不安の種の作者の人に漫画にしてほしい
ちょっとだけ、タイミングがずれた。
退勤の時間とか、バスからの連結とか、ちょっとうまくいかなくて、あと走るのも面倒で、疲れてたし。今日は地味に大変だったんだ。
結果、その日の電車は満員電車になってしまった。
「あーしんど」
まあ電車には乗れたし、後は帰るだけだし。
片手で吊革を掴んだ状態で、目をつむっていた。席は空かなくてもいい。座れなくてもいい。10分くらいは別にいい。
そんな事を考えるともなく考えていると、尻に何かの感触があった。小刻みに、擦るように、湿ったような感じの何かの。
「痴漢!?」
糞ったれ!
仕事で疲れて、タイミング間違えて、満員電車で、座れなくて、その上痴漢!?
瞬間湯沸かし器的な怒りがこみ上げた。
痴漢です!って大声で言ってやろうと振り返ると、
振り返ると、
ふりかえると、
そこには、耳だらけの何かがいた。耳、耳だらけ。顔中。
その耳の一つが私の尻に当たって擦れていた。
みたい。
咄嗟に視線をそらした。
窓ガラスに映った自分の顔が見えた。
まるで溶けかけのバターみたいで、笑ってるのか、泣いているのか。ただ、顔じゅうから脂汗が出てる。