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第8話 鉢合わせになる

第8話 鉢合わせになる



ルーニーが冒険者ギルドに到着すると、待ち構えていたギルド長に連れられ、港へと足を運んだ。

そこで見たものは、見事なまでの海賊船が二隻、係留されているところだった。

大型船が二隻、しかも大型のバリスタもそれぞれの船に何台も搭載されている。

その中でも最も驚いたのは、二隻の船とも損傷は全く無く、すぐにでも使えるような状態だったことだ。


「ほぉ? これは凄いな。こんな程度の良い海賊船は見たことが無い。一体どうしたと言うのだ?」

「は。これは、先日入国してきたベークライト王国からの冒険者たちが持ち込んだものです。どうやら、航海中に襲撃してきた海賊船を逆に強奪したらしく、その時に捕らえた海賊も数十人ほどいました」

「は? 海賊と交戦したと言うのに、船には損傷すら無かったと言うのか? さすがは我が親友のいる国の冒険者、と言うところだな」

「そうなんです。私も、このようなことは初めてでしたので、念のため姫様にご連絡をさせていただいたのです」


通常、海上で海賊と交戦した場合、船同士を接触させて乗り込むのが一般的なのだが、そうするとどうしても船体が破損してしまう。

また、海賊を相手にした場合、その場の流れで何人かは殺してしまうため、全員を捕虜にするのは無理だとされている。

その上、海賊たちも捕まればどんな目に遭うかは知っているため、捕まったとしてもその場で自害するケースがほとんどだ。

なのに、今回は船体を破損すらさせず、全員を捕縛してきたのだと言う。


「まぁ、実際に現物がある時点で信じるべき事実なのだろうな。 …よし、船舶は点検を行った上で使えるように整備した後、冒険者ギルドで管理して有事の備えに使え。それと、捕虜たちは犯罪者と同様に鉱山での強制労働だ。無論、終身刑としてだぞ」

「は。承知しました。では、そのように手配致します」


ギルド長に指示をした後、ルーニーは改めて目の前の大型船を見る。

それにしても、本当に見事なまでの仕事だ。

おそらくは、錬度の高い者たちの連携の下、あっという間に制圧したのだろう。

しかも、数十人の海賊すべてを生かしたまま捕らえるとなると、いったい何人が乗船していたのか。

ベークライト王国も、このような冒険者たちを送り出してくれるのだから、相当な太っ腹だと思ったところで気になったことがあった。


「ところでギルド長。そのベークライト王国から来たと言う冒険者たちはどうしたんだ?」

「え? あ、はい。昨日はいろいろと手続きなどがあったために、時間も遅くなってしまったと言っていたので、おそらくは今日にでも城へ向かわれるのではないかと思います」

「む? …なるほど、そうか。では、私も戻るとしよう」


そして、ギルド長に別れを告げると、ルーニーはそのままゆっくりと城へと戻っていくのであった。



=====

==========

====================



一方、ルーニーが冒険者ギルドへと行ってしまい、訓練場に取り残されたカノンは日課の訓練を行っていた。

これは、ルーニーから指示された内容で、主に闘気のコントロール方法を身に付ける訓練だ。

精神を統一し、自身の体の内を巡る闘気を任意のところへ集中させるものだったり、抜いた剣へも闘気を伝わらせるものだったりと様々だが、カノンとしてはスタイルチェンジを目標としているので、そのためには必要不可欠となる闘気のコントロールに重点を置いていた。

しかし、何度試しても闘気を感じ取ることが難しく、ぼんやりとは分かるのだがはっきりとしないために、上手くコントロールができずにいる。


「あーっ!! くそっ!! 思った以上に難しいじゃねぇか! こんなん分かる訳がねぇよっ!! はぁ… ルー姉もよくもまぁ体得したもんだぜ。っつーか、繊細な感覚とかって俺には難し過ぎるっつーんだよなぁー…」

「それは仕方無いですよ。何せチビ様は考えるよりも先に体が動くタイプですからね」


盛大な溜め息を吐きながら、ごろんと訓練場の地面に大の字になると、スッと横に人の気配がして聞き慣れた声が自分を大雑把だと遠回しに言った。

そのままカノンの隣りに腰を降ろす金髪の女性は、カノンの頭に手を乗せると優しく撫でる。

その心地良さに思わず目を閉じてしまうカノンだったが、さすがに訓練場と言う目立つ場所でイチャつくのを見られるのは恥ずかしい。

多少の名残惜しさを見せながらゆっくり立ち上がると、隣にいた女性に手を差し伸べる。


「まぁ、俺が大雑把だっつーのは認めるしかねぇよな。それに、セレスが言うんだから間違いも無ぇだろうしな。つっても、何とかしてこいつをモノにしてぇって気持ちが強ぇのもまた事実なんだよ」

「では、いつも通りに私と一緒に訓練しましょうか。チビ様なら、対抗心があった方が良いでしょうから」

「そりゃそうだ。俺は負けず嫌いだからな」

「じゃあ、負けた方は勝った方の言うことを何でもひとつ聞くってことで良いですね?」

「上等だ」


それから、セレスティーナと訓練場で模擬戦を交えた闘気をコントロールする訓練を行ってみるも、なかなか上手くいかない。

気が付けば、朝食の時間を過ぎてしまったため、仕方無く二人は訓練を終わらせ、汗を流そうと部屋へ戻ろうとした時、入り口の扉が開いて慌てた様子の騎士が入ってくる。


「カノン殿下! 訓練中に失礼します!」

「お? 今、終わったとこだから構わねぇぜ。それより、どうしたんだ? 何かあったのか?」

「は! では、報告します。先ほど、ベークライト王国から派遣されたと言う冒険者パーティーが城に到着しました。今は控えの間で女王陛下への謁見を待っているところです」


やっと来やがった。

パーライト王国に入国しているくせに、その日の内に挨拶に来ることもせず、次の日にのこのことやって来たことに多少のイラつきを感じながらも、騎士に了解したことを伝えると、カノンはセレスティーナを伴って一旦部屋へと戻って行った。

そして、他の天雷のメンバーに声を掛けると、冒険者としての正装をして女王陛下の待つ謁見の間へと向かう。


それから暫く待たされると、やっと謁見の間の扉が開き、三人の冒険者が入って来た。

たったの三人かと驚きつつも、どんな顔をしているのかと興味津々だったカノンだったが、その顔触れを見て驚愕の表情を浮かべてしまう。


「おいおい、あいつら冒険者ギルドの酒場にいた奴らじゃねぇか?」

「そうみたいにゃ」

「あ奴等は自分らの正体を隠しておったのか?」

「どう言うつもりなんだろうね」


女王陛下から少し離れたところにいるカノンの後ろで、アルテリオとバイオレット、ガルマールとチェルシーが小声で話している。

当然、カノンの耳にもその話し声が入るのだが、今は女王陛下の御前ということもあって大人しくしていなければいけない。

だが、謁見の間に入って来た三人の装備を見て、カノンの隣りに立つセレスティーナがポツリと呟いてしまう。


「あの装備… チビ様、彼らは噂のドラゴンナイトみたいですね。もう一人の小さい方はベークライト王家の紋章を背負ってますが… 何でしょうか? 交渉人…?」

「いや、あいつも冒険者だ。たぶん、俺と同じようなもんだろうな。おそらくは王家御用達の騎士かも知れねぇ。もしくは、暗部… とかな。いずれにしても、あいつらはそれなりの奴らだってことじゃねぇか?」


セレスティーナの言葉に返すように、カノンもロイたちを見て分析してみる。

おそらくは、謁見の間に入って来た順位がロイたちの強さの順番だろうと予想してみるが、どうにも腑に落ちないのだ。

それに、一番後ろを歩くリムが気になって仕方が無かった。

なぜなら、ロイとセラーナの距離と位置がパーティーとしては当然の位置なのだが、リムは外れているようにしか見えない。

なぜ一人だけ違った位置取りで歩いてくるのだろう。

可能性としては、リムだけがパーティーメンバーでは無いのかも知れないが、そうだとすれば今一緒にいること自体、意味が分からない。


そんなカノンの思いを他所に、ロイを先頭に左後ろにはセラーナ、やや離れてロイの右後ろからリムが続く。

三人はそれぞれに正装をしていて、ロイとセラーナは額当てなどは装着せず、漆黒のライトアーマーにドラゴンナイトの紋章が入った純白のマントを羽織っていた。

だが、リムだけはカイルが以前着用していたような大き目の額当てで目まで隠しており、その他は王妃から貰った漆黒の竜の革製品の装備に身を包み、ベークライト王家の紋章が入ったマントを羽織っていた。

颯爽と歩き、カノンの探るような視線など無視しながら女王陛下の前へと到着すると、ロイを中心として左右に位置しているセラーナとリムは一歩後ろに控える。

そして、流れるような動作で跪くと、ロイが口上を述べた。


「パーライト王国、アルセリア=シクス=パーライト女王陛下。我々は、ベークライト王国より派遣されました冒険者にございます。私はリーダーのロイ。私の左後ろはセラーナ。右後ろはリムと申します。我が国王より、誠心誠意お仕えし、任務を全うせよと命を受けておりますので、如何様な命にも従う所存でございます」

「うむ。ベークライト王国からの長旅、ご苦労だった。また、急な呼び掛けにも関わらず、私の依頼を受けてくれたこと、心から感謝しよう。さて、早速そなたらと話をしたいと思うのだが、もうじき昼食となる。良ければ、そこで話をしようではないか」


女王からの提案に、ありがたく受けることを口にすると、女王が昼食までの時間をどうするのか尋ねてくる。

ロイたちは特に気にすることも無かったので、迷うこと無く別室で待機させてもらおうと、その旨を話始めたところで、急にカノンからの横槍が入った。


「すまんが、貴殿らに聞きたいことがあるのだが、構わないか?」

「…なんでしょうか?」


昨日、冒険者ギルドで一時的とは言え会食したメンバーがそこにいたことは、この部屋に入ったときから気付いていたのだが、まさか王族関係者とはロイも想定外だった。

明らかに敵意を含んでいるその言葉に、全く気にせず受け流しているロイの両隣では、二人の女性が気付かれない程度の緊張感を漂わせ、闘気を内に溜め始める。

ロイとしては、こんなところで絡んで来るなと言いたいところだが、カノンの立ち位置を見る限り、王家に連なる者だと容易に想像がついた。

だからこそ、幾つもの会話のパターンを瞬時に作り出し、どうにかしてこの場を切り抜けるべく、カノンとの会話を続けることにしたのだった。


「なに、そんなに難しいことではない。貴殿らは、昨日の内にパーライト王国へと入国したのだろう? それなのに、今の訪問であることに何か申し開きはあるのか?」


ロイがカノンの言葉にピンと来る。

どうやら、入国したのに一日空ける理由があるのかと問い質しているのだろう。

だが、良く考えればロイたちがパーライト王国に到着するのは、普通に考えたらもっと遅いはずで、リムがいたからこそロイたちは早々に到着することができた。

しかし、彼らとしては予定より早く到着したことよりも、到着したのにすぐに城に来なかったと言う事実だけしか見えていないらしく、仕方無いと思ったロイは、要点を掻い摘んで話をする。


「…ベークライト王国からの航海中、ちょっとしたトラブルに巻き込まれましてね。その事後処理をこちらの冒険者ギルドにお願いをしたのです。その結果が昨日の夕方過ぎとなりましたので、そのような遅い時間に訪問してもご迷惑しか掛けられませんから、一日ずらしたんですよ」

「ほぉ? その用事とは、王家へ挨拶に来るよりも優先されると言うことか?」


なぜか知らないが、カノンはロイの返答に被せるようにして更に問う。

このままでは収拾がつかなくなってしまうと考えたロイが、こいつをどうにかして欲しいと女王に視線を移すも、当の本人はニヤニヤして事の成り行きを楽しんでいるようだ。

この国は女傑国家だと知ってはいたが、まさか謁見の間で緊張感を煽るような身内をも放置したままにするとは思ってもみなかった。

それにしても、この緊張感が続いたら最終的にタダでは済まないようなことが起きてしまうかも知れない。

そう思ってしまうほどに、後ろからひしひしと感じるひんやりとした闘気が恐ろしい。

万が一そうなってしまえば、ロイたちを送り出してくれた国王たちへの信頼が失いかねない。


「ま、まぁ、俺たちも派遣されたとは言え、手ぶらで挨拶するほど無礼じゃない。ちょっとした手土産くらいは持って来るさ。それに手間取ったんだが、この国にとってもプラスになるんだから、野暮な時間に挨拶に来られるよりも、そっちの方が有益だろ? 違うか?」

「我が国にとって有益になるような手土産とは何を指すのだ? つまらんものなどいらんぞ?」


思わずロイの口調も変わってしまうが、それにしてもこの男は随分と煽ってくる。

仮にもこちらは国賓だぞ、と思わず言いそうになるをグッと堪え、つまらないと言われた手土産について説明をすると、次はそっちの内容で切り込んでくる。


「海賊船を二隻に捕縛した海賊数十人だと? それをお前ら三人だけでやってのけたと言うのか? しかも、双方に犠牲者も無ければ船への損傷も全く無く、すぐにでも使える状態になっているだと? んな、出来過ぎた話、誰が信じるっつーんだよ! 嘘も休み休み言いやがれっ!!」

「…」


いつの間にか熱くなってしまったカノンが、つい言葉を荒げてしまうが、ロイにしてみればあまりにしつこくて、セラーナとリムの気持ちが良く理解できてしまった。

このままでは話も進まないと、今度は沈黙をしてみるが、カノンが余計に調子付いてしまう。


「はっ! 言葉に詰まったか! この無礼者共め! 陛下、私たちはこのような者共と実務などできそうにありません!」

「ふむ。だが、その者たちはベークライト王が推薦してきた冒険者だぞ? 何の根拠もなしに帰すことなどできるわけも無い。我が国への信頼が無くなってしまうだろ?」


相変わらずニヤつきながら、ロイたちは必要ないと言うカノンの言葉をやんわりと否定する女王。

それが以外だったのか、カノンは信じられないと言った顔をしたが、すぐに悪役のような笑みを浮かべたのをロイは見逃さなかった。

あれは良からぬことを企んでいる笑みだと警戒していると、案の定、カノンがロイを挑発してくる。


「ならば陛下、その者たちを試しましょう」

「ほお? 試すだと? カノン、お前は何をするつもりだ?」

「無論、彼らの実力を試すんですよ。方法なら…」

「悪いが、模擬戦はやらないぜ」


女王を使い、上手く模擬戦が行われるように誘導しようとしたのだろうが、それはロイの言葉によって打ち消される。

「え?」と言う表情を浮かべてカノンがロイを見ると、先ほどまでの何とかやり過ごそうと見えた顔ではなく、強い意思を持った目でカノンを見ている。


「俺たちとあんたじゃ模擬戦に対する意味合いが違う。もう一度言うが、模擬戦はやらないぜ。それで俺たちを軟弱だと言おうが構わない。もちろん、気に入らないからと追い返してもらっても良いぜ? ベークライト王にも好きにしろと言われてるからな」


ロイのハッキリとした宣言に、始めのうちは驚いていたカノンだったが、自分の後ろに控える天雷のメンバーたちがチリチリと怒りの感情を浮かべてくるのを感じ取る。

ここまで挑発しても一切乗ってこない奴らは本当に頭にくる。

最初からいけ好かない奴らだったが、まさかここまでとは思いもしなかった。

だが、この感情はどうやっても収めることができないし、女王も何かを期待しているような顔をしている。

ここまで来たら、後は強引にけしかけてやれば良いと、カノンがロイに向かって言葉を発しようとした時、謁見の間の扉が派手に開かれ、怒りを露にしたルーニーが大股でこちらに歩いてきた。


「カノン!! 貴様、私の客に対して無礼を働くつもりかっ!!」

「る、ルー姉! い、いや…! 俺は、そんな…!」

「いいや! さっきまでの会話は聞かせてもらったぞ! 言っておくが、彼らは私など相手にならないほどの強者なのだぞ! あのまま戦っていたら、貴様らなど瞬殺されてもおかしくない! 彼らはそれなりの気を遣ったのだ! 慢心するなとあれほど言っていただろうがっ!!」


あまりの気迫に、さすがのカノンも小さくなってしまい、後ろに控えていた天雷のメンバーも思わず目を反らす。

更にルーニーは女王を睨んで詰め寄る。


「女王陛下もお戯れはほどほどにして下さい。彼らは、先ほどの話の通りに手土産を持って来てくれたのです。私も先ほど見てきましたが、大型の立派な船が二隻と使い勝手の良い鉱山労働者を数十名いただいたのです。それは陛下も既にご承知のはずでしょう? なのに、あまりに失礼な態度では?」

「まぁ、そう言うなルーニーよ。彼らの内なる力は見ているこっちが興奮するレベルなのだぞ? ちょっとしたお遊びくらいは目を瞑って欲しいものだがなぁ」

「なりません。 …ロイとセラーナ、リム。随分と久し振りですね。そして、私の身内がとんだ失礼を犯してしまいました。申し訳ありません」


そう言って深々と頭を下げるルーニーの姿に、ロイが慌てて頭を上げるように言う。

さすがにあの時とは状況が違い、ここはパーライト王国でルーニーはこの国の第一王女なのだ。

たとえ身内に失礼があったとしても、いち冒険者に下げていい頭ではない。

ロイたち以上に驚きを隠し切れていない女王とカノンには目もくれず、これ以上は好きにさせないと、ルーニーが勝手に話を始める。

大枠での内容となったが、国として公にできないところを伏せながら事情を説明し、ロイたちに協力を仰ぎたい部分についてお願いをする。


「…と、言うわけだ。内容は理解してくれたか?」

「あぁ、俺たちのすべきことは理解したし、異論は無い。 …で? これからの流れはどうなるんだ?」


ルーニーの分かりやすい説明で、ロイたちが協力すべきことを理解すると、残すはこれからの流れになる。

すると、驚くべきことに、今回の現場は偶然にもロイたちが目的地としていた例の孤島と言うことだったのだ。

その話を聞いたときから既に待ち切れなくなったリムが、すぐにでも移動をしたいとしきりにロイに無言の圧を掛けて訴えるが、いろいろと察したセラーナに何とか止められる。


「さて、ロイから質問されたが、今後の流れの話をしよう。今この場で詳細までは語れないが、まずは明日にでも現地へと移動したい。だから、準備があるなら今日の内にしておいてくれ」

「了解した。じゃあ、他に無いなら俺たちは行くぜ?」


ルーニーからの話も終わり、ロイたちも明日の準備をしなければいけないため、その場を離れようと思ったが、一応は女王とカノンにも確認しようと視線を送ると、女王は苦笑いをしているが、カノンだけは目の奥に何かを潜ませていた。

とは言え、ルーニーにあれだけ叱責されれば、暫くは大人しくなっているだろうと、ロイたちはその場を後にして町へと下りていく。


「ロイ様はよくあんな状況で大人しくできるものですね。もう、呆れるを通り越して感心しましたよ。私は」

「まったくです。ロイがあのままで、しかもルーニー姫が来なかったら、私はすぐにでもあの場にいた全ての者をくびり殺すつもりでしたよ?」

「あのなぁ、二人が暴れそうになってたから、俺が我慢して収めようとしてたんだろ? 三人で突っ掛かって締め上げたとしても、最悪な状況にしかならねぇよ。まぁ、最終的にはルーニーに助けてもらった感じだけどな」

「まぁ、良いです。そう言うことにしておきます。ですが、もし仕事中に絡んでくるようでしたら、私が事故を装って始末してやりますから。あ、問題はありませんよ? あの程度、手間も掛かりませんし、至極簡単なことですから」

「良いですね、リム。その時は私も手伝いましょう。これでお互いにアリバイが成立して、完全犯罪の出来上がりです。それでも文句を言うようなら、その都度消せば良いんですよ」

「もう、勘弁してくれ…」


ガックリと肩を落とすロイの前を歩く二人は、先ほどまで黙っていたせいか、いつも以上に物騒な内容のお喋りをしながらも、明日の準備はしっかりと行うのであった。

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