第64話 会長の過去
俺の問いに。
会長は穏やかにこう返して来た。
「……何故そう思うんだい?」
俺の問いに、問いで返してきた。
でもこれは、誤魔化す意図じゃ無くて
「生き残った者の責任って言葉がどうしても気になって」
生き残った者が、佐藤を殺害することによって責任を果たす。
俺はそこに、被害者と加害者の関係を見たんだ、
被害者として、加害者が反省せずに悪行を重ねている姿を見過ごすわけにはいかない。
そういう思いを持つ関係性。
この加害者に人生を破壊される苦しみを分かっているのに、放置なんてできないよ。
だから俺が始末をつける。
そんな思いだ。
ほとんど直感に近いと思う。
一応、前にスーパーで雑談していたときに聞いた
自分の家は父子家庭だ
この言葉が後押しした面はあるけどさ。
ほぼ、直感なんだよな。
だから、証拠にはならない。こんなの。
だけど
「……そうか」
会長はフゥ、と息を吐き。
そして
「君の想像通りだよ……僕はあの男に、母を殺された」
そのことを語ったとき。
会長の眼が険しくなった。
「……今でも覚えてる。夢にも見るんだ……」
そこで会長は語ってくれた。
こんな話を……
あれは母に手を引かれて、隣町の博物館に恐竜の化石を見せて貰いに行った帰りだった。
僕は当時、怪獣と恐竜の区別がついていなくてね……
怪獣の骨が見たい! って喚いて、母に時間を作って貰って。
隣町の博物館でやっていた、恐竜の化石展に行ったんだ。
で、首尾よく恐竜の化石の展示を見せて貰って、大喜びで家に帰ってる途中で。
……いきなり、母が刺殺されたんだ。
何が起きたのか分からなかったよ。
アイツが母に飛び掛かり、グサグサ刺して
ドバドバと赤い液体が飛び散って……
母は、おそらく自分が殺されていることを理解する前に絶命したと思う。
母が抵抗をしていた記憶が無いからね。
ほぼ即死だったんだろう。
そしてアイツは次に僕を狙った。
……どうも、1人だと有期刑になって、一生ノンビリ刑務所暮らしという目論見が果たせなくなるかもって理由らしいな。
腐ってるよ……
そして僕もアイツの餌食になりそうになった。
僕は僕で、事態が良く分かって無くて、動けなくて。
そのときだ。
いきなり知らない男の人が突っ込んできて、アイツの腕を蹴りでへし折ってくれたんだ。
そして僕に気遣いの言葉を……
……会長の話は、俺にも酷く刺さる。
当たり前だけど……
そうか……
会長は父さんが救った子供だったんだ……
会長は言ったよ。
「僕はあの人に命を救ってもらった……あの人の命と引き換えに」
ダンッ、と
そこで会長は拳を教室の壁に叩きつける。
怒りの表情で
そして
「だから僕は……この世から全ての悪党を自動的に消していくシステムを作り、僕と同じ苦しみを誰も味わわなくていい世界を創らなければならないんだ」
そう、強い意思の籠った声で言ったんだ。
サバイバーズギルドを拗らせてるんすよ。会長は。
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