第43話 自分だけが考えているなんて、そんなわけないだろ
「どこに逃げても無駄だァ!」
そして数瞬後。
須藤が玄関から飛び出して来た。
人質を持参するような工夫は無い。
アイツは全てのヒーローブレスを自分が手にしていると思ってる。
だからそんな暇があるなら、追いかける方が合理的。
そもそも、こっちは人質を置いて逃げ出したんだ。
意味無いよな。
だけど
「……え?」
目の前に、変身した俺たちがいることに驚愕し固まっている。
その隙に俺は家の中に壁抜けで突撃した。
そして。
玄関で、俺と笹谷で須藤を挟み撃ちにする形に布陣した。
「な、何で変身できてんだよ!? ブレスを取り上げたはずだろう!? まさか2つ持ってたのか!? 聞いてねえぞ!」
喚く須藤。
俺は
「……相手が策を弄さないって考えてるあたり、本当に馬鹿だよな。呆れるわ」
冷たくそう返す。
俺は
「俺たちのモノじゃないモノに、他人への譲渡をする権利なんてあるわけないだろ」
嘆息交じりにそう言った。
須藤は理解できないらしく
「どういうことだ!? 騙したってことか!?」
「そうだけど? 本当に馬鹿ね。アンタ」
笹谷の冷たい声。
須藤は発狂する。
「き、汚ねえ! 卑怯だ! 男らしくねえぞ! クズがッ!」
そして須藤は笹谷に戦槌を振り上げて襲い掛かるが
「サンダーッ!」
直進して来る須藤に、笹谷はサイドに回避行動を取りつつ、電撃放射を浴びせた。
金剋木があるから、多分全力。
本気でやっても一撃死はおそらく無いはずだし。
「ぐあっ!」
でもショックはあるので、一瞬は止まる。
そこに俺が突っ込み
傍の地面に手を突いた!
「凍れッ!」
氷結!
冷気が走り、須藤の足元を捉え
「ぐあああっ!」
今度は逃さず、須藤の下半身を固めてしまう。
……詰みだ。
「……勝負ありだ。変身を解け」
背後から近づき、最後通牒。
須藤は
「誰が解くかッ! 馬鹿がッ!」
喚く。
ふぅん。
あっそ
「じゃあ左腕を切断してみるか。……ブレスを巻いていた腕が無くなれば、変身も解けるだろ」
そして俺は剣を振り上げる。
……俺には実績があるからな。
こいつには脅しには聞こえんだろうね。
「や、止めろっ!」
須藤は左手を庇いつつ
次の瞬間、輝きと共に変身解除。
俺は
「じゃあ次はブレスを外せ。嫌だと言うなら左手を切断して強制的に外す」
数瞬固まり、思案したらしい。
馬鹿な頭で。
で、結論として
悔しそうに、しぶしぶ外した。
よし。
「高瀬」
そこで俺は高瀬を呼んだ。
俺の家の庭の影に隠れていた高瀬を。
ぴょこんと顔を出す高瀬。
須藤は驚いていた。
……気づいてなかったか。
勝ち誇ってて周りが見えてなかったようだな。
こいつらしいわ。
「なんすか桜田君?」
呼ばれた理由を訊いて来たので。
俺は言ったよ。用件を。
「こいつからヒーローブレスを譲って貰って」
……所有権の譲渡。
それが不適格者にヒーローブレスを使わせないための最適策だろ。
危ない玩具は取り上げないとね。
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