第26話 武術の見学
時間になったので武道館に入って。
3人並んで席に座り、演武を見学する。
色々あったよ。
真剣による巻き藁斬り。
薙刀、槍……
「あの槍すごいね。どうなってるんだろう?」
横で見学していた笹谷が興奮している。
何か特殊な槍で。
槍の穂先がクルクル回ってるんだよね。
「あれは管槍っすねぇ」
高瀬は知ってるようだった。
へぇ。
高瀬は詳しいな。
どういう理屈の槍なのかね、あれ?
そして俺としては。
今日の演武で衝撃を受けたことが2つあって。
ひとつは手裏剣術。
俺さ、手裏剣のうちでクナイみたいなやつ……
棒手裏剣っていうやつね。
それの投げ方は、空中で棒手裏剣をクルクル縦回転させて、標的に突き刺さる直前でちょうど標的に切っ先が合わさる。
そういう、投げ方。
ようは標的と自分との距離が少しでも離れると、あるいは近づくと切っ先が合わないので刺さらない。
そういう不便な方式しか知らなかったんだけど。
演武で、直打法の手裏剣術が披露されてて。
直打法ってのは、一般イメージの手裏剣術だ。
ようは、主人公が身を躱した瞬間に、主人公が一瞬前に居た場所にズカズカと手裏剣が突き刺さるやつ。
俺が知っていた方式だと、これは実現しないんだ。
何故って、主人公に刺さるように投げていたのであって、躱された後に地面に刺さるようには投げてないはずなので。
だから俺は、直打法を見たとき感動した。
これはすごい、と。
棒手裏剣が真っ直ぐに飛んで、深々と標的の畳に突き刺さっていく様をみて、感動して、興奮したんだ。
あと1つは……
「あ、会長が出てる」
「ホントだ」
弓の演武でさ。
俺たちの高校の生徒会長が演武者として出て来たんだ。
胸当てやら道着、袴をつけて。
びっくりしたよ。
全然予想してなかったしな。
……いやま、西下会長が弓道部の人なのは知ってたんだけどね。
「キャーッ! 西下センパーイ!」
突如黄色い声がどっかから聞こえて来て。
見ると、複数人の女子が、西下会長に声援を送っていた。
演武でそのムーブ、NGなのでは……?
そう思わないでもないけど。
まぁ、先輩ならそういう女子の1グループや2グループ。
普通に出てくるだろうし。
無視した。
先輩は弓による射撃演武をやったんだけど。
先輩は会場の端っこに設置された机に置かれた1つの林檎を、反対側の会場の端から射貫いたんだ。
多分、50メートルは離れてるのに、だぞ……?
まるでウィリアム・テルじゃん……
ホンマモンの弓の達人なんだな、先輩は……
元から恩があるし、すごい人だと思っていたけど。
この演武で、俺は武術系スポーツをやる人間としてこの人を尊敬したんだ。
弓道の大会では、的は60メートルくらい離れているそう。
だけど、的の大きさは直径1メートル。
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