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11話 戦いの後は

メリークリスマス!

 え、誰?

 後ろから聞こえるしわがれた声。

 今の状況で俺に気づかれずに声を掛けられるのは、相当の手練れだろう。

 何せ、全方位に気を張っていたのだから。

 でも、奇襲が来てもいいように注意してるのに接近をゆるしてしまった。

 あまり意味ない・・・?

 そんなことは置いておいて、振り返ったその先にいたのは声に見合うような老人だった。

 白髪に伸びた白髭。

 服まで白く、仙人のような雰囲気を醸し出している。

 「いやー、決定打にかけていてね。どうしようかと」

 「それはそれは、大変でしたな。よろしければお手伝いしましょうか?」

 「頼む」

 この際お前は誰だ。なんて聞かない。

 気配を絶つ腕や俺の名前を知っていることから、神だろう。

 神様に悪い奴はいない!の精神の元、協力を仰ぐことにした。

 「伊吹は暴走状態にあるんだ。なるべく傷つけずに沈静化するために、殴って気絶させたい。俺が隙を作るから、その間に一撃を決めてくれ。」

 「了解しました」

 俺でも無理なのに一撃で決めろって・・・。

 自分にできないことはあまり強要しないタイプだけど、今回は仕方ない。

 しかし、言ってしまったなら変えることはできない。

 それに、なんかできそうな気がするんだよね。

 長年の勘がそう言ってるし、自分を信じることにするよ。

  

 軽く現状説明と作戦を伝えた後、行動に移る。

 ちなみに、乱入してきたイノシシは少し引いたところでこちらを見ていた。

 なんの意図があるのか分からないが、横やりが入らないなら無視でいいだろう。

 「じゃあ、行くよ!」

 伊吹目掛けて一直線に進む。

 さっきまでの殴り合いで大まかな攻撃は見切れている。

 隙を作ることぐらい問題ない。

 至近距離にまで接近し、牙での攻撃を避ける。

 やつの弱点として、攻撃後の隙が大きい。

 その分を耐久力でカバーしているのだ。

 本人もそれをわかっているから、俺の攻撃を受けた後でカウンターをしようとしている。

 しかし、俺の打撃は下から上に食い込むように打たれる。

 下からの攻撃を予想していない伊吹は、頭を上に上げ、大きく隙を見せる。

 「今だ!!」

 合図とともに閃光のように駆けて行く老人。

 手に持つ杖を大きな巨岩に向けて一振り。

 「午老流(ごろうりゅう)虚星(うつろぼし)

 振り抜くとともに、漆黒の空間が現れる。

 まさに一閃。

 杖を納めるとともに伊吹が倒れる。

 「お、終わったー」

 今までの緊張が一気に解放したのか、疲れがドッと押し寄せてくる。

 そのまま目の前が暗転した・・・。

 




 知ってる天井だ。

 起き上がり、昨日のことを確認する。

 いやー、気持ちのいい朝だね。

 まだ問題は残っているが、少しぐらい気持ちが緩んでもいいだろう。

 コンコン

 「どうぞ」

 「失礼します」

 部屋にやってきたのはユウだ。

 俺が起き整理が終えた時に来た。

 完璧なタイミング。

 なんか、監視されてたりするのだろうか・・・?

 いや、流石にね・・・。

 朝の光で黒い着物が強調されていた。

 ちなみに、俺たちはみんな制服を着ていない。

 学園生って知られたくないからね。

 「お体に変化はありませんか?昨日は久しぶりの戦闘で、上手くいかないこともあったと思います。今日はゆっくりお休みください。」

 「そうさせてもらうよ、と言いたいところなんだけど、まだ問題は山積みだから。気は抜けないよ。」

 「そうですね。でも、ほどほどにしてください。ゼウス様が一番大切ですから。」

 正直これよりハードな仕事など、天界で嫌という程やってきた。

 これぐらいどうってことない。

 



 部屋に広がる紅茶のいい香り。

 いい匂いだ。

 お茶も美味しいが、甘党の俺としては紅茶の方がいい。

 お茶の苦みはまだ早いみたい。

 「いい紅茶ですね。今度教わりたいです!」

 「ユキも分かるか、この紅茶の美味しさを!やっぱりお茶より紅茶」

 「分かります!この甘さがたまらないんですよね」

 俺はうんうんと頷く。

 やっぱりユキは分かってくれるのか。

 紅茶派としては嬉しい限りだ。

 ユキとの仲が少し良くなった気がするゼウスであった。

 今は応接室。

 もはや俺たちのたまり場となりつつある。

 現在この部屋には俺とユキ、ユウの三人しかいない。

 アテナはやることがあるらしく途中から参加する予定。

 

 ガチャッ。

 扉が開き、アテナが入ってくる。

 そばにはミカエルと、俺と共闘した老人がいた。

 そういえば、結局誰なのかわからずに意識を失ってしまった。

 ある程度予想は着くが、俺の記憶は500年前のもの。

 情報に誤差がある可能性だって十分にあるわけだ。

 「おまたせして申し訳ありません。少々取り調べを行っておりました。」

 「全然待ってないから大丈夫」

 受け答えしつつ、アテナが席に着いたのを確認し、そのまま会議が始まる。

 議題はもちろん伊吹暴走事件について。

 俺の対面にアテナが座り、他の者は後ろに控える態勢だ。

 一服してから情報共有だ。

 俺とユキもお菓子を食べながら聞く。

 「今回の件、どうやら教皇ベレゴットが関与していたようです。具体的には敵対教徒が国境を超える補助、アジトの提供など。噂を流したのも教皇の部下だとか」

 「あのおっさんそんなことしてたのか・・・。じゃあ、俺が教皇とあった場所も、何か的にとって重要な場所だったのかな?」

 「そういえば、ゼウス様が教皇さん会ったところってどこなんですか?」

 「えーっとね、聖堂みたいな場所だったと思う。暗かったからよくわかんないけど・・。」

 聖堂と聞いてアテナが目を開け驚愕の色に染める。

 「もしかして、地下ですか?その聖堂があった場所は」

 地下?

 暗いし、道に迷っていたからよくわかんないけど、地下はさすがに違うだろ。

 そこまで馬鹿じゃない。

 「もしかしてゼウス様、方向音痴なんじゃないですか?わかりますよ、その気持ち。そんなところ行くわけない!って思ってても、行ってたりするんですよね。」

 なんか、ウザい。言い方が妙に鼻につくのが、より一層ウザさを際立たせてる。

 「そんなことないね。少なくともお前よりは方向感覚はいいわ!」

 「いーや、ゼウス様も同じぐらいですね。」

 「なんだと!お前だって森で・・・」

 そこまで来て、後ろから悪寒がしたため、言い返すのをやめる。

 「地下だったんですよね?その聖堂は」

 「はい・・・」

 怖くて後ろを向けない。

 心なしか寒い気がする。

 脱線してしまったが、地下の聖堂には何があるのだろうか。

 「地下の聖堂は昔に使われていたもので、その存在を知ってる人も多くありません。」

 なるほど。

 「つまり、誰も知らない場所だから、隠れて邪教をを祀っていたとしても気づかれないわけか。」

 仮に知ってる人がいたとしても、教皇の立場から疑惑の念を抱かれることもないだろう。

 つまり、あの時あの場所でべレゴット教皇は敵対勢力を信仰していたわけだ。

 これを考えると、俺はかなり危うい行動をしていた。

 あまりにもタイミングが良すぎてる。

 俺が転生し、ミネルヴァ聖王国に来たタイミングで伊吹が暴走。邪教の聖堂に行く。

 俺が事件の犯人と取られてもおかしくない。

 「俺ってかなり危ないことをしていたんだな・・・。」

 「そうですね、これからは必ず誰かに事前に連絡を入れておくことがいいと思います。」

 「はい」

 

 「そういえば、そちらのご老体は・・・?」

 さっきからこちらのやりとりを笑顔で眺めているご老体。

 ずっと気になってた。

 「おや、儂のことを忘れてしまいましたかな?」

 「ごめんね。しばらく天界にいたから地上の神の姿は覚えてないんだ」

 「いえいえ、無理もありません。500年も経てば姿も変わりますゆえ。しかたありません」

 髭を撫でながら言う姿は神の如き。

 「それでは改めまして、特異神にして十二神が一人、珊低・空虚(さんてい・くうきょ)でございます。ゼウス様のご生誕心よりお待ちしておりました」

 やっぱり。

 珊低・空虚。麒麟という名の方が知られているのではないだろうか。

 雷と空間属性の担い手で、普段はその属性と裏腹に自由奔放でかなりのマイペース。

 空虚がいつもいるエリアからかなり離れたこの場所にいるのもどうせ旅をしたくなったとかそんな理由だろう。

 言ってなかったかもしれないが、十二神にはそれぞれ守護領域があり、普段はそこを守っている。

 たまに空虚のように領域から出てるやつもいる。

 「さて、ゼウス様に挨拶もできましたし、儂はここで失礼させてもらいます」

 「え、もう帰っちゃうの?」

 「はい。儂は旅に生きる者です故。一つの場所にとどまるのは心が落ち着かんのです」

 え、落ち着かないって言ってもまだここに来て一日もたってなくない?

 それはもはや病的だ。

 「あ、じゃあね」

 ぶっきらぼうにいうユキはもはや空虚を見ていない。

 それよりも手に持つお菓子に夢中な模様。

 俺の分がなくなりそうな勢いなんだけど?

 「またな。元気で」

 「痛み入ります」

 丁寧なお辞儀とともに部屋を出ていく空虚。

 最後まで自由なやつだった。




 さて、謎の人物の正体が分かったわけだが、まだ本題が残ってる。

 「伊吹って今どうしてるの?」

 「彼は亥王とともに森にある自分住処に戻っていますゼウス様との戦いが相当精神に響いたようでまともに歩けていないようでした」

 あの伊吹がそこまで精神を病むとは・・・。

 ちなみに、亥王は戦いの時に乱入してきたイノシシのことで、伊吹の側近だ。

 「早めに様子を見に行った方がいいかもな。時間を空けると事態が重症化する可能性がある」

 「大丈夫なんじゃないですか?イブ爺さん真面目だし」

 「だからなんですよ。真面目だからこそ自分が暴走したことを許せないでしょう。それに、ゼウス様が相手をしましたからね。あの場ではゼウス様以外の適任が居なかったとはいえ、伊吹はゼウス様にお手を煩わせてしまったと思うはず」

 ユキが吐いた疑問に対し、ユウが答える。

 だから余計に重く考えるし、気が落ち込んでしまう。

 伊吹事態は悪くないんだけど、そんなこと考えてる余裕はない。

 「今から行こう」

 

少し年末に向けて、ペースが落ちるかも知れません・・・

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