第50話 おかしくないですか?
「でも、おかしくないですか?」
何が?
異空間の教室の中。
未知のヒーローブレス所持者について相談していたら。
高瀬が俺の話について、思うところがあったらしい。
それは
「その死刑囚、どうやって脱獄したんでしょうか?」
「そりゃ、異空間転移を……」
そこまで言って。
あっ、と思った。
そっか……
佐藤が異空間転移を使ったら、俺たちも巻き込まれるはずなのか。
でも、そんな経験無い気がするんだけど……?
そう、今まで1回だけあった……
妖怪が一切出現しない異空間転移。
今思うと、あのとき須藤が発動させたんだろうな。
異空間転移を。
そう思うんだが。
その後、そういうことが一切起きてない。
どういうことだ……?
「うーん……」
そこで笹谷が
腕を組んで考えていたんだけど。
ポツリ、とこう言ったんだ。
思い付きを口にする感じで。
「……妖怪って、誰かが出してるんじゃないの?」
その発想は、俺には無かったな。
でも、言われてみれば……
佐藤が異空間転移を発動させたタイミングで、妖怪を誰かが創ったんだとしたら。
俺たちが気づかないのは納得だ。
だって俺たちにとってはただの妖怪出現だし。
不審な異空間転移じゃない。
でも……それは……
今となっては顔を覚えて無いけど。
あの妙な紳士。
あいつ……
実は、正義の使者でも何でもないんじゃなかったりする……?
妖怪自体は最初から出てて。
そして今、ブレス所持者としての容疑濃厚な死刑囚の異空間転移を誤魔化すタイミングで都合よく出現。
作為的だよ。
少なくとも、佐藤がヒーローブレスを与えられていたとしたら。
佐藤に与えた奴と、妖怪を生み出す奴は同一人物だよな。
そして須藤にブレスを与えた奴もおそらく同じ……
そう思ってくると、不審な点は他にもある。
そもそも妖怪自体おかしいわ。
もし、俺にブレスを渡して来たアイツの目的が、妖怪から人を護ることが目的だったとしたら。
妖怪を生み出す存在について、俺に説明が無いと変だ。
そんなの、底の抜けたバケツに水を入れるようなもんだろ。
退治しても大元がばらまきまくってるんだから、意味が無い。
終わらない。
本気で妖怪から人を護るために行動を起こしてる奴の行動じゃない。
……それにさ。
俺、妖怪が人を襲ってる姿は見て無いんだよな。
いかにも襲いそうだから退治してるだけで。
何故そう思ったか?
そんなの、最初に出て来たのが牛鬼だったからだろ。
牛鬼が人を襲う妖怪なのは、大体の人にとっては常識だろ。
常識ではそうだけど、現実では違うかもしれないから放置しよう。
普通、そんな風には思わない。
だからこそ、妖怪の姿でモンスターを創ったんじゃ無いのか?
……どうしよう?
俺は自分の左手に巻いている赤いヒーローブレスを見つめる。
なんだか……ブレスの全てが信じられなくなってきた。
無論、仮説の上に立てた推測だから。
全然違う的外れの思考の可能性もあるんだけどな。
疑惑。
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