13話 戦いの影響
そこは地上とも天界とも違う異質な場所だった。
青緑に染まった空。
辺りを漂うのは狭い世界に封印された亡霊たち。
普通の人がここに来ればその雰囲気に精神を狂わされてしまうだろう。
ここは冥界。
地上で死んだ者の魂が行き着く死後の世界である。
そんな冥界の端にある円形上に広がった土地に一人、異質な者がいた。
円の中心で胡坐を組み、目を閉じて瞑想を繰り広げている存在。
肌で感じるオーラが周りで飛び回る亡霊すらも寄せ付けない。
いつから続けているのだろうか。
少なくとも500年前にはすでにそこにいた。
しかしその長い瞑想も今日で終わりを迎える。
大切な尊い主が目覚めたからである。
その肌で感じる懐かしい魔力。
ようやくだった。
体が震い上がるのが分かる。
彼の名はスサノオ。
偉大なるゼウスの忠実なる配下であり、九重騎士の一人でもある。
目を開け、愛刀の神器・天雲草薙を腰に差し動き出す。
行き先ただ一つ。
忠誠を誓う主の元へと・・・。
阿修羅は今の主に対して頭を下げる。
目の前にいるのは蓮の上に浮かんでいる男。
その姿は既視感があり、ゼウスが学園で会った如参に似ている。
この男こそ如参の父であり、ミネルヴァ聖王国と肩を並べる大国、日和帝国の主神、如来である。
阿修羅の後ろに続き跪き、頭を垂れるものはかなりの数の神々。
それだけでもこの国が強大であることが分かる。
事実、ミネルヴァ聖王国と肩を並べると言われているが、それは一強を作らない為であり、厳密に軍事力だけで言えば日和帝国と比べると足元にも及ばないのである。
更に、現在も周りを取り込み成長中だから恐ろしい。
阿修羅も如来に忠誠を誓っているが、それは仮初のものだ。
心から忠誠を誓っている神は別にいる。
阿修羅は今、この国に身を潜めている状態にある。
それが主の為になると信じて・・・。
「ほぉ、力は戻っていないのか・・・」
暗い部屋に設置された玉座に座る男は目の前に浮かぶ映像のようなものに視線を注ぎながら独り言のように吐く。
「やはり、転生の影響が大きかったようだねぇ。力の半分も出てないじゃないか。しかも、情けないことに十二神如きに助けを借りるとは・・・」
映像に映っているのはゼウスと伊吹の戦いである。
「しっかし、プレゼントは気に入ってもらえたようで。頑張ったかいがあったぜ。」
陽気に言う男はご機嫌である。
「これからどうするんで?クロノスの旦那」
映像から目を玉座に戻してそんなことを尋ねる。
「お前・・・クロノス様に向かって何たる口調・・・」
陽気男の発言に妙齢な女が睨みつけるように言う。
しかし、対する男の耳には入っていないようで、玉座に座る者を見ている。
「よいのだ、ムネモンシュネよ。それにロキが聞く耳を持たぬのもいつものことだ。今更とやかく言うでない」
クロノスに言われたムネモンシュネと呼ばれた女は、ロキを睨みこそするが、それ以上言及しない。
口では起こっていても、冷静に物事を判断しているのだ。
「とはいえロキよ。お前も少しは人の話を聞くことだ。どちらも同じ仲間であり、同志なのだ。」
「へいへい、わかってますよ。」
ゼウスは悪神はいないと思っている。
事実、天界上にいた時は全ての神がゼウスに忠誠を誓い、穏やかな暮らしをしていた。
けれど、それは500年前の話である。
500年も時が経てば情勢が変わるのは周知の事実であり、考え方や性格が変わっていてもおかしくはない。
つまり、あの時ゼウスは忘れていたのだ。
ここはもうゼウスの知っている世界ではない。
寧ろ、全く新しい世界だと考えるべきだった。
「これからの計画か・・・。奴らは我々からのプレゼントを堪能した後は確実に旅に出る。そろそろ、あの馬鹿狐の我慢が限界に達するころだろう。そこを狙う」
「あの狐のところ・・・妖魔の里ですか」
妖魔の里と聞いて口元が緩むのを感じるムネモンシュネ。
彼女にとって、里とそこの主には恨みがある。
張り切るのも仕方がない。
「ほー、里を襲うんですか。でも、大丈夫なんで?あのあたりには日和帝国がありますよ?もしかしたら、帝国の怒りを買うかも」
「それを狙っているのだ。日和の仏は自分の力を過信している。そこにゼウスを誘導すれば戦争が起こるだろう。そろそろ騎士どもも気づき始めるころ。激しい衝突になるぞ・・・」
「うわ、こっわ。近寄らんどこ。」
如来は他人より上にいることに優越感を持っている。
自国と肩を並べる国は居なくなったが、欲求は収まらない。
唯一満たせるとしたら、ゼウスに勝った時ぐらいだろう。
ゼウスの威厳が薄まりつつある今こそ攻めるとき。
世界一を倒し世界一になる。
波乱の予感は収まらない・・・。
色々調べながら書いていて、思ったより遅くなってしまった・・・。




