第48話 タイガーソルジャー
赤ら顔で鼻が長く、背中に翼を持つ山伏の格好をした妖怪。
誰でも知ってるメジャー妖怪。
天狗。
それが3体。
それが今日の異空間転移での妖怪の襲撃で。
戦闘経験豊富で、ヒーロー体に飛行能力を標準装備している俺と笹谷は、それぞれの受け持ちと有利に戦えているのだけど
高瀬はまだビギナー。加えて飛行能力が無い。
なのでどうするのかなぁ、と思いつつ。
キンキンキン、って感じで俺は天狗と切り結んでいた。
……うん。
俺も慣れたもんだ。
他人の動向を気にしつつ戦えるなんて。
「スラッガー!」
変身した高瀬は、両手を高く掲げ叫ぶ。
すると掲げた手のひらの上に、金属のブーメランが生まれ、宙に浮かんで高速回転を始めた。
……白のヒーローブレスの特殊能力は「金属生成」「金属操作」
金属を無から生み出して、その金属を自在に操る能力だ。
この操作は、意識が一度切れると再接続はできない。
そして意識の接続が切れると、生み出された金属は速やかに分解していく……
とのこと。
これを聞いたとき、須藤との戦いを思い起こし「だからそうだったのか!」と俺は脳内で答え合わせをした。
高瀬は生み出した巨大ブーメランを操作して、飛行能力を持つ天狗を攻撃する。
飛べはしないけど、自在に操作できるブーメランを使って追い込むのか。
なるほど……
天狗はブーメランの攻撃に意識が行き、高瀬を忘れてしまったらしく。
高瀬のブーメラン操作で、自分から高瀬の方に追い込まれていく形になっていた。
そして
天狗が絶妙な位置に来たとき。
高瀬はブーメランの操作を止め、代わりに自分の武器を創造する。
白の戦士の使用武器は、鈍器。
金棒や戦槌、戦棍を創るんだ。
重い武器だ。
だからその分……
「セイヤー!」
高瀬は大金槌を創り出し、それでよそ見状態の天狗をぶっ叩いた。
ギイオオオオオ!
たまらず、ペッチャンコになり勝負あり。
天狗が粒子に変わって消滅していく。
……明らかに、俺らよりも身体能力強化の幅が大きい。
小柄な高瀬が何の問題も無くそんな「力任せで叩き潰す武器」を扱えているんだし。
だからまぁ、あのとき須藤が言った「身体能力強化が白のブレスの特性だ」というのはそんなに間違いでは無いのかもしれない。
「どーですか今日の私のバトルは!?」
会心の一撃が決まったのか、妖怪を倒し尽くして異空間転移を解き、元の空間に戻った後。
高瀬は興奮して大騒ぎしていた。
大金槌を振るうジェスチャーを繰り返しながら。
いやまぁ、気持ちは良く分かる。
俺も最初はそうだったし。
笹谷もそうだった気がするし。
上手く行くと面白いもんな。
「高瀬さんは機動力の無さを特殊能力で補えてるのが凄いと思う」
笹谷の賞賛。
高瀬は
ウヘヘ、というような照れ笑いを浮かべて。
本当に嬉しそうだった。
タイガーソルジャーの詳細。
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