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夫婦で営むモンスターファーム~目指せ、まったりスローライフ~  作者: 三田 白兎
1章 ペットが飼いたいので、VRMMO始めました。

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72話 物々交換

 サクラボアを一晩中狩ったときから、現実で2日が経過した。昨日は仕事で帰宅がかなり遅くなってしまったので、ログインできていない。妻も忙しかったようでフリフロで遊べなかったらしい。

 今日は2時間ほどフリフロをする時間が取れていて、イッテツさんとミミちゃんに会う約束をしているので、俺は1人でファーレンへきていた。従魔たちは連れてくると大所帯になるので、経営地で待機してもらっている。


「イッテツさん、お疲れ様です」

「お疲れです、ハイトさん」


 ミミちゃんの防具屋に着くと、店の前にいたイッテツさんが立っていた。


「今回のイベントはどうですか? いい感じにポイント稼げてます?」

「正直、俺は全然稼げてないですね。仕事もありますし、鍛冶に使えるイベント素材はまだまだ流通量が少なくて確保も難しいですから」


 今日、ここを訪れたのは桜色のボア皮をミミちゃんへあげるためだ。イッテツさんにも何かイベント素材を持ってきてあげられればよかったが、残念ながら鍛冶に使いそうなイベント素材が持ち合わせてはいない。


「そういった素材が手に入ったら、俺がまた持ってきますよ」

「本当に有難い……中でミミちゃんが待ってるんで、そろそろ入りましょうか」


 挨拶が終わったところで、ミミちゃんのお店にお邪魔する。


「ミミちゃん、こんにちは~」

「……ハイト、こんにちは」


 なんだかぎこちない笑顔で挨拶をするミミちゃん。前回、別れる前にはかなり話してくれるようになっていたはずだが……今の彼女からは緊張しているのが見て取れる。


「2週間ぶりくらいに会うから少し硬くなっちゃったみたいです」


 俺が彼女の変化に気づいたことを察したイッテツさんがフォローを入れた。


「元々、人見知りが激しいって言ってましたもんね。ミミちゃん、がんばらなくて大丈夫だからね。自然に慣れてきたなーって思ったら話しかけてくれればいいから」

「うん、わかった。ありがと」

「よし、じゃあ約束のイベントアイテム渡すね」


 アイテムボックスから27枚の桜色のボア皮を取り出して、ミミちゃんの店のカウンターに置く。


「……い、いっぱい」


 どのくらいの量があるのかは伝えていなかったので、カウンターいっぱいに置かれた素材を前にミミちゃんは驚き目を見開いた。


「びっくりした? 一晩ずーっとサクラボアを倒してたらこんなに貯まったんだよ~」

「ハイト、もしか、して……強い?」


 首を傾げたミミちゃんにそう聞かれる。


 俺は今のところエンジョイ勢としてやってるし、攻略組には到底及ばないと思う。ただ全プレイヤーの中だとどのくらいの強さに位置するのかは全くわからないな。


「う~ん、どうだろう? 自分じゃわかんないかな」

「そっか。でも、すごい」

「ありがとう。一緒に戦って集めた妻と従魔にも伝えておくね」


 以前、子供好きな妻にミミちゃんのことを話すと会ってみたいと言っていた。素材の量に驚いてくれたのと、俺たちをすごいと言ってくれたことを伝えるときっと喜ぶだろう。


「うん。じゃあ、わたしも、ハイトに渡す」


 カウンター上の桜色のボア皮を全て自身のアイテムボックスへと収納したミミちゃんは一旦、店の奥へと消えた。


「渡すものって?」

「この前、頼まれていた新しい皮の鎧だと思いますよ」

「あぁ、なるほど。もうできたんですね。最低でも1週間って言っていたので、実際は3週間くらいかかるのかなって思ってました」

「本来はそのくらいかかってもおかしくなかったんですよ。新素材を使った防具作成だったので。ただ、店に並べる防具よりハイトさんの装備を優先してがんばってましたから数日前には完成させていました」


 ミミちゃんは俺の鎧のためにそこまでしてくれていたのか……。

 これは本当に感謝しなければ。


「おまたせ」

「おかえりミミちゃん」


 ミミちゃんのがんばりをイッテツさんから聞かされたところで、本人が戻ってきた。


「これ、ハイトに」


 そう言うとミミちゃんはアイテムボックスから新たな防具を取り出しカウンターに置いた。




劣猿王の皮鎧(上)

レア度:2 品質:中 耐久値:120/120

要求値:力(8) 上昇値:耐+12

特殊効果:投擲補正(小)

レッサーコングキングの背皮を使って作られた鎧。多少重さがあるが、動きを阻害するほどではない。


劣猿王の皮鎧(下)

レア度:2 品質:中 耐久値:120/120

要求値:力(8) 上昇値:耐+12

特殊効果:なし

レッサーコングキングの背皮を使って作られた鎧。




 耐久も通常の皮の鎧より遥かに上がるし、地味に投擲補正がついているのもありがたい。これは序盤で手に入るものの中ではとても優秀な部類なのではないだろうか。


「うわー……すごくいい性能だよ。ミミちゃん、作ってくれてありがとう。とても嬉しいよ!」

「よ、よろこんで、くれたなら、よかった。代金はいい」

「え?」

「桜色のボア皮、もらった、から」

「いや、それは誰でも手に入るものだから。ミミちゃんの作ってくれた防具と交換っていうのは価値が釣り合わないよ」


 この鎧と桜色のボア皮27枚を物々交換すると俺がかなり得をしてしまう。小さい子供相手にそれはちょっと……。


「いい。わたし、戦い苦手、だから」

「えー、でもこれは流石に」

「ハイトさん、ミミちゃんの言う通りにしてあげてくれませんか?」


 俺がミミちゃんにどうにか代金を払おうとしていると、イッテツさんが話に割って入ってきた。しかも今回はミミちゃん側の意見に賛成するらしい。

 彼は装備の価値を理解しているはずなのにどうして……。


「俺も正直、ミミちゃんが制作した防具と桜色のボア皮の価値が等しいとは思いませんけど。この子もそのことは理解していますし、その上で交換して欲しいと言っているのでハイトさんが罪悪感を持つ必要はありません」

「イッテツお兄ちゃんの、言う通り。それに……わたしは、これを使って、防具を作れば、イベントポイントもらえる」


 ミミちゃんは俺からもらった素材で防具を作った際に生まれるイベントポイントも勘定に入れているのか。少し無理矢理な言い分だけど、2人してこう言っているのだから俺が折れるべきか。


「じゃあ、わかった。今回はこの鎧と皮を交換ってことで」

「うん。ありがと、ハイト」

「感謝をするのは俺の方だよ」


 次に何か頼むときには、ミミちゃんが得をするように上手くやろう。今回は俺がかなり得するやり取りになったからね。



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