第74話 創作物と一緒
「高次元生命体……?」
「そうそう」
男は俺たちが理解したことが嬉しいらしく。
勝手に語り始めた。
「キミらは創作物を楽しんでるよね? ええと、マスクドファイターカープだったっけ? この4月に始まったアニメの」
「カープがどうしたって言うんすか!?」
高瀬の厳しい声。
自分の好きなものを例えに出されて黙っているのができなかったのか。
男はそんな高瀬に
「ボクらにとっては、まさしくそんな感じなんだ。この世界」
……そんなことを言い出した。
「……つまり、この世界が創作物ってことっすか?」
さすがに。
俺たちは驚愕で息を呑んだけど。
男は
「違う違う。……かなり近い、って感じなんだな」
そして説明する。
彼らの世界では、自分たちの世界より低次元の世界を閲覧することが娯楽になっている。
男はそんな、閲覧者のひとり。
で、色々な世界を眺めているうちに……
ちょっかいを出してみたくなったらしい。
「だってさあ、見てみたくなるじゃないか」
幼少期に正義のヒーローである父親を理不尽に殺されて、自分を愛してくれない母親に愛されようと、深層心理で真の正義のヒーローとして振舞いたいと考え続けて来た少年。
その少年に危ないところを救われて恋愛感情を持ち、ずっと想い続けていたけど、ここ一番の勇気が出せなかったことを悔いている少女。
己の腐った悪行を一切反省せず、自分の面子を潰されたことを恨み続けている少年。
自分の望みを叶えるために、他人を殺害したことを全く反省せず、自分を憐れみ続けている男。
自分が生き残ったことに意味があったと言ってもらえるように、厳しく自分を律して高め続けて来た少年。
……こんなオイシイ存在に、それぞれに超常の力を与えたら何が起きるのか、ってさ……
本当に、楽しそうに語る男……
……って
俺は笹谷を見た。
今コイツが言ったことは本当なのか……?
笹谷は……
真っ青になって固まっていた。
えっと……
笹谷、今のは出鱈目なのか?
そう訊ねそうになったとき。
「酷い! 何でそんなことを勝手に言うの!? 最低! 最低よアンタ!」
笹谷が大声を出した。
眼に涙を浮かべながら。
男は笑ってる。
「低次元の存在に喚かれても」
アニメキャラに罵られても別に腹は立たないよね?
ボクにとってはまさにそんな感じ。
男は訂正しない。
そして笹谷も否定しない。
そんな……
そして
男の発言はそれだけで留まらなかった。
「そこのオタクのチビ地味子とどっちにするか、だいぶ迷ったんだけどねぇ」
高瀬に視線を向けて。
……今度は、高瀬が真っ青になった。
気持ちをバラされていくスタイル
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