「……火剋金」
その深刻な呟きに
「そうだよ。当たり前だよね?」
ムゲンソルジャーの嘲りの声。
俺たちの特殊能力による攻撃は打ち消される……
いや……!
そのとき、ムゲンソルジャーがテレポートした。
一瞬後、その場所を笹谷の電撃が打った。
「もうっ!」
笹谷の悔しそうな声。
そこに馬鹿笑いが重なる。
「アハハハハッ! 2度も喰らうかよッ! 電撃の起こりさえ見落とさなければ、当たるわけ無いだろッ!」
全然別の場所から大笑い。
……可能性があるとすれば。
五行相生で強化した俺の一撃か、笹谷の攻撃だけ。
特に笹谷の攻撃が有効なのは、ムゲンソルジャーが今、回避行動を取ったことでおそらくガチだ。
続、ラストバトル。
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