第76話 ヒロインズバトル
「あなたと桜田君が仲良くなっていく様子を、黙って見ているしか無かった私の気持ちが、あなたに分かるって言うの!?」
「自業自得でしょう!? その選択をしたのは笹谷さん! アンタっすよ! それよりも! いきなり聖域にカースト上位女子に攻め込まれた私の絶望に思いを馳せたらいかがっすか!?」
向き合い、にらみ合い。
自分の恋心の邪魔になる相手として、互いを罵り合っている。
待てよ……
さっきまで、あんなに仲が良かったのに……
友達だっただろ……!?
「……おんもしれえええええ!」
信じられないものを目にして、硬直する俺の背中に。
男は本当に嬉しそうに、そう呟いていた。
「知的生物のはずなのに。自分たちの交配希望相手が重複すると、あっけなく築き上げた関係性を投げ捨ててしまうんだよね。ホント人間種ってやつは面白いわぁ」
男は恍惚としていた。
こいつには、この光景が面白くてたまらないらしい。
「介入して良かったって、心から思うわ。この遊び、やめられねぇな」
交配希望相手……遊び……
こいつは……この世界を玩具にしにやって来たのか。
こいつにとっては、俺たちは全員玩具なのか。
それをどうしようもなく理解する。
俺は再び殴り掛かったが。
男はテレポートを駆使して、回避する。
「だから暴力を振るうのはやめてくんないかな? 口で言いなよメンドクサイ」
ため息混じりに俺に文句をつけてくる男。
俺は
「この世界から出ていけ!」
叫ぶ。
「やだよ。もっと遊びたい。来るのかなり面倒なんだぞ?」
男はしれっとそう返し
そんなことよりも、と続けた。
「……うしろ。とんでもないことになってるよ?」
ゾッとした。
慌てて振り返ると……
高瀬と笹谷が、取っ組み合いをしていたんだ。
「泥棒猫!」
「誰が泥棒猫っすか! そういうのをBSSって言うんすよ! カースト上位だからって大きな顔するなっすよ!」
体格で劣る高瀬が、笹谷に圧倒されていた。
高瀬の長い髪が笹谷に掴まれている。
そして高瀬は抵抗の意味か、笹谷の耳を掴んでいた。
双方、怒りの形相で。
「ああ……たまんない。もっと喧嘩して欲しいわ……殺し合いだとなおいいのに」
そんな男の声が聞こえたけど。
俺はそれは無視した。
「やめろ!」
とりあえず体格で高瀬を上回る笹谷を羽交い絞めにして引き剝がす。
女の子の力なのに、少し手古摺った。
だけど
「そこのあんた!」
笹谷が高瀬を指差し、叫んだんだ。
男に向かって
こんなことを
「この女、金属性だから木属性の私では殺すのがほぼ不可能! こいつが全属性のどこに逃げてもそれを突破できるような、そんな力を私に頂戴!」
……ちょっと待ってくれッ!?
愉悦部としてはご飯が5杯イケるヒロインの言葉。
読んでいただき感謝です。
ここまでの物語が面白いと思って下さった方、是非評価、ブクマ、感想等をお願い致します。
(反響を実感できるのは書き手の喜びです)




