第42話 お前にその権利は無いんだよ
変身完了した白い虎の戦士・須藤は、自分に酔ったように両手を広げ
芝居がかった調子で
「この白いヒーローブレスのモチーフは虎。身体能力の強化があるぞぉ!」
つまり、生身で挑んでも絶対に俺には勝てないと。
そう言いたいんだろうな。
……まぁ、ブレスの身体能力強化は俺だってあるんだがな。
そして笹谷も。
だから標準装備じゃね?
そんなことを考えている俺を他所に
須藤はもはや自分が一方的な殺戮者と確信しているようで。
「さぁ、ぶっ殺してやるとするか。……まずはこの格好でお前の手足をへし折って……」
そう言っている須藤の。
その手の中に、巨大な両手持ちの金槌が出現する。
多分、戦槌ってやつじゃないかな。
須藤はそれを威嚇するように振り回し、俺を見て
「……その後は変身解除してゆっくり殺してやるよッ!」
そして俺たちに向かって突進してきた。
……俺は……
後ろに駆けだした。
……ちなみに笹谷は既に逃げていた。
俺はそれを追う形。
「逃げるのかビビリがッ! 逃げるの無理だぜッ!? 虎の追跡能力舐めんなッ!」
後ろから聞こえる須藤の馬鹿笑い。
知るか。
勝ち目がないのに挑むほど、俺も馬鹿じゃ無いんだよ。
俺はリビングを飛び出して
……開けっ放しの玄関ドアから飛び出す。
そして
「桜田君、笹谷さん」
……外で待機していた高瀬が。
俺たちに返してくれた。
赤と青。
俺たちのヒーローブレスを……!
……まぁ、当たり前かもしれないけど。
俺たちはこの状況を予想してて。
ここに来る前に、ヒーローブレス所有権を高瀬に譲渡していたんだよ。
そしてそのまま何も言わず返してもらった。
こうすれば、所有権は高瀬に渡ったまま俺たちが勝手にブレスを持ち出した形になる。
その勝手に持ち出したものを左手に巻いて、須藤の前に立ち。
憎々し気にブレスを外し差し出し、所有権譲渡を宣言。
……自分に無い所有権を。
所有権が無い奴が何を言おうと所有権が動くわけがない。
お前にその権利は無いんだよ、ってワケだ。
だから、赤と青のヒーローブレスは高瀬のもののまま。
そしてあいつが勝利を確信し、変身をして襲って来たら真っ直ぐ逃亡して……
こうして、必要になったから所有者である高瀬の手元に戻って来たヒーローブレスを返してもらった。
……ヒーローブレスは所有権を誰かに渡さない限り、例え捨てても必ず手元に戻って来る。
そしてそれはおそらく……ヒーローブレスが求められるときだ。
初めて変身した、あのときの俺がそうだったように。
高瀬は俺たちが受け取ったヒーローブレスを左手首に巻いたのを確認した瞬間。
言ってくれたよ。
「私は桜田君に赤のヒーローブレス、笹谷さんに青のヒーローブレスの所有権を渡しますッ」
よっしゃ!
俺たちは変身ポーズを構えた。
そして、宣言する。
「チェンジ! ファルコンソルジャー!」
「チェンジ! ドラゴンソルジャー!」
……さぁ、反撃のときだ!
次回、決着。
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