161話 緋色の精霊アムリ
「それでアムリって何ができるの?」
緋色の精霊アムリを召喚したのは二度目。
だが、前回は挨拶と契約を交わしただけ。
俺はこの子が何を得意としてどういった戦い方をするのか、全く知らない。
「僕はね~、火魔法で直接攻撃もできるし味方の火魔法の威力の底上げなんかもできるよ!」
「物理攻撃はできない?」
「うん。だって僕、精霊だから実体ないし。その代わり敵からの攻撃でダメージを受けることもないから、ハイトのMPが切れるまで一緒に戦い続けられるよ!」
やっぱり精霊だから魔法を主体とする戦い方なのか。ダメージを受けず、俺のMPが切れるまで戦い続けてくれるっていうのは中々に強いな。どうやら従魔と違ってパーティの枠を取るわけでもなさそうだし。ただ、ステータスを見るとMPが結構な早さで削れてしまっているから長時間召喚するのは今の俺には厳しそうだ。MPが0になる前にさっさと魔物を倒してしまおう。
「わかった。今回は俺に火魔法のバフをかけて欲しい。そのあとはアムリ自身も攻撃に加わってくれて良いから」
「おっけー! じゃあ、いくよ。フェアリーダンス<緋>」
アムリの動きは言葉通り。小さな体に緋色の光を発しながら、俺の周りを蝶のように舞う。緋色の光はそのまま俺に降り注ぐ。そして体が僅かに温かくなった。
「もう攻撃していいよ!」
「わかった。いけ、ファイヤーボール!!!」
「僕もやっちゃおっ。ファイヤーランス!」
ファイヤーボールと唱えると普段より一回り大きくなった火の球が現れた。どうやら効果がある属性が限られているからか、バフの倍率はなかなかのものらしい。
放ったファイヤーボールは、気配察知が知らせてくれた魔物の潜伏場所へと真っ直ぐに進む。その様子を見るに魔法の速度はいつもそれほど差はなさそうだった。
俺がファイヤーボールの威力を楽しみに魔法の進路を見ていると、隣から熱風と共に高速の槍が放たれた。アムリがファイヤーランスと口にしていたため、おそらく彼の魔法なのだろう。
「すごっ」
火の槍の推進力は素晴らしく、先に俺が放った火球をすぐに追い越した。その様子に感嘆の声が漏れる。
<見習い戦士のレベルが1あがりました。SPを2獲得>
二つの魔法によって潜伏していた魔物は姿を現すことなく倒された。
困ったな。これじゃあ敵がどれくらい強かったのかも分からないし、魔法の威力もいまいち分からない。視覚的にもバフは効いていたし、アムリの魔法は俺のものよりすごいのは確定だろうけど……。
ん? ていうか、姿が見えていない状態の敵を倒した場合ってドロップアイテムはどうなるんだろう。
まぁ、いいか。久しぶりにレベルアップのアナウンスが聞けたことだし、ステータスの方をしっかりと見ておこう。
ハイト・アイザック(ヒューム)
メイン:テイマー Lv.1
サブ1:見習い錬金術師 Lv.9
サブ2:見習い戦士 Lv.11
HP:400/400 MP:270/360
力:35
耐:37
魔:44
速:19
運:35
スキル:テイム、火魔法、魔力操作、錬金術、剣術(初級)、槍術(初級)、盾、気配察知、聴覚強化、鑑定、解体、採取、潜水、伐採、採掘、口笛、挑発、癒しの手、緋色の紋章
称号:<ラビットキラー><紅蓮の魔女の弟子>
SP:12
<装備>
頭:―
胴:―
脚:―
靴:―
装飾品:―
武器:―
盾:―
SPも10を超えたし、また良いスキルがあれば覚えたいな。後で、掲示板でも見て探ってみるか。
それとテイマーのレベルがまだ上がらないのが気になるところだけど……見習い系より上のランクみたいだし、必要な経験値が多いってことなのか?
「ハイト! 何っぼーっとしてるの? 魔物のドロップアイテム探そうよ。せっかく倒したのに置いていくのはもったいないよ!!」
「あぁ、ちょっとね。ドロップアイテムの方は俺が一人で探すからアムリはもう帰っていいよ。これから海の中を調べるからあんまりMPを消費したくないんだ」
「えー! 僕もう帰るの?」
「ごめんね」
「いいよ! 僕も忙しいからね。ハイトがそういうなら、もう帰る。またね!」
一瞬アムリは寂しそうな表情を見せた。しかし、すぐにいつもの元気な表情に戻って笑顔で手を振りながらどこかへ消えていった。
「今度、一緒に遊んであげた方がいいかな? あ、でも強い魔物との戦闘で呼べって本人が言ってたし……」
今後アムリとどう接していくのか少し迷いながら、俺は砂浜に埋もれた魔物の死骸を探すのだった。