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第27話 父の命日で

 今日は良いものを見た。

 電車に乗って緋色市に帰って来て。


 駅で笹谷と高瀬2人とバイバイし。


 1人で家路に着きながら考える。


 すっごいな。武道。

 共に勉強の一環とはいえ、誘ってくれた笹谷に感謝だわ。


 高瀬も、文化系人間なのに色々詳しかった。

 多分まあ、わりと調べてしまうオタクなんだろうね。

 高瀬のアニメの感想を聞いてると、博識なのは伝わって来るし。


 そういう姿勢はわりとすごいと思う。

 見たものに興味を持って、ホントのところはどうなのかというのを調べるんだな。

 良い意味で、他人の言うことを信用していないのか。


 五行思想についてもザッと教えてくれたのは高瀬だしなぁ……




「ただいま」


 そして家に帰って来た。

 俺の家は一軒家だ。


 中古の家を母さんが一生懸命働いて買ってくれたんだ。

 小学校低学年くらいのときに。


 引っ越して来たときは、賃貸と違って「これからは足音を気にしなくていい」と言われて、嬉しかったのを覚えている。


「おかえり」


 母さんの返事だ。

 帰って来た時間を確認……


 俺は玄関下駄箱の上に置いてあるデジタル時計を確認した。


 午後5時過ぎ。

 ここからトレーニングは……


 今日はいいか。

 今からやったら終わるのは7時過ぎるし。


 母さんに迷惑がかかる。


 トレーニングの代わりに夕飯準備でも手伝うか。

 そんなことを思いながら、リビングに出ると


 テーブルに皿が3枚並んでた。

 で、母さんはキッチンで色々素材を切ってる。


 椎茸とか、高野豆腐だとか。


 これは……


 あ、そっか。

 今日は9月8日。


 父さんの命日だ。



 母さんは毎年、父さんの命日の9月8日にちらし寿司を作る。

 お盆はお盆で色々するけど、命日はいつもこうなんだ。

 生前の父さんの好物だったらしい。


 母さんは父さんが死んでしまったことについては嘆いている姿を見せたことが1回も無い。

 何でそうなのか理由は分からなかったけど。


 なんとなく、幼い俺は「訊いてはいけないのではないか」と思い、これまで触れないで来た。


 ……でもね。


 俺もさ、高校2年生になったんだ。

 もう餓鬼じゃないんだよ。


 だったら、そろそろ訊いても良いんじゃないのか?

 そんなことを、ふと思った。


 ……俺にだって、知る権利はあるだろ。



 母さんの手助けをするために、ちらし寿司を作るのを手伝い。


 無事に6時過ぎにちらし寿司を完成させ。

 その後速やかに食事を終え。


 俺は食器を流しに持っていき、母さんの分と一緒に洗ってしまう。

 水道を流し、洗剤と流水で2枚の皿を洗い落とす。


「今日は外に走りに行かなかったみたいだけど、代わりにどこに行ってたの?」


 そんな俺の背中に、テーブルから母さんの言葉。

 俺は


「友達と一緒に、武道館で古武術の演武見て来た」


「へぇ、すごいわね。……お父さんも伝統空手の黒帯を取ってた人だったし、血なのかもねぇ……」


 アンタが、そういうスポーツに興味持ってるのは。

 そんなことをしみじみという母さん。


 想い出に浸っているのかな。


 ……タイミング的に適当なのかな?

 疑問はあったけど。


 洗い物を終えて、俺はテーブルに戻り。

 母さんの前の席に着く。


 そして


「……なぁ母さん」


 俺は意を決して、言った。


 母さんの視線が俺に向いた。

 俺は息を吸い、そこから


「……父さんはどうして通り魔に戦いを挑んだの?」


 言ったんだ。

 ずっと、訊きたかったことを。

これまで確認してこなかったこと。


読んでいただき感謝です。

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