第73話 紳士の正体
会長との決闘を終え、学校から去る道中。
路上での突然の異空間転移。
「えっ」
笹谷が驚いている。
高瀬もだ。
……2人は「全部のヒーローブレスはこっちにあるのに」
そういう思いがあるのかもしれない。
ちょっとここ最近、妖怪が出てくること無かったしな。
もっぱら、ヒーローブレス所持者由来の異空間転移ばかりでさ。
俺としては
意外に早く接触して来たな。
そういう思いが強くて
なんというか、全く驚かなかったよ。
「おめでとう。ヒーローブレス全部回収達成だ」
俺たちの見ている前で。
いきなり、アイツが出現したんだ。
テレポート……。
そういえば俺がヒーローブレスを貰ったとき。
あのときもいきなり姿を消したな……。
この……灰色三つ揃えスーツの紳士風の男は!
久々に見る男の顔。
パッと見、ただ「爽やかな顔の男だな」と思った。
あのとき。
いきなりイカれたことを言ってくる、おかしい奴と思ってたから、しっかり見て無かったけど。
甘いマスク、という表現がぴったりくるイケメンだ。
髪質は柔らかく、どことなく貴族っぽい。
でも、こいつがやったことに疑念がある今では
悪魔は天使の顔をしている。
そんな言葉を思い出してしまう。
「……何の用だよ?」
俺の声は固い。
ほぼ、推論でしか無いから、違う可能性はあるんだけど。
俺は今、こいつを正義の使者とは思っていなかった。
相手は
「おやおや、折角ヒーローにしてあげたのにご挨拶だね。感謝しろとまでは言わないけどさぁ」
笑顔で俺の反応を愉しむようにそんなことを。
「あなた! 須藤や死刑囚にまでブレスを渡したの!?」
笹谷の詰問口調の言葉。
その言葉を受けて男は
「そんなことしてないよ!」
驚愕の表情を浮かべ、否定した。
「ボクのそっくりさんが、勝手に!」
そして泣き顔。
……何だ、違ったのか。
俺たち、とんでもない勘違いをしていたな。
って
さすがに騙されるかよ。
……馬鹿にしてんのか。
してんだろうな……
「嘘を言わないで!」
笹谷がキレた。
まぁ、真面目だしな。
俺よりも。
腹立つだろ。
すると
「……ハイハイ。ワンチャン、騙せるかなぁ、って思ったんだけどね」
そこで頬を掻きつつ、ウザそうに返して来る。
……こいつ。
「……あなた、初対面っすけど、名前は?」
高瀬。
高瀬の言葉に男は視線を向けて
「&%#@だよ」
……聞きとれなかった。
「今、何て言った?」
「だから、&%#@だ。まぁ、キミらには聞き取れない音だから、言うだけ無駄だって知ってたけどさぁ」
そしてまた、カラカラ笑う。
……こいつ、一体……?
困惑と、湧き上がってくる得体の知れなさ……根源的な恐怖。
俺たちのそんな視線を受け、男は
「ボクはキミらより高次元の生命体なんだよね。だから、キミらの低質な音ではボクの存在を表現できないの」
そう、告白して来たんだ。
高次元の生命体……?
俺は男の告白に、動揺が隠せなかった。
謎の紳士の真実。
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