第34話 急襲する白虎
白い虎の戦士……
何者だ、こいつ……?
しかもこいつ……
……攻撃してきた?
「いきなりなんだ!? 何してくれてんだ!?」
訳が分からないから、俺はそう声高に言う。
すると
「やかましい下民がッ! 殺してやるッ!」
虎の戦士は激昂した声を返してきて。
同時に手を上に向ける。
するとそこに、無数の黒い金属の塊が出現し、それが円形の刃物に変形。
次の瞬間、回転しながら高速で突っ込んで来た!
「危ないッ!」
笹谷の声。
俺は飛んできた円月輪を躱し、剣で撃ち落とし、何とか避ける。
やられっ放しではジリ貧だ。
かといって、相手は推定ヒト。
命を奪うわけにはいかないから
俺は両足にチカラを込めた。
発動するのは凍結攻撃。
足元を走り伝播する冷気。
雑魚妖怪ならイチコロの非殺傷攻撃だ。
冷気は真っ直ぐに虎の戦士に向かって行ったが……
「うぉ! 危ねぇ!」
……避けられた。
初見でだ。
ただ、避け方が堂に入ってない。
飛びずさり方が美しく無いし、体勢も崩れている。
避けられれば良いってもんじゃないだろ。
あの避け方は、追撃を想定してない。
雑魚の動きなのに、雑魚相手なら初見殺しの技を避けられた……?
どういうことだ?
理解が及ばないけど……
だけど
「さ……ドラゴン、電撃を!」
俺はすぐ笹谷に指示を出した。
一瞬、名前を呼びそうになったが、ギリギリ耐える。
相手の正体が分からないんだから、名前を出すのは控えた方が良いよな。
「OK!」
それを受けて笹谷は、槍の穂先を虎の戦士に向け
「サンダー!」
おそらく、被殺傷に威力を抑えた電撃を発した。
迸る稲妻が虎の戦士を打つ。
「ぐあああああっ!」
虎の戦士の悲鳴。
よし! 一気に!
畳みかけるために、俺は突撃する。
構えは八相。
電撃で行動不能に陥っている間に、剣で打ち据えて、凍結攻撃を
そう思った
が
次の瞬間、地面から黒い金属の壁が突き出してきて、俺を阻んだんだ!
……金属?
五行で金属って、やっぱ金属性か!?
こいつがヒーローブレス所持者なら、属性を背負ってるはずだから、そこから考えると金属性なのだろうか!?
今頃だけど、混乱から落ち着いてきて、そこに思い当たる。
金属性……
確か、五行相生で土生金と金生水。
そして五行相剋で……火剋金、金剋木。
五行相剋は、五行相生の逆。
強化では無く強弱関係だ。
つまり、火は金より強く、金は木より強い……!
だから属性としては俺の方が強いんだ!
なので
「太陽斬ッ!」
白熱した剣による横薙ぎ。
俺の剣は綺麗に金属の壁を切断した。
だけど……
俺が壁を破壊したとき。
虎の戦士は全力疾走で校舎の昇降口にダッシュしていた。
金剋木だから、ひょっとしたら笹谷の電撃の効果が殺されていたのかもしれない……!
そうなると俺がやるしかないのか!
「逃がすかッ!」
翼を駆使し、全速力で追いかける。
アイツも相当早く感じるけど、俺なら追いつける。
そう、思っていた。
「えっ?」
だけど。
俺は停止せざるを得なかった。
虎の戦士が昇降口に駆け込むときに、高瀬が動き出したんだ。
突然のことに、高瀬は戸惑っている。
……アイツ!
学校玄関に駆け込みざまに、高瀬をこっちに引き込みやがったッ!
3人目は悪党です。
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