第24話 仲間が増えて
ドラゴンソルジャーは笹谷で。
俺は彼女が俺の仲間になることを認めた。
冷静に考えるとさ。
正体不明のときは仲間扱いして、顔バレしたら否定するなんて。
俺の我儘なんだよな。
俺は単に「知ってる相手を命の危険がある戦いに巻き込む」って事実に罪悪感があったんだ。
友達だと思っていたから。
ドラゴンソルジャーが俺が顔を知らない相手か、知ってても友達じゃない人間……例えば西下会長みたいな人だったら割り切れたと思う。
俺が闘いに身を投じたのは、人を守るためで。
それは特に、笹谷や高瀬、そして母さんを護るためだったんだ。
護りたい相手を巻き込みたくなかったんだよ。
そんな俺が、笹谷も闘いに引き込んだ理由は
笹谷も、理由があったから。
彼女も軽い気持ちでヒーローブレスを使ってなかった。
彼女は俺の手伝いをしたいと思って、あの男からヒーローブレスを貰ったと言った。
なんでそんなことをしたかというと、彼女は小学校のとき、俺の気まぐれ行動で変質者から逃げられたという過去があって
それをずっと恩に感じていたらしい。
そんな状況で、俺が妖怪と命を賭けて戦っていると知った。
そして自分の意思ひとつで、その手助けができる状況になった。
そこでもし「命が惜しいのでやりません」というと。
彼女の中で「自分は命惜しさに自分を救ってくれた恩人を見捨てた卑怯者」という悔いが残る。
……仮に俺が彼女からヒーローブレスを無理矢理取り上げても。
多分そうなるだろうなと思った。
だから彼女が強硬に「絶対にヒーローブレスを渡さない」って言って来たとき。
俺はそれを無視できなかった。
……遊び半分で言って無いんだから、認めるしか無いよな。
でもさ……
だったらなんで、最初から顔を出してこなかったんだ?
そっちの方が色々都合良いと思うんだが……?
そこだけが本気で分からない……
「ねえ桜田君、次の日曜日ヒマ?」
で、ある日。
学校で休み時間に笹谷に話し掛けられた。
1人席についている俺に、笹谷がやって来て言ったんだ。
それに対し
「暇だけど?」
俺は部活してないし。
基本暇だ。
そう答えると嬉しそうに
「じゃあさ、東京に行かない?」
……東京~?
ここ、緋色市から1時間も電車に乗ると、東京には行けるわけだけど。
東京には映画や買い物以外は人が多いのであまり行きたく無いんだよな。
でも
笹谷は遊びに行こうって言ってるわけじゃない気がする。
色々詰めたしな。
顔を明かした状態にならないと、話せないこと、やれないことはあるわけで。
双方の能力の詳しい内容説明とか。
思いつく限りの事例の検証とか。
例えば……
双方のヒーローブレスを交換できないかやってみたんだけど。
作動しなかった。
単純にヒーローブレスを交換して腕に巻いて、変身を宣言しても作動しないんだ。
……多分、権利が移動してないからだという結論になった。
双方が相手に「交換しよう」と本気で思って意思表示し、所有権を移動させないと駄目なんだと思う。
これにより俺たちは、万一第三者に秘密がバレて、ヒーローブレスを盗み出されたとしても。
そいつはヒーローブレスを悪用して犯罪を犯したりできないという安心が得られた。
俺たちが本気で誰かに渡す気にならない限り、この力を奪われることはない……
「ねぇ、行かない?」
おっと。
俺が返事しないから笹谷が不安そうな表情で俺に訊き直してきた。
悪ィ。
「東京で何あるの?」
俺の問い。
俺のそんな言葉に、笹谷は明るい、興奮した顔で
「武道館で古流武術演武大会やるらしいんだよ! しかも一般公開で!」
……ほぉ。
それは興味深い。
本物の武芸者の、本物の技が見れるのか……
俺と笹谷、双方動画で見た動きとか、昔に古流武術好きの先輩に教えて貰った技を参考に、妖怪相手に試して実用性を得た技しか身に着けていないんだ。
だからそういうのが東京でやるなら、見に行きたいさ。
でも……
俺には、その場合。
1つ懸念していることがあったんだ。
2人なら出来ることで確認したいことがある。
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