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6話 儚く散る敵

 いやー、気持ちのいい朝だね。

 今は宿屋の部屋の中。

 昨日は入学式を行っただけだから、近くにあった宿に泊まった。

 寮もあるんだけど、どうせ長い期間いないし、その都度宿屋に泊まった方が節約できる。

 そんなことはいいとして、これからの計画を思い出す。

 今日から旅を開始する予定だ。

 最初に訪れる国は、ミネルヴァ聖王国。

 知恵と戦いの神アテナを信仰してる国であり、ユキたちが食客していたところでもある。

 白で統一された建物は天使の羽のように綺麗で美しい。

 また、天使が騎士として住んでおり、安全性では世界で5本指に入る。

 今回は大体五日ぐらい掛けて行くつもりである。旅として訪れるため、極力徒歩で時間をかけていきたい。だから、わざわざ歩くのだ。

 


 「あ、おはよーございます!」

 「おはようございます」

 宿屋を出ると、既にユキとユウが待機していた。

 早くない?俺だって結構早く出たつもりなんだけど・・・

 「おはよう、お前たち。悪いな待たせた」

 「いえ、たった今着いたところでしたので大丈夫でございます」

 ならよかった。てっきりもっと前に来てて、待たせていたかもしれないが、俺は考えない。

 ユウが大丈夫と言っているのだ。例え俺に罪悪感を抱かせないためだったとしても、それを言うのは野暮というものだろう。

 「大丈夫ならよかった。それじゃあ、出発しようか」

 「そう言えば、これからどこ行くんです?」

 あ、そういえば言ってなかったな。気持ちが先走りすぎて、忘れていた。

 「まずは、アテナのところに行こうと思う。俺のことを結構心配してくれてたみたいにだからな。そのあとは、少し観光しつつ次のところへ行こうかな。あ、後、俺はゼウスじゃなくてエレスだからな。人前でゼウスとか言うと騒ぎになるから言うんじゃないぞ。」

 こう言うもとは、あらかじめ釘刺しとかないと後々大変なことになるから、今のうちにしっかり刺す。

 「はーい」

 

 王都の門を出てしばらく歩き、森に来た。

 ここを通り抜けると、ウィスドン王国領を出て、ミネルヴァ聖王国領になる。

 この森はバスモット大樹林と呼ばれており、その広大さはミネルヴァ聖王国の四分の一を占めているぐらいだ。

 予定ではここで三日ほどで抜けて、最後の二日で王都に着けばいいと考えている。

 そんなことを考えながら、森へズカズカと入っていく。

 何も躊躇せずに進んでいく姿は、神だからだろう。

 この森は、多くの魔物が生息している。

 視界が悪く、いつ奇襲を受けてもおかしくないような状況に常にさらされるのだ。

 これを聞けばゼウス達がどれだけおかしい行動をしているか、分かるだろう。

 中は薄暗いな。森の明かりと言えば、木漏れ日ぐらいしかない。

「なんか出てきそうですね。例えば、ゴブリンとか!」

 緊張感が全くないね。一応危険な森なはずなんだけど。

 まだ浅いし、出てくるモンスターも大した強さじゃないから大丈夫か。

 でも、そういうことを言うのはやめようね。

 その時、前方の茂みが大きく揺れた。そして、間髪入れずに何かが飛び出してきた。

 「グギャ!」

 おいおい、本当に出たよ!

 俺たちの前に現れたそれ。緑色の体で、醜悪な姿をしてるそれ。

 ゴブリンである。

 「うわぁ、本当にでた!しかも一人だけ背が高くて、体格がいいあのゴブリン、上位種のハイゴブリンじゃないですか!」

 4体の群れの中に一体だけ他より体格が大きい奴がいた。

 「ここは、私に任せてください!一瞬で蹴散らします。」

 ユキが自身気に言う。天界は平和そのものだったから、あんまり自分の力使えてなかったし、ここはお言葉に甘えさせてもらおう。

 「いいよ。派手にやっちゃえ!」







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇








 ユキが一歩前に出る。

 よし、ゴブリンだけど、戦闘を任せてもらえた!カッコいい姿を見てもらわなくちゃ!

 派手な技と言ったら、アレだよね!

 どんな風に倒すか決めた後、前のゴブリンを見る。

 魔物には人間が定めた等級があり、一番下のEから順に、

 E→D→C→B→A→Sがある。更にその上に厄災級→天災級→神災級→終焉級と続く。終焉級は出現した時点でこの世の終わりらしい。

 この等級はギルドというところで決められている。

 ギルドには多種多様な依頼が舞い込み、狩ってきたモンスターの買い取りもしている。

 雑念を払い、ゴブリンだけに集中する。

 たかがゴブリン。普段ならこんなに集中本気になることもないだろう。

 しかし、今回は状況が状況だ。なんたってゼウス様がみているのだから。

 ゼウスに自分の良い所を見てもらいたい。その一心で技を放つ。

 『雪桜』

 周囲の音が完全に消えた時、ユキが白い雪を纏い、ゴブリンたちの間をすり抜けるように走った。

 身に纏っていた、雪がすり抜けた時にゴブリンの体に付着する。

 すると、ゴブリンが雪を起点に膨張しだし、爆発した。

 爆ぜた血溜まりには、綺麗な白い桜が咲いていた。

 






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 うーん、いつ見ても綺麗な技だね。

 少し、いや、かなりやりすぎな気もするが・・・。

 『雪桜』

 それは雪のような粒子を敵に当てることで、その粒子が体の細胞を一瞬にして破壊し、倒す技だ。

 血溜まりに桜が咲いていたのは、粒子が細胞を破壊する際に養分を吸い取るから。

 つまるところ、種だな。細胞を養分に成長する花だ。

 綺麗だ。思わずそう思ってしまった。

 「イェーイ、やりました!エレス様!」

 ユキが目をキラキラさせながら、こちらに戻ってくる。

「凄いぞ、ユキ!綺麗だった。」

 俺はユキのことを褒めた。良いことをした後は、とにかく褒める。これは教育の鉄則だと俺は思う。

 飴と鞭を使い分けることが大切。

 「えへへ、あれぐらいどうってことありませんよぅ」

 嬉しそうで何よりだ。本人は隠してるみたいだが、バレバレである。

 ツンツン。

 ん?

 背中に何か触った感覚がしたので、振り返ると、ユウが口元を袖で隠しながらこちらにを見ていた。

 何か言いたいことでもあるんだろうか?

 「どうした?」

 「あ、あの、次に魔物が来た時は、私に任せてもらえないでしょうか。」

 ん?そんだけのことなのか?

 「いいぞ」

 「あ、ありがとうございます!わ、私も綺麗に敵を倒しますので、その・・・」

 あーね、はいはい。何が言いたいかわかったぞ。

 つまり、ユウは俺がユキを褒めてたことが羨ましかったんだな。

 愛い奴め。普段真面目だからこそ、そういうことを頼むのは少し気が引けるのだろう。

 逆に、普段から自由なユキは何も気にすることなくお願いできるのだ。

 ユウの目の色が変わる。

 昨日はユキばかり相手にしていて、ユウの相手はあまり出来ていなかったな。

 これが終わったら、しっかり誉めてやろう。

 ガサガサ

 「グギャ!」

 そこに、タイミングよく本日二回目のゴブリン君の登場。どうやら先ほどの戦闘音を聞いて集まてきたらしい。

 「頑張れ、ユウ!」

 「はい!」

 冷静に考えれば、ゴブリン相手に頑張れもおかしな話だろうが、気持ちが高まるから、良いんだよ!

 一歩前に出るユウ。自分の標的を目標を定めると、一度深呼吸をする。

 集中の仕方は人それぞれであり、ユキの場合は雑念を払い一つのことに集中する。逆に、ユウの場合は深呼吸をすることで冷静になることで集中力を高める。

 「ゴブリンには悪いですが、ここで私の糧になっていただきます」

 「ギャァ!」

 先に動いたのはゴブリンの方だった。

 棍棒を片手に勢いよく飛び出していく。

 近くまで棍棒が迫ってきても、まだユウは動かない。最小限の動きで仕留めるためにギリギリまで引き寄せるのだ。

 ゴブリンの攻撃が目と鼻の先に来たとき、彼女は動いた。

 斜め前に移動しながらすれ違う瞬間に桜の花びらが緑の体を切り裂く。

 『夜桜』

 それがこの技の名前だった。

 強靭な花びらが相手を襲う。その花びらは一枚一枚が自我を持っているかのように自立しながら敵を切り裂く。

 倒れたゴブリンの周りには、桜が綺麗に舞っていた。


 こちらは雪桜と対象的に儚い美しさだね。

 思わず見惚れてしまうような、さながら演舞のようだ。

 「綺麗だった。感動したよ」

 緊張した面持ちで帰ってきたユウに対し、優しく声をかける。普段は大人しく、真面目で、クールなイメージだか、こういうところは可愛い。

 思わず頭を撫でそうになってしまったが、グッとこらえる。

 「ありがとうございます。私はユキと違い派手なことはできませんので、お目汚しするのではないかと、心配しておりましたが・・・」

 「いやいや、汚すなんてとんでもない。寧ろ、目が綺麗になった気がするよ」

 実際、俺の想像以上に綺麗だったし、気分は目が若返った気分だ。

 「なら、よかったです」

 ホットした様子で胸を撫で下ろすユウ。

 「あ、ずるいです!私も綺麗でしたよね!?」

 いや、あなた先ほど褒めたばかりですよね?

 そもそも、たかが褒めるぐらいで難でこんなに躍起になってるんですかね?

 「今度ね」

 「絶対ですよ!」

 

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