第40話 こいつは何処から手に入れた?
「俺はお前が憎くて、夜中に家で叫んでたんだ!」
大声で須藤は話し始めた。
須藤は、たまに発作的に怒りに囚われるらしい。
理由は俺に前歯を全部折られたのに、俺に何も出来ずに泣き寝入りしたせいだ。
あのとき。
学校に俺の母さんが呼び出された。
須藤が俺の弁当の中身をゴミ箱に捨てたせいで俺が手を出し、須藤の前歯を全損させた暴力事件が起きたせいで。
須藤のところの母親がそのことで大騒ぎしたせいだ。
須藤の母親は、俺の退学と、刑事罰を求めていた。
よほど腹が立ったのか「極刑にしてやる」なんて言ってたな。
そこで呼び出された母さんは……
一切謝らなかった。
そればかりか
「私の息子は1%も悪くありません」
「刑事罰? 退学? 望むところですよ。出るところ出てみましょうか?」
……そう、一歩も引かずに言ってくれたんだよ。
母さんの態度に、須藤の母親は発狂し。
「親子揃って異常者よ!」
「狂った血筋は社会から消えろ!」
「裁判!? 優秀な弁護士をつけて、お前たちを破滅させてやる!」
なんて喚いていたけどね。
それに母さんが
「裁判になれば、裁判記録が正式に公の記録で残りますねぇ」
「ウチも徹底的に証拠を揃えて戦いますから、その際にそちらの息子さんの所業も全部出てくると思いますよ?」
「良いんじゃないですか? ウチの家は、ムシケラ同然のクズの所業を公に記録できるのであれば、刺し違えることも辞さないので」
そう言い放ってくれて。
……最終的に、須藤の父親が母親を説得したのかなんなのか。
被害届を出すことを断念し。
俺はお咎めなしになった。
……この流れで、こいつは定期的に叫び出す人間になってしまったのか。
まぁ、全くどうでもいいけど。
責任なんて感じないね。
自業自得だ。
お前が叫ぶほど悔しいと思った仕打ちは、これまでお前が他人にした仕打ちなんだよ。
知ったことか。
「そんな荒れた俺に、あの気取った男は『キミの怒りはもっともだ。高貴なキミに恥をかかせた卑しいヤツに目にモノを見せてやれ』って言って……」
そこで、自分の左手に巻かれた白のヒーローブレスを示し。
「……これをくれたんだよ」
それを告白した須藤の顔は。
とても邪悪で、自分の勝ちを疑っていない醜い表情だったよ。
……しかし
こいつは今、ヒーローブレスを貰った、と言った。
他人から奪った、盗んだ、騙し取った。
……そういうことを言わなかったんだ。
こんなアイテム、全然別の奴が配ってるなんて思えない。
だとしたら……
俺にヒーローブレスを渡した紳士と敵対関係にある誰かが居るか……
もしくは……
理由は不明だけど……同じ人物が、ばら撒いてる……?
果たして同じ人物から貰ったのか……?
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