第41話 俺様の勝ちだ!
「さあ、お喋りはここまでだ。早く渡せよヒーローブレス!」
須藤は包丁を振り上げて脅す。
渡さないと包丁を突き刺すという意思表示か。
母さんに。
……俺たちに選択権は無かった。
俺たちは、左手首から取り外したヒーローブレスを須藤に投げた。
それを須藤は受け取り損ねて床に落としてしまうが
「……所有権を俺に引き渡すと宣言しろ」
足で自分の方に引き寄せて、所有を足で示しながら
……まあ、それで十分かね
「俺はヒーローブレスの所有権を須藤に引き渡す」
「私も自分のヒーローブレスの所有権を須藤に渡します」
……笹谷、相当ムカついてんだな。
笹谷が、他人を呼び捨てるなんてのは異常だ。
必ず敬称をつけるヤツなのに。
……この所有権の譲渡だけど。
口に出して宣言することが重要らしい。
何回か実験した結果だけどな。
内心譲渡するつもりでも、無言で渡すと成立しないし。
ホントは渡すつもりが無くても、渡すと口に出して宣言して渡したら譲渡成立。
文字で書く方はまだ検証してないけど、その場合は日付と認印かサインが重要になりそうだな。
……目の前のこいつはそういう検証はしてないと思うんだが……
すっかり、俺たちの分のヒーローブレスが自分のものになった気になってるようだ。
ゲラゲラ笑い始めた。
「これでっ! 俺様が100%……いや1000%勝ち確だ! 完全勝利だッ! クハハハハッ!」
腹を抱えて笑い、包丁を投げ捨てた。
そして俺をニヤニヤ見つめて
「これでアホでクズでイカレのお前に、ようやく思い知らせてやれるぜぇ……」
そう言い
……心底俺を見下した目で
「俺にブレスをくれた奴が言ってたけど、お前の親父、通り魔に喧嘩売って死んだ馬鹿なんだって?」
そんなことを言って来た。
……俺の時間が停止し、心に氷が突き刺さった気がした。
「笑えるよなぁ、ヒーロー気取りで刃物持った奴に挑んで、返り討ち。アホとしか思えねー、プークスクスってやつか? アホの子供だけあって、お前も異常者だし。もっと早くに死んでりゃ良かったんだ」
……俺はこいつの言葉に、怒りを覚えていたのだろうか?
振り切れ過ぎて、正直良く分からなかった。
須藤は続けた。
汚らしい言葉を。
「このババアが種付けされてお前ヒリ出させたのが最大の罪だわ。きっと今頃地獄で苦しんでるだろうよ」
そう言って、腹を抱えて笑いだす須藤。
そこに
「須藤! お前は人間のクズよ! 最低どころじゃない! 生きている資格のないゴミクズよ! 消えてしまえ!」
傍で聞いていてくれた笹谷の純粋な怒り。
それが俺の救いだったと思う。
だけど須藤は余裕の笑みを浮かべながら
「ぬかせアホ女。俺様は他の人間とは違うんだよ……」
そして須藤は愉しそうに俺を見つめ
「……どうした? 怒ったのか? ……俺様はその億倍悔しくて、腹が立ってたんだけどなぁ!?」
そう言ったんだ。
俺は
……勝手に言っていろ。
その、口からヘドロを吐くのを止めたくないなら好きにすりゃいいさ。
そう思って、意識を抑える。
須藤は俺の様子を見て満足したのか。
「文句があるなら男らしく掛かって来いよムシケラが!」
自分の腕をクロスさせ、宣言した。
「変身!」
変身コール。
その瞬間、須藤の身体は光に包まれ……
「……この状態の俺様に勝てると思えるならなぁ!」
虎の戦士に変身完了し。
須藤は勝ち誇った声を上げたんだ。
イキリ放題するクズ。
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