第38話 脅迫
電話だと……?
誰から……?
スマホの表示を見ると……
俺の自宅だった。
自宅の、家電話だ。
迷いはあったけど、出ないとまずいだろ。
だから通話にし、スピーカーをオンにする。
「もしもし?」
すると
『よぉ、クズ』
……男の声だ。
誰の声か分からなかったが
「須藤か……?」
俺の中の容疑者候補最大手の名を出した。
すると
『分かってんじゃねぇか。さぁ、テメエの罪を償うときだ』
……正解だったらしい。
俺に対する呪い。憎悪。
それに満ち溢れた声。
……何が罪だ。
俺はお前にそんなことを言われる筋合いはない。
お前が受けた被害は、全てお前の自業自得だ。
そう言いたいが。
別にそれはどうでもいい。
「……何が目的だ?」
これを訊く。
すると須藤はせせら笑いながら
『今すぐお前の家に来い。こねえとテメエのババアを八つ裂きにしてやる』
……そう来たか。
電話の時点で危惧はしてたけどな。
……母さんを護らないと。絶対に。
そして
『あと、ヒーローブレスを俺に寄越せ。笹谷とお前の分2つともだ』
……これも、予想の範囲内。
横で聞いていた笹谷も怒りの表情を浮かべている。
「須藤! アンタ最低ね! どこまで汚いの!?」
そして思わずと言った感じで、叫んでいた。
「人質を取るだけでも汚いのに! おまけに先にヒーローブレスを奪おうなんて! 正々堂々勝負する潔さも無いのか!」
『……笹谷も居るのかよ。ちょうどいいや……』
笹谷の怒りの声もどこ吹く風。
須藤は続ける。
『笹谷の方からも言ってやれよ。ママが大事なら、須藤様に土下座して謝った後、ヒーローブレスを差し出すべきよ、ってさ』
声の調子から、自分の勝ちを疑っていない様子が伝わって来る。
『ママー、ママーって泣いて詫びれば、命だけは助けてやっても良いぜ? クハハハハ……』
せせら笑い。
ふん……
安い挑発だな。
まぁ、俺としては
「……分かった。今から自宅に帰るけど……」
そこで息を吸い込み。
「もし、家に帰って母さんが無事では無かったら、絶対にお前を八つ裂きにする。寸刻み、嬲り殺しを覚悟しろ」
……コイツには度胸が無い。
釘を刺しておけば、余計なリスクは冒さない。
そういう読み。
だから本気に聞こえるように、なるべく穏やかに言った。
……電話の向こうで、少し怯えたような気配があった。
『……約束は守るに決まってんだろ。俺はお前ら下民と違うんだ』
怯えを隠すためか、ヤツの口調が少し早口になる。
『じゃあな!』
……電話が切れた。
訪れる沈黙。
そこに
「……桜田君、どうするんですか……?」
高瀬の不安げな声。
俺は……
そこで2人に、思うところを言ったんだ。
まあ、予想通りの正体。
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