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夫婦で営むモンスターファーム~目指せ、まったりスローライフ~  作者: 三田 白兎
1章 ペットが飼いたいので、VRMMO始めました。

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26話 ペックの森の向こう側へ

新年あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 翌日、朝6時に夫婦揃ってログインした。


 明日は丸1日メンテナンスでログインできないので、今日は目一杯遊んでやろうと、休日にも関わらず妻と早起きしたのである。


「マモルまた連れていけなくてごめんな」


 また置いてけぼりかと、マモルは尻尾をぶらーんと垂らす。


「今度、埋め合わせは絶対するから。何かおもしろいものでも見つけたときは持って帰ってくるし」


 全力で許しを乞うと、マモルは渋々といった感じで見送ってくれた。


 宿を出た俺と妻、そしてすらっちが向かうのはペックの森だ。あそこは少し前までうまみの無いドロップアイテムばかりだと言われ、レベリング以外で立ち入るプレイヤーも少なかったので開拓が進んでいない。頑丈な石の剣が話題沸騰してからは錬金素材を手に入れようとするプレイヤーもぼちぼち入るようになったが、そういったプレイヤーは奥には興味がないため森の浅い部分にいる。なら、その先で経営地として使うことができる場所を見つければ、俺たちのものにできるかもしれないと考えての行動だ。


 ファーレン周辺で人気のあるフィールド、ファス平原方面は攻略組がどんどん先へ進んでいるので、今から向かっても厳しいだろう。

 これまでだって穏やかな草原やペックの森といった過疎フィールドにお世話になってきたので、今回もそうするつもりである。


「それにしても人増えたね~」

「ファーレンで手に入る最高レベルの武器の素材が取れるんだから仕方ないよ」


 ペックの森に入るとポツリポツリとプレイヤーの姿があった。ファス平原よりはまだ数は少ないと思うが、背の高い木々が密集して生えているこのフィールドではとても窮屈に見える。

 器用に木登りしてレッサーコングと戦う者。俺たちのように気配察知で居場所を特定して、木を揺らすことでレッサーコング自ら下へくるように促す者。彼らがドロップアイテムであるレッサーコングの歯を求めて奮闘する隙間をヒョイと軽い足取りで通り過ぎた。


「ハイトの武器の耐久値はまだ大丈夫そうだね」




頑丈な石の剣

レア度:1 品質:低 耐久値:39/70

上昇値:力+6

特殊効果:なし

アイテム説明:頑丈な石を剣の形に加工した物。切れ味は悪い。




「うん、まだ半分くらい残ってるから。でも、新しい盾を買い忘れたのは痛いかな」


 ユニークボスを倒したことで得た大量の報酬。それからアプデ情報の事前告知に気を取られていたせいで皮の盾が壊れたことを忘れていた。ファーレンを出てすぐに気づいたので適当な生産プレイヤーから買ってもよかったが、前回防具を売ってくれたイッテツさんの知り合いからまた購入しようと思っていたので我慢した。今度は是非、直接会って話してみたい。


「そうだね。でも、今のステータスならレッサーコングレベルじゃ、相手にならないし……大丈夫じゃない?」

「確かに。気配察知で先手を打てるから、よっぽどの強敵じゃないと負けないか」

「わっ! すらっち、急に私の上で暴れないでよ……どうしたの」


 さっきまで妻の頭の上で大人しくしていたすらっちがプルプルと震えている。どうしたのだろう。自分の従魔だとある程度気持ちも読み取れるのだが、人のだとそうもいかないらしい。


「あぁ、すらっちがいるから大丈夫ってことか。いきなり動くからびっくりしちゃったよ。2人とも大船に乗ったつもりでいろだってさ!」

「それは頼もしいな。じゃあ、報酬の前払いってことでこれをあげるよ」


 かわいい見た目に反して、男前なすらっちには俺から低級ポーションを2つほど進呈した。受け取るとすぐに緑の液体を体へと流し込み満足気にふよふよしている。

 テイム時に与えられて以降、好物がポーションになったらしいのであげてみたが大正解だったな。


「すらっちとハイトがいちゃついてる……」

「どうして従魔との関係性に嫉妬してるんだ」

「うっそ~。流石にすらっちやマモル相手に嫉妬はしないよー」


 どうやら冗談だったようだ。

 表情が本気で嫉妬してるみたいだったから信じてしまった。


「なら、よかった。それより気づいてる? 足元が斜面になってきてるの」

「やっぱり傾いてる? 気のせいかと思ってたけど、2人してそう思うってことは正解だよね」


 おそらく俺たちは別のフィールドへ移動している途中と思われる。地面に角度がついてきただけじゃない。ペックの森に生えていた木々よりも背が低いものが混ざり始めているので、そう考えた。


「次のフィールドは山っぽいね」

「わかんないよ? 上りは少しだけで、進んだ先には大きな谷って可能性もあるから」

「それもなくはないか。でも、勘弁して欲しいな」

「ハイトは高所恐怖症だもんね」


 妻の言った通り、現実の俺は高所恐怖症で観覧車などは絶対に乗れない。高層ビルやマンションの上層も子供の頃はムリだったが、大人になってそういう場所に行かないといけないことが増えてからなんとか克服した。

 ゲーム内補正でもかかって症状が緩和されるなんて素敵機能があれば嬉しいが、たぶんないので1歩踏み出せば奈落の底へ落ちる断崖絶壁から下を覗くような機会なんて死んでもいらない。


「ん? 魔物の気配が引っかかってる。そこそこの速さでこっちに向かっているのはレッサーコング……にしては少し大きいか? まぁ、いい。正体は姿を見ればわかる。よし、リーナ、すらっち、とにかく戦闘準備!」

「え、急過ぎっ!」


 妻は慌てて杖を構えて、魔法を唱える準備をする。一方、すらっちは一切の動揺なく妻の頭から飛び降りて1番前に出た。

 今日のすらっちの背中はとても大きく見える。敵も普通のレッサーコングではなさそうだし、全力で頼らせてもらおう。



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