第55話 恐れていた事態
『逮捕された緋村さんはなんて仰ってるんでしょうか?』
『関係者によりますと、俺は知らない、なんで死体があったか分からない、と』
会長とスーパーで会話して数日後。
ワイドショーは今、この事件で持ちきりだ。
とうとう、恐れていた事件が起きてしまったんだ。
どう考えても佐藤が犯人だと思うしかない殺人事件が起きてしまったんだよ。
有名人・緋村源八郎。
齢55才の大御所俳優だよ。
昔は主に時代劇で活躍してて。
今は刑事ドラマなんかでイケオジ刑事の役回りを貰うことが多い、超有名人。
……実はこの人、この緋色市に住んでたんだ。
あまり帰らないけど、自宅はこの町にあったらしい。
で。
その人の自宅内に、どうも女性の死体があったらしい。
損傷が激しい、って報道だけど……
多分、バラバラにされてたんだろうな。
発覚したのは通報で「なんだが異臭がする」というものがあり。
警察が出向いたら、確かに何か嫌な臭いがする。
……多分、糞尿の臭いだったんじゃないのかと思う。
こりゃあおかしい、と思った警察が踏み込むと、玄関に死体が放置されていたとのこと。
……ワイドショーと新聞の受け売りだけどな。
死体があるだけで逮捕なのか、と思うけどさ。
おそらく、家のドアをこじ開けた形跡が無かったんだろうな。
窓も壊されて無い、なんてのものあったかもしれない。
詳しい証拠を見たわけじゃ無いけどさ。
だから詳しくは分からないけど、科学捜査をした結果、この死体は家主で無いと運び込むことは不可能、って思われたのかも。
この件に対して俺たちとしては……
その後学校にて。
異空間転移を発動させ、会長を交えて4人でこの件について話し合った。
「何で佐藤は俳優の緋村さんの家に死体を入れたの?」
笹谷が理解できない、というふうに言った。
「緋村さんの何かが気に入らなかったのかもしれないですねぇ」
「えと、会ったことも無い人なのに?」
高瀬の言葉に、笹谷が理解できない、という顔を向ける。
俺は
「その辺は関係無いだろ。……笹谷にはそれが分かんないのか」
そう、何気ない感じで口にした。
別に悪口じゃないぞ。
むしろ褒め言葉だ。
だけど笹谷はちょっと凹んだ表情をする。
あのさ
「……そういう感覚は分からない方が健全なんだ。別に落ち込むことはない」
俺がフォローを入れる前に、会長が入れてくれた。
なんだか自分の不始末を会長に押し付けたようで。
今度は俺が少し後ろめたかったよ。
そういう俺の想いを汲んでか
「僕としては」
会長が見解を口にしてくれた
「多分、同じ緋色市民として、佐藤は緋村さんが妬ましかったんだと思う。自分は最底辺なのに、全国レベルの有名人で、賞賛を浴び続ける存在の緋村さんに」
……俺も同意見だ。
あの手のクズがチカラを手に入れたら真っ先にやりそうなのが
金を盗む。
綺麗な女性を犯す。
そして、自分より良い人生を歩んでいる人間の人生を破壊する。
……この3つだろ。
ほぼ宿題だと思うよ。
俺は
「そこまでは俺も同意です。……でも、だったらどうするんですか?」
そこを訊ねた。
何か無いだろうか?
……ひとつ考えているのが
この町の他の有名人宅を張る。
これなんだけど。
問題は肝心の「緋色市に住んでいる大物成功者」を俺が知らないってことなんだよなぁ。
「俺、有名人の家なんて知りませんよ?」
だからそう言ったんだけど。
会長は
「別に有名人でなくても問題は無いと思うよ?」
……そう、言ったんだよね。
なんか嫌そうな笑みを浮かべて。
どういうこと……?
会長の考えとは?
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