170話 ハグ
かなり久しぶりの更新なので誤字が多いかもです。
それから数話読み返してから執筆しましたが、もしかしたら矛盾点などあるかもです。優しい目で見てもらえると助かります。
テイマーとしての初レベルアップを終えた後。俺たちはテイム可能な「コトウノ」という言葉が名前についた魔物を探していた。このカテゴリーの魔物は今回のイベント限定でテイムできる魔物なので俺とリーナでそれぞれ一体ずつは確保しておきたいところだ。
これまでに俺が見かけた「コトウノ」魔物はコトウノスナガニのみ。戦った感じだと戦闘では役には立たなそうだった。
他にはモフアイさんからの情報提供で知ったコトウノウミガラスという魔物もいるようだ。こちらは烏という言葉がついているものの、どちらかというとペンギンっぽい見た目の魔物らしい。妻はこの子に興味を持ち、姿を見てからテイムするかどうかを決めるつもりのようだ。
俺としては様々な種類の従魔で経営地を賑わせたいため、妻とは違う魔物をテイムしたい。流石にペンギンとカニの二種だけが今回のイベントでテイム可能な魔物ですとはならないと思うため、まだ別種の「コトウノ」魔物が存在すると思っている。俺のテイム枠はその子を見つけるまで空けておくつもりだ。
「あぁ~、中々魔物が見つかりませんね~」
シメジマペングインとの戦闘以降、俺たちは魔物と遭遇していない。気配察知には複数の魔物が引っかかっているが、それは全て砂浜に隠れているコトウノスナガニである。誰もコトウノスナガニをテイムするつもりはないので無視している。
「モフアイさんが聞いた話によるとコトウノウミガラスは浜辺にいるんでしたよね?」
「はい! そのはずです」
「うぅ~、私のウミガラスちゃ~ん。出ておいで~」
ペンギンそれもイベント限定の魔物。
妻の興味を引く要素を詰め込んだような存在である。
早く姿を拝みたい妻の口から涎が少しだけ垂れている。
ちらりとその隣にいるモフアイさんへ視線を送ると彼女もまた涎を垂らしていた。こちらは更に獲物に飢えた肉食獣のような目にもなっている。
グエグエ。
「ん? 今――――」
グエグエグエ。
「鳴き声!?」
「ど、どこですか!」
突然、魔物の鳴き声がした。
俺たちは周囲を見渡したが魔物の姿は見当たらない。
気配察知には依然として魔物の存在は引っかかるものの、障害物のない砂浜で姿の見えないサイズの魔物はコトウノスナガニくらいのはずだ。
「きゃー!」
周囲を俺が索敵していると隣から悲鳴が上がる。
そちらを見るとモフアイさんが魔物に襲われている姿が――――。
「モフアイさん?」
いつの間に現れたのか。先程まで姿のなかった魔物がモフアイさんに抱き着いていた。
「ハイト、この子って……ペンギン?」
「っぽいね」
よく見てみるとペンギンのお腹には島のような形の模様がある。
その形の一部が俺たちが探索したエリアに似ているため、もしかしたらこの魔物の模様は今回のイベントのマップのようになっているのかもしれない。そうだとするとこの魔物はイベント限定かもしれない。そしてペンギンのような見た目のイベント限定の魔物と言えばモフアイさんから教えてもらったコトウノウミガラスが真っ先に思い浮かぶ。
「ちょっとお二人とも! 私、襲われてます~。助けてくださいー!!」
俺がそんな考察をしているとモフアイさんからSOSの叫びが。
「えっ、でも……それ本当に助けて欲しいと思ってます?」
だが、どうも俺は助けるべきかどうか迷ってしまう。
なぜならモフアイさんとコトウノウミガラスと思われる魔物は仲良く抱き合っているようにしか見えないからである。
「思ってますよ!!! 地味にHPを吸われているんですって!」
「え~、でもずっと抱き着いてるじゃないですか」
「それはこの子が見かけによらず力強くて剥がせないんですよ!!!」
どうやらコトウノウミガラスはパワーとHP吸収攻撃を持っている魔物らしい。
見た目は完全に愛くるしいペンギンなので無害だと騙されるところだった。
「分かりました! じゃあ、引き剥がしましょう!! リーナ、二人で引っ張るよ」
「うん!」
俺とリーナはすぐにコトウノウミガラスをモフアイさんから引き剥がそうとする。
「ぐぬぬ。ハイト、この子すっごい力だよ」
「くっ、俺たちの腰くらいまでしか身長ないのにどこからこんなパワーが!」
それから苦戦すること五分。
モフアイさんからコトウノウミガラスを剥がすことに成功した。最終的に俺、リーナ、モフアイさんだけでは足りず、アムリまで呼び出してようやくである。
剥がされた後のコトウノウミガラスはなぜか一切反撃してくるような素振りも逃げるような素振りも見せない。ただ、俺たちの方をじーと見て立っている。
「はぁはぁ、死ぬかと思いましたよ」
「イベント始まって以来最大のピンチでしたね」
「はい……HP一桁まで減ってますから。早急に回復したいところですけど」
「残念ながら低級ポーションはオトナシさんを回復させる分しか作らなかったので、すぐには無理ですね」
オトナシさんを助けた後、流れで彼等の拠点へ案内されて今へ至るため余分な低級ポーションは作れていない。それがまさかここにきて痛手になるとは思わなかった。
「一旦、帰りますか? 俺たちの方の拠点へ戻ればまた低級ポーションは作れますが」
「そ、そうですね。このままだといつ死ぬか分からないので頼らせてください」
「――――よしよ~し。かわいいねぇ。頭からハートのエフェクトみたいなの出てる~」
俺とモフアイさんがこの後のことについて決めていると、少し離れたところでリーナの甘い声がする。
「おーい、リーナ何してるの?」
「全く逃げる様子がなかったからよしよししてみたんだ~。そしたら、ほら! ハート出るんだよ? かわいくない?」
近付いてみるとリーナがコトウノウミガラスの頭を撫でていた。
「た、確かにかわいい」
頭から謎のハートエフェクトを出すペンギン。可愛くないわけがない。
じゅ、じゅるる。
背後から涎をすするような音がして振り返るとそこには息が荒く目がキマり、今にも跳びつきそうな様子のモフアイさんが。
「モフアイさん、落ち着いてください! あなたのHPは今――」
「我慢できなーーーーーい!!!」
モフアイさんはついにコトウノウミガラスへと跳びついてしまう。
俺は再びHP吸収攻撃が始まるかもと考えてコトウノウミガラスへファイヤーボールを放つ準備をする。
「あっ! えへへぇ~、テイムできちゃいましたぁ」
だが、予想外の結果が待っていた。
なんとモフアイさんはコトウノウミガラスのテイムに成功してしまったのである。