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不有霧.  作者: 斑鳩 記翔
1/7

0.プロローグ

…何も見えやしない。


見ようと思っても見えない。


過去も、今も、未来も、何もかも。


美しい未来も、神々しい今も、輝かしい過去も、何もかも。


元から僕にはそのようなもの存在しなかったのかもやしれない。


貧民窟で育ち、死ぬまでそこにいる事が確定していたのかもやしれない。


真っ暗な世界に1人、立ち尽くす。





嗚呼、何も見えやしない。


見ようと思っても見えない。


過去も、今も、未来も、何もかも。


醜い未来も、禍々しい今も、くすんだ過去も、何もかも。


元から僕にはそのようなもの存在しなかったのかもやしれない。


富裕層で育ち、死ぬまでのんびりと暮らす事が確定していたのかもやしれない。


真っ黒な箱のような部屋に1人、立ち尽くす。




血を零せばこの黒が赤に染まるだろうか。


そうは思ったものの生憎、僕は血を拝めそうなものは所持してはいなかった。


役に立たない奴め。自らを自らで罵る。罵詈雑言、それらは慣れたものだ。


__慣れたもの?


何を根拠にそんなことを考えたのだ、僕は。


された記憶が無い物に既視感を覚える、人はそういうことがあるのだろう。


前世の記憶か、はたまたは忘れているだけか。


非現実的な事は信じ難い故、僕は後者を推している。


事実はどちらか、人類はまだその結論にはたどり着けては居ないが。


第一にこの虚無の空間にも既視感を覚えていた。



真っ暗で何も無い、まるで、彼奴のように。


まただ、彼奴に関する情報が脳内に流れてきたことは。それらは最早数えることをしなくなってしまった。


何度も何度も知り得ない奴の情報が流れ出てくる。気持ち悪い。


闇が心做しか深くなった気がする。


どくどく、心臓が鳴る度に深くなる闇は僕を焦らすように飲み込んでいた。


何だ、間も無く僕も飲み込まれてしまうのか。


__、僕"も"?


………。


結局は何もわかりえなかった。待つものは死のみだ。


致し方あるまい、生命あるものの原理であろう。


謎は深まる一方だ。


そもそも何故僕はここに居る?


存在意義を訊けば誰も答うることは不可能だ。


誰しもそれを理解せずにその生命を燃やしている。


そうではない。


市場へ買い物へ出た、時間を無駄に費やす為に散歩に出た、等といった目的のようなものを問うているのだ。


僕は何をした。何故ここに来た。


…そもそもだ、……僕は、誰なのだ。



可笑しい。僕自身の存在すら見出すことが出来なくなっている。


僕自身の存在を否定してしまってはどうしようもなくなってしまう。


闇が脳内にまで侵食して綺麗に飲み込もうとしているのか。


根拠はなかったが不思議とそれはすんなりと僕の中に落ちた。


侵食した記憶が消えていく、事実か否かは理解し得ない。


というより、する必要性はないと感じている。


嗚呼、もう時間が無い。



浮遊感が生まれた。


闇は着実に僕を飲み込み、消失する。


消え行く身体を眺めつつ、k__ゆ 、 r __。

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