第39話 邪悪なヒーロー
俺の家は学校から徒歩圏内にある。
駅の近くで、交通の便がいいんだ。
学校まで大体15分くらい。
俺の左手には赤いヒーローブレス。
笹谷の左手には青いヒーローブレスが巻かれている。
俺は玄関ドアを開けて貰った。
中には……靴は無い。
アイツは土足で上がってるのか。
他人の家に。
俺は
「須藤! 来たぞ!」
俺たちも土足で玄関を上がって、そう呼びかけた。
すると
「入ってこい!」
……リビングの方から須藤の声がした。
リビングの入り口ドアは開けっ放しにしてるんだ。
理由は、家具の置き方がまずいせいで、開閉がやりにくいからなんだけど。
なので冷暖房が不要な季節は、基本開けっ放し。
家具の置き方を直せばいい?
……それは面倒なんだよな。
……でも、今はそれがありがたいな。
リビングに入ると
「やっと来たか。クズのくせに待たせやがって」
ニヤニヤ笑いを浮かべた須藤が、手に包丁を握って。
椅子に座ってテレビを見ている姿で停止している母さんの前で勝ち誇っている。
……母さん、たまたま今日は休みだったんだよな。
ちょっと前に休日出勤が続いたので、埋め合わせで。
それが仇になるとはな……
そんなことを思いながら
「……その様子なら、約束は守ったんだな。ならいい……」
俺は一応、胸を撫で下ろした声を出す。
すると
「次はヒーローブレスを寄越せよ。……2人ともだ!」
須藤は包丁の切っ先を、母さんの首筋に突き付けながら言ったんだ。
「……その切っ先をどけろ。話はそれからだ」
「うるせえ!」
俺の言葉に、須藤は大声で返して来る。
「どかして欲しければ、ヒーローブレスを渡せ!」
……こいつの譲れない部分なのかもな。
こいつは俺に前歯を全損されたのに、俺に何も出来ずに泣き寝入りした。
その悔しさがあるから、これ以上は引けないのか。
こいつの左手首を見た……
白いヒーローブレスが巻かれている。当たり前だけど。
つまりこいつは、いつでも変身が出来る……
俺は
「分かった」
取り敢えず、見てる前でヒーローブレスを外した。
俺の隣の笹谷もそれに倣う。
そして
「……須藤、アンタはどうしてその白いヒーローブレスを手に入れたのよ……?」
自分の左手のヒーローブレスを外しつつ。
笹谷が訊ねた。
疑問だった。
なぜこんな奴が、ヒーローブレスを持っているんだ……?
すると
「……これでお前に復讐しろって、知らん奴に貰ったんだよ!」
俺たち2人の左手首からヒーローブレスが外れたので安心したのか。
須藤は勝ち誇ったように語り始めた。
……自分がいかにして、ヒーローブレスを手に入れたのかを。
変身アイテム出所問題。
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